日本財団 図書館


近畿
学校法人 生野学園
イクノガクエン
 
代表者名●宇都宮 誠[ウツノミヤ マコト]
所在地●〒679−3331 兵庫県朝来郡生野町栃原字西桝渕28−2
電話番号●079−679−3451 FAX番号●079−679−2894
URL●http://www2.jcss.ne.jp/~ikuno-hs/ E−mail●ikuno-hs@mxa.nkansai.ne.jp
 
ありのままを受け止めてくれる全寮制の中学・高校
●報告―井村 良英[元淡路プラッツ代表]
 
 豊かな自然、緑に囲まれた生野学園は元気な生徒で一杯である。それは自分のやりたいこと、興味のあることに一途に取り組むことができるからではないだろうか。生徒とスタッフの距離も非常に近い。宿直はスタッフが毎日交代で入っているが、生徒は相性の合うスタッフの宿直日を楽しみにしている。職員室もサロンのような感じで絶えず生徒の出入りがある。夜になると生徒達が校内放送で次の旅行の計画のために集合を呼びかける。インターネット完備のコンピューターにも、手作りのビリヤード台にも、生徒が集まり朝から晩まで楽しそうに遊んでいる姿を多く見かけた。美術室や音楽室を覗いても、そこには笑顔一杯の生徒たちが陶芸をしたり、ピアノを独創的に弾いたりしていた。とにかくどこへ行っても自分の興味あることに一生懸命で、そして楽しそうに取り組んでいる生徒ばかりだった。
 
兵庫県のほぼ中央に位置する生野学園は背後に高星山、前方に澄んだ水の流れる栃原川という、豊かな自然に囲まれた場所である。
 
部屋は3〜4人の相部屋。清掃は各自の責任で。相部屋は日常から相手を考え気を遣う。社会も同じだ。
 
洗濯は各自で。洗濯場には洗濯機や乾燥機が十分な数ある。洗濯場そのものも非常にきれいに清掃されている。
 
 食堂は別の棟にあり、生徒達は歩いて食事に向かう。お腹が空いているのか足を速める生徒、仲の良い友達とおしゃべりをしながら向かう生徒、入り口で友達を待つ生徒など様々だった。各食事2時間という長い時間を取っていることに、生徒への気遣いを感じた。ゆっくり食べたい生徒や朝が苦手な生徒などそれぞれのライフスタイルを尊重しようという配慮だ。
 全寮制という共同生活の中で生徒たちはお互いの生活を尊重し気遣いすることを学ぶ。また、人間関係の構築の仕方から関係を維持するために必要なことまで日常のすべてが学習となっている。数名の生徒が「毎日が修学旅行」と言っていたが、それは非常に楽しく生活をしている、できるということだろう。生徒をサポートする空間の温かさ、ありのままの無邪気な彼らを受け止めるという学園の姿勢が生徒の言葉から見受けられた。[調査日―2002.04]
 
■代表者に訊く
宇都宮 誠さん
●学校法人 生野学園理事長
 
●団体の特徴
 24時間学習が生野学園では実践されています。建学の精神「自然出立」(心の自然に立ち帰り、自由と伸びやかさを取り戻そう)にたち、まずありのままの自分でいても良い、安心できる居場所、ゆとりのある教育環境の中で子供たちは育ちます。不安と緊張から解放され、自分の気持ちを素直に表現し、受け止めてくれる人間に出会うことで彼らは安心と信頼を形成します。そこから仲間やスタッフとの体験を通して少しずつ「自分らしい」動きを見せるようになります。周囲に合わせることを続けてきた不登校の子供たちにとって「やらされる」のではなく、自らの意志で主体的かつ能動的に活動することは極めて重要なことです。自らそれぞれの目標に向かって考え、決定し、行動する。また、それぞれを受け止める環境とゆったりとした生活の中で彼らは主体的な学習を取り戻します。
 
