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■代表者に訊く
佐藤 透さん
●NOLA代表
●団体の特徴
 私たちは、不登校や引きこもり・非行などの青少年(以降「不自立者」と表現)に自宅を開放し、彼らとの共同生活を通じて再び社会参加するための力を養う支援をしています。
 不自立者が不登校や引きこもりに陥る原因は彼らの育ってきた環境にあり、ほとんどの場合は病気ではありません。病気と言うのであれば、生活習慣病と言えるかもしれません。具体的に言えば、彼らが育ってきた環境の中で彼らが困難に直面したとき、乗り越えたり、いなしたりする技を経験の中で学んでいなかったために、実際にそのような場面に遭遇すると自分の力で乗り越えることが出来ずに居心地の良い家庭へ逃げてしまうのです。また、そのような場面で親が本人自身の力で乗り越えさせることをせずに無条件に受け入れたり、保護したり、あるいは代わりに処理するなどして、全てを親のお膳立ての通りにやらせてしまいます。そうなると本人の出る幕がない、出る勇気がもてなくなる、とにかく良い子(親のいいなり)にしていればそれで良いと考えるようになってしまいます。または、親がけじめをつけることを教えていないため、子どもが一家の主であるかのような振る舞いを許しています。
 
宿泊棟(男子部屋)・・・寮生とスタッフ・ボランティアが共に寝起きしています。
 
宿泊棟(女子部屋)・・・女子も同様にスタッフ・ボランティアが寮生と共に寝起きをしています。
 
NOLAではヤギを5頭飼っています。寮生が毎日の世話をしています。
 
食事風景・・・食事準備、配膳は当番制です。中学生組がここで学習することもあります。
 
この部屋の床は寮生の作業によるもの。自分たちが生活する施設の改修補修はNOLAでは当たり前の作業です。
 
現在作業組が建設中のログハウスです。後は屋根をのせれば完成で、その技術は非常に高いものがあります。
 
 この問題をさらに難しいものにしているのは、親子が地域から孤立していることが多いゆえに、親が自己の生活習慣の良し悪しに気付くことが出来ず、問題そのものをいじめや学校の対応といった外的要因に原因を求め、根本的な解決がなされないことにあります。
 また、なされる多くのアドバイスには「待っていればそのうち子どもが動き出すから、子どもの主張をじっとして待っていればよい」という無責任な指導がまかり通っています。その結果、5年10年と待ったけれども一向に動き出すことなく、余計にひどくなり、あちこちの病院や相談機関を転々とします。そうしている間に子どもは20歳になり、30、40歳近くになってしまうことも少なくありません。こうなってしまうと不登校のみに限定されがちな行政の援助は受けられず、その上、民間の受け入れ機関も少なく、ますます孤立を深める悪循環に陥ってしまいます。
 ならばどうすればいいのか?多くの方がこの答えを探して悩み苦しんでいることと思います。とにかくこの問題は待っていても解決することはありません。早期発見、即時対応こそ、本人はもちろん家族の負担も軽くなるベストな方法です。そこで、現実的な対応として先述の生活習慣が原因であるならば、その生活習慣を変えればいいのですが、こじれてしまった親子関係の中で今までの生活を改めることは容易ではありません。自立にまつわる昔の言葉に「可愛い子には旅をさせよ」とか「他人の釜の飯を食わせろ」、「獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす」というものがあります。古き良き時代には、丁稚奉公や寺子屋などの若衆宿的な居場所がたくさんあり、地域のコミュニケーションも活発で、若者は親元を離れてその中で人間関係のイロハを体得していきました。頭でっかちで実行力の乏しい彼らに必要なのは知識ではなく、まさに経験を積むことにあります。
 
NOLAではたくさんのカモも飼育しています。もちろん世話は寮生の役割です。田んぼの害虫や雑草を食べてくれる頼もしいアイガモたちです。
 
今年から近所の田んぼを借りてアイガモ農法で稲作に挑戦しています。写真は、田植え前の準備作業をしているスタッフと寮生。
 
 そしてNOLAはまさに現代の若衆宿としてのどかな山村で自宅を開放し、不自立の若者達と生活を共にしています。その中で規則正しい生活をすることで昼夜逆転の生活リズムを戻し、NOLAの名前の由来ともなっている「野良」仕事やスポーツといった肉体労働を通じて、気力や体力の充実を図ります。また、田舎ならではののんびりとした雰囲気と温かい地域の人達との交流の中で、次第に他者への信頼と人間関係のノウハウを体得します。人間関係に自信を得た子ども達は、自然に学校やアルバイトにでるようになり自立していくのです。
 しかし、これらを家庭の中で実行することは非常に難しいことだと思います。人間は一人では生きられません。困ったときはお互い様です。どうか臆せずに他者の援助を受けられることを切に願います。
●卒設の基準
 特別基準は設けていませんが、学生は学校を卒業すること。その他は社会参加をして自分の力で収入を得、親の援助なしで衣食住をまかない、自分の目標を決定できることです。また、他人に迷惑をかけないことです。
●年代別目標
 [10代]小、中学生はNOLAの地元小、中学校へ転校・復学し卒業すること(小中学生の入寮6ヵ月後の復学率は現在100%)。中学卒業者は進学及びアルバイト(就職)。アルバイトの者は給料よりも自分の金銭管理ができるようになること。大検希望者は資格取得、大学志望者は合格すること。[20代]基本的には10代と同様で、大学やアルバイトなど各自の目標に向けて自立すること。入寮1年以内の社会復帰率は現在60%。[30代]社会参加(一人暮らし)ができること。
●施設における自立の定義
 NOLAにおける自立の定義とは、自分の力で収入を得て、誰の援助も受けず衣食住をまかなうことができるようになることと、自己決定、自己責任がまっとうできることです。
●在籍生の就職状況とその支援体制
 アルバイトからの正式社員登用。懇意にしていただいている会社(造園土木業)でのアルバイトやその他就職の紹介をしています。
●在籍生のアルバイトの可否・その状況と支援体制
 一定条件を満たせば可能です。各自ハローワークに出向いたり、知人の紹介などからアルバイトを見つけています。
●作業(有償/無償)の有無・その内容と状況
 NOLA内作業は全て無償です。外部作業(ボランティア)活動については、お礼や食事などを頂くこともあります(一部有償もありますが、あくまで研修の一環であり、本人の実力や態度により変わります)。
●教科学習の必要性とサポート体制
 基本的学力の差は社会に出るときに幅を狭めてしまうので、義務教育に関しては、夜7:30より勉強会を開いています。教員免許を有しているスタッフがサポートしています。SOJ(School Online Japan)より寄贈していただいたパソコン3台により、パソコン教室等も行い、HPの制作などにも参加させています。
●在籍生の心理的サポート体制
 その時その時の場面に応じて異なるのでマニュアルなどはありませんが、毎日の生活の中に変化があれば、HR(Human Relationship)リーダー2級(=NPO法人青少年自立援助センター主催の資格)取得スタッフがアドバイスや相談をしています。また、臨床心理士をスーパーバイザーとして迎えています。
●外部医療機関との連携
 下市病院精神科の飯田先生に受診や相談を受けています。
●在籍生の保護者へのサポート体制
 3ヶ月に1回の父母会を開いています。父母会では講師を招いての研修会や懇親会を行います。「のらこみR」による行事活動報告をしています。各保護者の方々とは、何かあればその都度電話にて連絡を取っています。







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