日本財団 図書館


■シンポジウムでの特別発言 ―『篤志献体』第43号より
盲学校理療科教育の立場から 筑波大学心身障害学系講師 濱田 淳
 日本では、理療(鍼灸あん摩マッサージ指圧)と視覚障害者との関わりがとても強く、世界でも例をみない。盲学校理療科出身の理療士になる者は毎年全国で400〜500人であり、専門学校を卒業し免許を取得する者は現時点では約2000人である。このような状況下では、視覚障害者は晴眼者以上の努力と特徴をもたなければ競争に負ける。その努力を支えるのは教員である。視覚の学問である解剖学を視覚障害をもつ者が教える/学ぶということ自体に無理があるという意見もあるが、私はそう考えたくない。できないことをできるようにすることが教育の目標と考えているからである。どのみち皮膚下は見えないのだから、施術の際には目が見えようと見えまいと同じである。この意味でスタートラインは同じであり、触診の精密さ、刺入した鍼先の到達点がどこの組織かというイメージの差が治療の良し悪しに関わってくる。また、体内に鍼を刺入する行為には、少なからず危険が伴っている。これを避けるには、基本的な解剖学の知識が必要である。盲学校理療科では講義・見学・実習にかなりの時間をとっているが、重要なのは自分が何を触っているのか分かることで、その正誤を判断するのが教員の役目である。教員に確実な知識と技術がなければ、そこから生まれる理療師の質は高まらないので、それを得る機会は多くなければならない。見えないからこそ、本物をみる経験を多くし、こだわりをもって詳細を知っておくべきである。実習や見学で問題になるのは、触ると剖出された物が変型すること、数人同時に触れないことである。これらの難点を解決する方法の一つが模型であるが、不正確であったり、質感が分からない。これらの問題を同時に解決する画期的な方法がプラスティネーションかもしれない。
 
視能訓練士養成の視点から
―献体による解剖学教育の必要性
日本視能訓練士協会常務理事 内田冴子
 視能訓練士は1971年視能訓練士法の成立及び1993年の施行規則の一部改正で身分と職域が確立いたしました。その住み分け区分はリハビリテーションで指定の教育機関(大学3校、専門学校11校)で履修後国家試験合格で資格を得ます。現在有資格者は4293名で、大学病院、国公立病院、眼科医院、養成校などで活躍しております。
 視能訓練士は視覚機能の検査とその評価、機能回復訓練・残存視覚機能の維持と指導などを行う医療専門職であります。その職域で解剖学・生理学に関係する主な身体部分は、眼球及び付属器は言うまでもなく高次視覚中枢である大脳皮質の第一次及び高次感覚野と連合野の視覚伝導系・眼球運動系と自律神経系であります。その分野のビジュアルな体験学習である解剖学実習は、超情報時代の到来と医療技術の進展による視覚機能向上のニーズに応える上に大きな意味をもつと考えます。即ち
1、視覚情報処理過程の機能解剖の学習により視覚矯正とその訓練効果のメカニズムを理解することができ、治療の質が向上いたします。
2、益々進展する超情報社会において視覚機能の重要性は学齢期から高齢者までを包括し、特にその発達過程と加齢変化の学習は人々のより豊かなquality of lifeの創造に寄与することができるばかりでなく、視覚矯正学の進展を図ることができます。
3、献体による解剖学教育の機会を頂くことは、付属病院を持たない多くの養成校と日本視能訓練士協会が行っている生涯教育への恩恵は計り知れません。
 なお、実施にあたっては、全国の視能訓練士養成校を網羅して頂き、解剖学専門医による直接のご指導をお願い申し上げます。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION