日本財団 図書館


◆スタッフに訊く・・・1
和田 正宏さん
●31歳 男性 正規スタッフ
 
※時間の関係上、インタビューは短めです。
●施設と関わるようになった理由
※調査員注:和田重宏先生の息子さんで、はじめ塾をもうすぐ継承することになっています。
●施設について
 様々な人との出会い、多くの体験を大人、子供関係なく一緒に行う雑木林教育をモットーにしています。
●在籍生との関わりで注意している点
 一番注意していることはそれぞれのプライベートです。集団生活だからこそなおさらプライベート確保が重要です。簡単なことですが、睡眠の邪魔は絶対にしない。共同部屋なので先に就寝している子には、全員が最大限に気を遣うようにしています。後は、貸し借りをきちんと守ること。人の物は勝手に使わない。使うときは相互理解(同意)をはじめに取るように言っています。もし誰かが無くし物をしたときには全員が各自の荷物を一つの部屋に持ち寄って確認をします。殆どの場合、誰かが取ったとか勝手に借りたということはなく、本人が無くしています(笑)。
●ここで働いて喜びを感じるとき
 子供たちが本当に「やりたいこと」を見つけることができたときですね。それを目標にはじめ塾も活動しています。
 
◆スタッフに訊く・・・2
深田さん(左)村田さん(右)
●「母の会」会員
●施設と関わるようになった理由
 子供3人が全員はじめ塾にお世話になりました。全員中学生の間に2年間入寮をすすめました。はじめ塾では同じ年齢だけではなく、多くの年代の子供と共同生活を行い、その子らしさを引き出してくれます。同年齢という比較ではなく、1人の人間として扱われる。子供ができることを発見し、その良い部分を伸ばすことができます。子供が自立に向けて成長していることを日々実感しています。(深田さん)
 初めは娘との問題で、はじめ塾を訪れました。その時に和田先生が「はじめ塾で、あなたが抱えた問題とどのように生きていくのかを学ぶなら、私はあなたと時間を共有することに意味があると思う」と言われ、素直な気持ちで娘との問題に取り組みました。この問題は自分自身の問題であると認識しました。自分の子供でありながらはじめ塾との関わり合いの中で子供を「育てていただき」、また人の子を「育てている」と感じています。同じ仲間との相互扶助、お年寄りから子供までの小さなコミュニティーを持つはじめ塾ではそれらが当たり前となっています。(村田さん)
●施設について
 はじめ塾と晋通の塾の違いは、普通の塾が勉強を教える場所ならば、はじめ塾は人との対話や様々な経験を通して生きる力を学べる場所です。生活と教育が分離しているのではなく、教育も生活の一部という捉え方です。また、ここは温かい場所であると同時に厳しい場所でもあります。何を見て何に疑問を持つかは各個人に任されており、先生方や周囲からの指示などはありません。その人の生き方は教えられるものではなく、見つけるものだと子供たちだけではなく大人にも教えています。(深田さん)
 
★在籍生に訊く・・・1
マークさん
●18歳 男性 在籍年数2年9ヶ月
 
●入寮する以前の状態と入寮のきっかけ
 中学卒業後に親の事情でイギリスの中学(4年制)に転校したんですけど、イギリスの学校に馴染めなかったので、はじめ塾に入寮しました。今は高校3年生です。入寮してからもう2年9ヶ月経ちました。
●現在施設で行っていること(作業・通学・勉強など)
 今は高校へ通っています。
●施設で楽しいこと
 毎日楽しいですよ。いろんな経験をしたり、いろんな人に会ったりしている間に自分も変わりました。山での共同生活合宿で先生とか周囲の人に怒られたり、褒められたり、みんなで一緒になって遊んだりとか。普通に学校へ行っていたら毎日同じ生活だし、それしかない。でも、ここには苦しいときに多くの友達とか先生とかがいて悩みなんかも相談できる。だから毎日が楽しいです。
●施設で辛いこと
 初め入寮したときは家事とかを全部やらないといけなかったのが辛かった。でもホームシックとかにかかったことがないんです。家のあるイギリスが辛かったっていうのもあるし・・・。後は自分ができると考えていることが実際にできなかったりすると悩みました。でもいろいろな体験をするうちに何でできないのか理解するようになったし、できなかったことができるようにもなりました。たまに高校の友達がカラオケ行ったりゲーセンに行ったりするときはうらやましかったですね。今は全然そんなことないですけど。
●入寮後自分の中で変化したこと
 はじめ塾に来てから物事を素直に受け止められるようになりました。自然と感情表現もできるようになった。それまでは何をしてもつまらないっていうか、何も感じなかった。
●今の目標
 大学進学がもう決まっています。はじめ塾を出て1人暮らしを始めると思います。
●将来について
 お父さんの影響で国際経済に興味があって、大学の専攻もそれです。今は為替の勉強とかを自分でしています。はじめ塾でやりたいことが明確になりました。将来は自分で会社を経営したいです。
●他の在籍生との関係
 超楽しいです。毎日。
●代表・スタッフの方との関係
 学校の先生は他人だけど、はじめ塾の先生は一緒に生活や活動もする。相談もできるし、笑ったり悲しんだりも一緒にします。はじめ塾の先生達は他人どころか家族です。
 
★在籍生に訊く・・・2
●16歳 男性 在籍年数2年7ヶ月
●入寮する以前の状態と入寮のきっかけ
 中学でぐれて学校にも行かなくなりました。その時に親に「塾で中国旅行に行けるから」って言われて、興味があったのでなんとなく参加したのがきっかけです。
●現在施設で行っていること(作業・通学・勉強など)
 高校へ通っています。
●施設で楽しいこと
 毎日が合宿で楽しい。いつも友達が周りにいるし。
●施設で辛いこと
 特に辛かったことも苦しかったこともありません。あったとしても大したことではないです。自分1人ではダメだったかもしれないことも、ここでは先生方や友達、父母の方々、そして親友とかいつも周囲に支えてくれる人がいて助けてもらっているので。後は普通の高校生がやっていることをやりたくなるときはあります。隠れてやっています。ルールを一番破っているのは僕だと思います(笑)。破って怒られるのも辛いけど、もっと辛いのは遊んだ後に帰るときの自分の気持ち。みんなも遊びたいのにルールを守っている。自分は破っているから。
●入寮後自分の中で変化したこと
 生活を始めてからすごく勉強がしたくなった(笑)。
 学習意欲が自然に出てきて、高校に通学することになりました。昔からお父さんの影響もあって医者になりたい気持ちはあったんですけど、はじめ塾に来ていろんな経験をしたり、人との関わり合いを持つことで医者になることを決意しました。特に変化したのは昼夜逆転生活の解消。昔は朝に寝て夕方に起きていました。今では自分でスケジュールを立てて行動できます。はじめ塾のイベントにも積極的に参加しています。同世代の学生よりも多くの経験ができるからです。
●将来について
 やっぱり医者になりたいです。
●他の在籍生との関係
 親友もいるし、結構みんなと仲良く楽しくしています。
●親との関係
 ここに来ると大人も子供も変わります。親との関係も。親子参加のイベントばっかりだから話し合いの時間がある。少しずつ親と話し合いができるようになりました。
 
★在籍生に訊く・・・3
●24歳 女性 在籍年数1年8ヶ月
●入寮する以前の状態と入寮のきっかけ
 中学時代にはじめ塾の勉強合宿へ参加したのがきっかけです。母の知人の勧めで兄に続いて参加しました。そこでの生活体験に感激してしまい、それ以来不定期ですがイベントには参加していました。大学進学後社会に出ることに不安があり、はじめ塾の合宿の体験が心に残っていたこともあって、はじめ塾から通学できる大学に再度入学しました。
●現在施設で行っていること(作業・通学・勉強など)
 はじめ塾から大学に通学しています。
●施設で楽しいこと
 他の子と自分の年齢差(すぐ下の在籍生は18歳)があるにもかかわらず、一緒に生活する仲間よりも柔軟性にかけるところがあり、生活力が劣っているように感じています。周りの小さな子供から様々なことを学ぶことそのものが楽しいです。
●入寮後自分の中で変化したこと
 ここで共同生活をしている間に以前よりも自分自身が見えてきたと思います。様々な体験、仲間との触れ合い、数多くの人との出会いを重ねていくうちに人間関係の大切さを学び、自分の成長を実感しています。また周りの方々に支えられ自分も誰かを支えているように思います。様々な年代の人間と関わり人を知ることでより自分を知るようになってきたと思います。
●将来について
 以前からはじめ塾に不定期であるにせよ関わっていたからだけではないと思いますが、幼稚園の給食を作る仕事に就きたいと思っています。
●現在の施設の印象
 できないことも認めてくれる非常に良い環境であると思います。
●代表・スタッフの方との関係
 悩みを打ち明けることのできる人々が周りにいて、悩みを解決する答えではなくカギを頂けるので途方に暮れることはありません。昔は理想の自分とのギャップに悩むことも多かったのですが、はじめ塾の方々は理想ではなく、ありのままの自分を受け入れてくれます。
 