食堂。食事時間は2時間と長め。各々のペースで食事がとれる。セルフサービスで食べ終えた食器は各自が洗う。
 
図書室は十分な量の本が所狭しと並ぶ。生徒の中には図書館をまるで自分の部屋のように使い、本を読みふける子も。
 
生徒の焼き物。決められた形の物はなく、自分で創造して作ったと一目で分かる作品がずらりと並んでいる。
 
興味があるものに取り組む、という校風。パソコンに興味はあるが使い方が分からない生徒に得意な生徒が教える。
 
美術室。スタッフの椿野さんは「時間をかけて自己表現をできる場所があるのは非常に良い」とおっしゃっていた。
 
家庭科クラス。料理に興味があれば料理作りに専念できる。生徒達は非常に楽しそうに料理をしている。
 
 全寮制という集団生活の中で、彼らは「子供社会」を形成し、様々なことを学習します。私たちは子供たちが本音でぶつかり合い、共に成長していけるような集団生活を援助していきたいと考えています。
 また、私たちは子供たちを週末は帰宅させるようにしています。親元を離れるということが自立のテーマであることは明確ですが、家族との関係は非常に重要で、週末に自宅で家族と過ごすことで普段の寮生活とは違った安心感や親子関係の再発見の機会となればと考えています。
●卒設の基準
 学校なので卒業ということになりますが、3年生の12月より一人ひとり担任による面接が行われ、その後学園長との面接を経て卒業となります。学期ごと、ケースごとに適時担任等と面談を持つようにしているので、卒業面接や学園長面接は自分の目標が達成できたか(入学時に目標作文を書くようになっている)などの3年間の「意味」を振り返るものとなります。ときには4、5時間の長い面接になることもあります。
●年代別目標
 入学時に「どうしてこの学園に入学したいか」ということを作文や面接で確認します。その後、学期ごとや適時各々の目標を担任と点検していきます。
●施設における自立の定義
 自ら考え、決定し、行動する。その結果が最高であろうと最低であろうとそれを引き受け、責任の取れる力を身に付けること。
 
全寮制をとっている生野学園では共同生活を通じて様々なことを経験しながら人間関係を育んでいく。基本的に規則はなく、生徒達は自分たちで考え、問題を解決する。
 
インタビューでも音楽に興味があると話してくれた生徒も多かった。音楽室はいつも音と音楽の話で溢れている。出来る子が出来ない子に積極的に教えるという雰囲気は非常に和やかである。
 
●在籍生の就職状況とその支援体制
 アルバイト、進学、就職、結婚とその状況は様々です。卒業後に数年間模索があって進路を決める子供もいます。卒業生への訪問活動など卒業した後までケアしています。
●在籍生のアルバイトの可否・その状況と支援体制
 もちろん禁止ということはありません。週末帰宅の時や学期休みの時にアルバイトをする子はいます。アルバイトを探すに当たっては一緒に考えることもあります。
●作業(有償/無償)の有無・その内容と状況
 普段のカリキュラムの中にいろいろ盛り込まれていたり、随時組み込まれていきます。畑作業、ミツバチ飼育、石釜作りや池作りなど学習活動の中での作業があります。地域の保育所や障害者の作業所に定期的に訪問する活動も行っています。
●教科学習の必要性とサポート体制
 基礎学習は大切だと思います。学習をやらされ、傷ついてきたバックグラウンドを持つ子供が多いので、押し付けるのではなく、各々の好奇心や信頼関係、友達や先輩、卒業生、スタッフという関係する人間の姿に刺激されて自発的、主体的に学習に取り組むことが大切だと思います。
●在籍生の心理的サポート体制
 個別カウンセリングや担任面接を随時行うと共に家庭訪問を通じて心理的なサポートをしています。また、森下神経内科診療所、京口カウンセリングセンターとの連携も持っています。しかし、日常生活の中や宿直の際の、スタッフとの何気ない会話が心理的サポートになっているケースが多いようです。
●外部医療機関との連携
 京口スコラ、京口カウンセリングセンターとの連携を密にしています。
●在籍生の保護者へのサポート体制
 定例である1泊2日の親の会や親の会通信、担任面接、カウンセリング、学年通信などを通じて、できるだけ多くの情報を保護者の方々に提供するようにしています。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION