■代表者に訊く
中野 昌俊さん
●どんぐり向方塾理事長
●団体の特徴
村の活性化事業として休校中(廃校)の校舎を使ったフリースクールの開校は、長野県では例がなく、また全国的に見ても殆ど例がありません。また教育委員会、学校と連携して運営しているフリースクールとしても珍しい団体です。長野県教育委員会、他の市町村、不登校・登校拒否児童などに関わっている団体も注目している事業です。
左右に一人部屋と二人部屋。子供の希望で選択。室内は木製のベッドと机があり、各室にストーブも完備。 |
調理係のスタッフ。休校になるまで向方小学校で給食を作っていた方。 |
子供たちはよく体育館で遊んでいる。壇上にはグランドピアノもそのまま置かれている。 |
本日のメニューはキムチ鍋。キムチが苦手な人のために普通鍋も用意されていた。 |
理事長が連れてきた子猫。子供たちとじゃれ合ったり、夜は子供のベットに。 |
どんぐり向方塾では、「読み書きそろばん(国語と算数)」を重点的に教え、理科、社会は、調べることを基本として教え、生きる力を育みます。また、当フリースクールの一つの目玉となるものですが、野菜作り、米作り、魚釣り、山菜取り、樹木手入れ、木登り、しめ縄作りや草履などの藁細工、炭焼き、陶芸、ゆべし作りなどの活動もあります。これならば子供たちに教えることができる「天龍村の名人・達人(技能教授者)」を登録して、技能教授者の方々が持っている知恵と技能・技術を子供たちに伝授していただきます。
そうして、「まごころと思いやり」を持った人間となり、社会的な諸関係を作ることができること、さらに、一人ひとりの子供たちの持っている優れた能力と適性を見つけ、引き出すことを考えています。
高齢者は、子供たちに自分の持っている知恵と技術を教えることで生き甲斐を感じ、子供たちは、高齢者の技術と生活の知恵を学ぶことができます。村の高齢者などの指導を受けて、体験学習することで、「いのち」の尊さを学習できます。
現在の子供たちは、いろんな生活の知恵、生活実践が乏しく、脳の発達が不十分なまま成長しています。人間が他の動物(現世類人猿と比較しても)との一番大きく違う点は、脳の前頭葉が著しく発達しているということです。現在社会的に問題となっている、多動児、キレやすい人、躁鬱状態の人、人格障害などは、脳の前頭葉の発達不十分で説明が可能です。脳の発達の不十分さにくわえて、“物カネ”優先社会がそれに拍車をかけています。子供の異常は、大人の異常の反映と考えています。また、村の高齢者の精神的な活性化によって、高齢者の健康維持・増進も期待でき、本来的な村の活性化が期待できるのです。
図書室。以前の小学校にあった図書室をそのまま使用している。 |
山村留学で入学している子(小3)をバス停まで送っていく理事長。 |
人は、未熟な脳の状態で誕生します。未熟な脳の状態は、誕生後多くの情報を得ることでシナプス(情報交換の場)を作ります。脳細胞がいくつあってもシナプスの形成がなければ、脳の働きは不十分です。現在の子供たちは、受験勉強をするだけで、人が生きる上で必要な情報を得ていません。まごころと人への思いやり、人との会話、忍耐力を得るための教育が皆無に等しいのです。子供も親も、学校の勉強さえできれば何もしなくてよいし、逆に何をしてもよいのです。反対に勉強(偏差値教育)が出来なければ、人間性すら否定されてしまいます。感受性の強い子供たちは、学校に拒否反応を示して、不登校・登校拒否をするのです。不登校・登校拒否は、子供の心が傷を負っているのです。
神経科学、脳の生理学から考えて、子供をダメにする最も簡単な方法は、子供の好きなもの、要求するものをすべて与え続けることです。このようにすれば、脳は十分に発達せず、わがままで自分では思考できない子供が育ちます。日本の子供たちがそのような状況の中で生きています。その結果が現在の異常行動として現れているのです。人間が人間らしく生きるには、脳の前頭葉を発達させることが必要です。この前頭葉は、各種体験、失敗によって最もよく発達します。今の子供たちは、家の簡単な手伝いすらしないで受験に必要な勉強だけをしています。これでは前頭葉は十分に発達しません。子供を過保護にし、甘やかすことは、子供をダメにすることなのです。
●卒設の基準
親、本人と塾との話し合いによります。
●年代別目標
国語、算数、英語の基礎学力を身に付け、種々の体験学習を行い、生きる力を育む。
●施設における自立の定義
自分のことは自分でできる。また、自分がしたことに対して責任をとる。
●在籍生の就職状況とその支援体制
中学生までの子供なのでしていません。
●在籍生のアルバイトの可否・その状況と支援体制
同上。
●作業(有償/無償)の有無・その内容と状況
「どんぐり塾はお年寄りが先生」という理念から、村の高齢者の方々から教わる農作業、藁細工、魚釣り、キノコ採り、炭焼きなど様々な作業が可能です。
●教科学習の必要性とサポート体制
開校から間がなく、現在は軌道に乗っていませんが、ゆくゆくは国語、算数、英語の基礎学力をつける学習を実施したいと考えています。
●在籍生の心理的サポート体制
共に暮らしながらスタッフが見守っています。
●外部医療機関との連携
私自身が愛知医大の講師をしてます。また、村には診療所があります。
●在籍生の保護者へのサポート体制
年4回、親の会を開催しています。また随時電話で連絡を取るようにしています。スタッフと親との緊密な協力が大切であると考えています。
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