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■代表者に訊く
小川 隆司さん
●トトロ学園代表
●団体の特徴
 トトロ学園とは、不登校の子供たちや、やる気の出ない青少年の心や体を癒し、学園内の活動、勉強、社会生活を通じて社会的に自立する場所として設立し、現在自宅を開放して頑張っている学園です。
 
代表の妻、広子さんを中心にみんなで食事準備。米は発芽玄米、野菜は自家製のものが多く食品には気をつかう。
 
相談を受けたり、親御さんとの話し合いの場として活用される談話室。
 
6:30起床から22:00就寝までのタイムスケジュール。決まり表には無断外出しない、他人に迷惑をかけないなど。
 
居間での自由時間。雑談したり、テレビを見たり、小川家の子供たちと遊んだりしてくつろぎながら時間を過ごす。
 
ボランティアミーティング。スタッフの有償訪問と並行し、ボランティアによる無償の家庭訪問を実施している。
 
ステンレス溶接工具。技術を習得すれば仕事も数多くあり収入も良い。社会参加への道の一つになっている。
 
 この学園の設立は私の数年来の夢でした。私は自営業を営む傍らで、不登校の子供をみたり、やる気の出せない青少年を預かり、共に生活をして一緒に働いたりしてきました。又、心身障害者(情緒障害)の青年とも一緒に仕事をしました。なぜ私がこのような青少年と関わるようになったのかというと、私自身の経験が深く影響しています。私は中学生のころ、いじめがきっかけで不登校になりました。体も心も弱かったその頃の私にとって、柔道とボランティア活動が自信作りや救いの場所でした。これらを通じて心も体も鍛えられ、自立することが出来たと思います。私にとってはとても重要な場所でしたが、今現在苦しんでおられる子供さんや親御さんの中には、私が出会ったような救いの場所は少なく、どうしてよいのか分からない状態の方々も多いのではないでしょうか。私は、今度は自分自身がそんな方達の自立の手助けをして行きたいのです。何分まだ未熟ではありますが、悩みをお抱えの親御さんと一緒になって考えていきたい、そう思っています。
【基本的共同生活自立支援の活動内容】
1. 自立支援・・・生活習慣の改善(朝起きて昼間体を動かし夜寝る。挨拶。一日三食食べる)。・目標の個人設定(スタッフと相談し自分で目標を定める)。・共同生活における信頼関係の構築。・地域との交流や奉仕活動(町内清掃、草刈、フリーマーケット出品等)。
2. 健康増進・・・朝の散歩・柔道教室(礼儀)。
3. 学習指導・・・ボランティアによる学習指導(基本は自習、ボランティアはその補助)。
4. 職業の基礎訓練と技術習得・・・ステンレス加工業(TIG溶接、磨き仕上げ)、習得後奨励金あり。・建築業見習い研修(代表が建築業者のため、関連の下請け業者へ修行)。・便利屋業の補助作業(例、独居老人宅での大工仕事補助等)。
 
自然有機農法による農作業。バーナーで土を焼き、殺虫や消毒をする。肥料にはたっぷりと牛フンを加えた堆肥を使っている。作物はひと味もふた味も違う。
 
イチゴと代表の末っ子たっちゃん。消毒薬を使用していないので、そのまま食べれるし、味は調査員(山田)の生涯で最も美味しいイチゴでした。
 
5. 訪問活動について・・・トトロ学園の訪問活動は有償と無償の二本立てになっていることが大きな特徴となっています。
(1)有償訪問活動・・・スタッフ(2名)による家庭への訪問。対象者はひきこもりの青少年とし、月一回程度訪問し、本人の様子を見極めつつ情報を提供したり、刺激を与えたりしながら自立に導いていく。
(2)無償訪問活動・・・ボランティアによる家庭への訪問。対象者は不登校やひきこもりの中でも自立に向かっている比較的若い世代で、スタッフが面接してボランティア訪問が可能と判断した者。活動内容は、月一回程度一緒に遊ぶ、話し相手になる等。外に出にくい場合は出られるように促したり、希望があれば勉強もみる。相談はなるべく自己判断を避け、スタッフを通して行う。
●卒設の基準
 社会に出て生活できる能力が身についているかどうかを判断するためにスタッフと面談の上、卒業試験としての目標設定をする。その目標の達成度を基準としています。
●年代別目標
 [10代]10代前半・・・卒設の基準に準ずる。復学、進学することを基準とはしないが、本人がそれを望んでいる場合には卒業試験の目標として設定する場合もある。それ以外は基準通りです。10代後半・・・卒設の基準に準ずる。[20代]20代前半・・・卒設の基準に準ずる。20代後半・・・受け入れ対象ではありません。[30代]受け入れ対象ではありません。
●施設における自立の定義
 自分で生活する能力を身に付けることです。それは自分を取り巻く状況を把握し、目標を設定・実行した結果に対する責任を取れる力を身に付けるということです。
●在籍生の就職状況とその支援体制
 15歳以下は学校に戻っています。それ以上はそれぞれ本人の選んだ職に就いています。
 トトロ学園での支援体制・就労訓練事業は以下のようなステップアップ方式を採用しています。
1. ステップ1=農作業・美化清掃・古紙回収・リサイクル。
 共同生活の上で基本的な生活リズムを作ると同時に、簡単な軽作業から就労に慣れ親しむ。
2. ステップ2=生産者(農家)実習・施設建設実習。
 人と接する機会の多い作業や高度な作業にステップアップするよう指導する。
3. ステップ3=ハウスクリーニング・TIG溶接(ステンレス)・便利屋作業。
4. 見習い組・バイト組・工場組(奈良県内提携企業・商店)技術取得・資格取得。
5. 就職にあたっての卒寮試験実施・就職。
6. 卒寮・就職後のサポート。
●在籍生のアルバイトの可否 その状況と支援体制
 アルバイトはOKです。出来る時期が来ているのかどうかはスタッフが見極めます。
●作業(有償/無償)の有無 その内容と状況
 作業により、有償と無償のものがあります。基本的に奨励金という形で有償になっているものは実際に利益の発生する作業です。就職支援体制におけるステップ1の状態がそれにあたります。
●教科学習の必要性とサポート体制
 基礎学力(昔でいう読み・書き・そろばん)は必要と感じています。基本は自習スタイルですが、ボランティアがサポートすることもあります。建築関係の学習においては代表の得意分野でもあるため、より一層のサポートが可能です。
●在籍生の心理的サポート体制
 定期的に面談を行っています。代表・スタッフに直接伝えづらいことでも、ボランティアが関わってワンクッション置くことで心理状態をしっかりと把握できるようにしています。
●外部医療機関との連携
 信頼のおける東洋医学(鍼灸・漢方)の薬局・鍼灸院が3軒、クリニックが2軒あり、それぞれ協力頂いています。
●在籍生の保護者へのサポート体制
 入寮後3ヶ月までは隔週から週1度の電話連絡で状況報告をしています。現在は2・3ヶ月に一度開催している「不登校・ひきこもりを考える会」への参加終了後に面談、日々の記録をお渡ししています。







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