★在籍生に訊く・・・4
●15歳 男性 在籍年数1年
●入寮する以前の状態と入寮のきっかけ
 小学校一年生の時からはじめ塾には来てます。ずっと通所でした。寮に入るきっかけになったのは、中学2年生のときに不登校になったから。だんだん朝起きることができなくなって、そのまま学校へ行かなくなりました。そして両親に自分からはじめ塾への入寮を希望しました。今も学校へは行っていません。でも高校へは進学したいので受験に向けて一生懸命勉強しています。
●現在施設で行っていること(作業・通学・勉強など)
 今は高校受験に向けて勉強をしています。
●施設で辛いこと
 朝起きるのがたまにつらい。もっと寝ていたいときもあります。今は受験勉強をしているのでどうしても夜遅くなる時があります。でも勉強は辛くない。入寮してからはずっといろいろな作業をしていました。だんだん勉強したいなって思ってきたのですがやらせてもらえなかった(笑)。
 でも本当に勉強したくなって相談したらOKが出ました。そのとき高校進学への決意が完全に固まったと思います。
●入寮後自分の中で変化したこと
 ここで生活を始めてから自分で動けるようになった。自分から行動できるようになった。何かをすることに意欲が出てきました。周りの雰囲気とか環境とかが自分を変えてくれたと思う。年下もたくさんいるので自分がやらないといけないし、合宿での生活ではみんなを引っ張っていかないといけないから。そうやってがんばっている間にいろいろ気を配れるようになりました。面倒くさいことも続けていると楽しくなります。
●今の目標
 高校進学です。そのための勉強も楽しくやっています。
●将来について
 警察官になりたいです。捕まえられるよりも捕まえるほうが面白そうだから。冗談ですよ(笑)。
●現在の施設の印象
 はじめ塾は厳しいことも言われるけど自分を1人の人間として、1人の個人として見てくれます。その対応が自分を成長させてくれていると思う。
●親との関係
 入寮当初はあまり話さなかったけど、入寮してからだいぶ会話をするようになりました。たぶん親子参加のイベントが多くて一緒の時間を長く持つようになったからだと思います。今では一緒に参加することが楽しみです。一度距離を置いたのも良かったと思います。
 
▼団体詳細
団体名称●NPO法人 寄宿生活塾はじめ塾(キシュクセイカツジュク ハジメジュク)
代表者名●和田 重宏(ワダ シゲヒロ)
所在地●〒250−0045 神奈川県小田原市城山1−11−7(オダワラシシロヤマ)
電話番号●0465−34−6033 FAX●0465−32−4077
URL●http://homepage2.nifty.com/hajimejyuku/ E−MAIL●hajimejyuku@aol.com
設立年度●1974年 在籍生平均在籍年数●1〜3年
入寮生数●男・・・9人 女・・・6人(平均年齢・・・15歳) 入寮定員●男・・・9人 女・・・6人
通所生数●男・・・2人 女・・・2人(平均年齢・・・16歳) 通所定員●男・・・―人 女・・・―人
年齢制限●無し 性別制限●無し 相談業務●有り(5,000円/h)家庭訪問●無し
親の会●有り(300人) 会報発行●有り(年12回)
特記事項●親の会の名称は「母の会」。主に塾生の母親によって作られている。/通所者には様々な形があり、人数は記載していない。/設立年度1974年は和田重宏(現代表)がはじめ塾を継いだ年であり、はじめ塾の歴史は1933(昭和8)年より始まっている。
スタッフ状況●[日中]作業・勉強等にはスタッフが付く。[夜間]共同生活のため、スタッフが常駐
スタッフ●[正規]男・・・2 女・・・2 [ボランティア]男・・・5 女・・・11 [その他]男・・・― 女・・・―
 
▼通所費・入寮費
通所生●入会費・・・12,000円(塾生登録金)/月額負担金・・・5,000円
入寮生●月額負担金・・・100,000円
※通所→入寮が多い。
 
▼生活
日課スケジュール●[午前]6:00・・・起床(食事当番は5:00起床)/7:00・・・朝食/9:00・・・通所者通塾。掃除(共同使用場所)。各プログラムごとに分かれて行動[午後]12:00・・・昼食/1:00・・・各プログラム再開/4:00・・・終了/6:00・・・夕食/7:00・・・通所者帰宅/就寝時間は自分で決める。
週末・休日●山での寮生活をする・山林の作業・レクリエーション活動・陶芸・炭焼き・その他多数のイベント。
食事●食事は当番制。献立は専門スタッフが行い、寮生たちが一緒につくる。
清掃●自分の場所は自分で清掃。共同使用場所は毎日分担して清掃している。
年間スケジュール●1月・・・スキー/2月・・・耐寒合宿/3月・・・卒業旅行・春合宿/4月・・・会員交流「春のつどい」/5月・・・春の生活体験合宿/6月・・・第一回連続生活体験合宿/7月・・・第二回連続生活体験合宿・7月8月は夏期日課/9月・・・第三回連続生活体験合宿/10月・・・第四回連続生活体験合宿/11月・・・第五回連続生活体験合宿/12月・・・冬合宿。
※米やみかんなど季節に合わせた農作業体験を行っている。







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