■代表者に訊く
金森 克雄さん
●NPO法人 コロンブスアカデミー代表
●団体の特徴
コロンブスアカデミーは海外で10年以上前からフリースクールをやってきました。今どんなことを考えているかと言えば、不登校、ひきこもりなどのマイナスイメージを払拭したいと思っています。自分には少数派に対する共感のようなものがあります。社会を変革したのは常にほんの一部の少数派でした。ですから子供たちには自分たちの境遇を逆手にとって、「積極的な少数派になれ!」とよく言っています。そして他人と違う部分で他人を凌駕してしまえと。例えばヨットで世界一になるとか、寅さんを英語で外人に紹介するとか、お好み焼き屋をシティーのど真ん中でやるとかね。とにかく一味違う生き方をしたらいいって言っています。
それからダイナミックなことをやって精神の高みにジャンプしてしまおうとも言っています。ヨットによる外洋長期航海は89年から始めて今年でもう20回目になりますが、誰も後からやる人が出てきません。それは大きなリスクが伴うからです。それでもそういう危険の伴う体験を必要としている子供がいるんです。その体験を通して力を合わせて助け合うことの大切さや、生きていることの素晴らしさに気づいたりできるんです。
ニュージーランドコロンブスフリースクールにて。外洋航海に向かうヨットに乗り込んだ生徒達。 |
インターナショナルコロンブスアカデミー(IC)の生徒たち。 |
ニュージーランドのIC経営の日本レストラン。ここは生徒達の就業体験の場となっている。 |
それからもう一つ、「やっぱりやるからには楽しいことをしよう」とよく言っています。面白くないことはやっても意味がない。ただ、面白くないってことは苦労を伴わないから面白くないってことでもあるんですね。だから大変でもワクワクするとか、心がときめくとか、そういうことにどんどん挑戦したらいいと思うんです。
子供と接していてつくづく思うのは誰も子供に教えられないということです。彼らは生活人としてのスタンスの中で一緒に習字を習ったり、レストランを経営したりして、育ち合うんです。ここでは誰一人として教育者にはなるな、そうはさせないって言っています。それよりも、まず自分自身がしっかり立っているか、まず自立せよってね。また、一緒にやるって言っても、ただのカウンセリングやハイキングというのではなくて、具体的な生活活動をやってその中で育ち合うことがとても大切なんだと思います。
今後の展望ということですが、タメ塾(NPO法人青少年自立援助センターのこと)の工藤さんと同じで、最終的には「食ってなんぼ」です。就業支援に真剣に取り組んでいきたいです。学校へ行けるようになっても仕事に就けないことには何もなりません。現在、お好み焼き屋の横浜チェーン展開を考えています。ネットワークを組みながらニュージーランドでの生活圏の拡大も考えています。ここで生活しようとする子供も増えていますが、ただ住むだけではだめです。働かなくっちゃね。でも、ニュージーランドは仕事が少ないから古本屋、古着屋、日本レストランなど子供たちがやりたいことを支援しながらあれこれ試しています。
私は楽天的行動主義っていうんですか、行動から学ぶっていうことをこれからも実践していきたいと思っています。
※ニュージーランドに滞在している金森克雄代表に国際電話でお話を伺いました。
以下は六浦共同生活舎ムツコロの主任スタッフ尾根山智彦さんに伺った内容です。
●卒設の基準
特定の基準は設けていないが開設して短い期間の中で体験的に感じているのは、ここはあくまで次のステップヘの通過点としてとらえ、半年ぐらいのうちに次のステップをスタッフや親と一緒に考えて決めるのがいいのではないかということです。
●年代別目標
年代別目標はありません。一人ひとりの事情に応じて最もよいと思われる道を話し合いながら決めています。
●施設における自立の定義
この施設は将来の自立へ向けての一つのステップと考えていますので、ここで生活する子供たちにすぐ自立を求めるつもりはありません。その前提でコロンブスアカデミー全体で、つまりニュージーランドのフリースクールも含めて考えればその子のエネルギーが高まって、自分でやりたいことが見え、自分から「ここを出たい」と言ったときが自立と言えます。
●在籍生の就職状況とその支援体制
就職を希望する子がいればその希望が叶うように支援します。
●在籍生のアルバイトの可否・その状況と支援体制
アルバイトがやりたい子には積極的に支援しています。外でできる子は外でやらせていますが、それが無理な子には就業体験を兼ねて自前のお好み焼き屋で働いてもらっています。
●作業(有償/無償)の有無・その内容と状況
フリーマーケットでの作品作りや販売(無償)、各種イベントの企画運営(無償)、お好み焼き屋の仕事(有償)、事務所の手伝い(無償)など。
●教科学習の必要性とサポート体制
勉強したい子にはスタッフが個別に学習補助という形で教えています。また、「時間の時間」といってみんなが一堂に会することのできる時間(今は午後5時から)は、1時間勉強でも読書でも漫画でもいいがテーブルに向かって何かをする時間を作るようにしています。そしてその時に子供たちの様子をスタッフは観察するようにしています。
●在籍生の心理的サポート体制
スタッフが常時子供の様子を見ていますが、スタッフがあれこれ注意をしたりすることは少ないです。外からやってくるボランティアスタッフの方がむしろ真剣な話をしていることも多いです。その子にとって言いやすいスタッフは年齢差、男女差などで一人ひとり異なっているようです。要するに様々なスタッフとの関わりによって、その中には話し易く気の合うスタッフがいて、それが大きな心理的サポートにもなっているようです。
●外部医療機関との連携
専属の小児科医の方がいて何かあるとすぐそこで診ていただいています。昔からお付き合いをさせていただいていて信頼しています。
●在籍生の保護者へのサポート体制
毎月一回親のためのフリースペースを開いて誰でも参加できるようにしています。そこで同じ体験を乗り越えた親御さん方に話していただいたり、交流していただいています。もちろんスタッフと保護者の個別相談もやっています。会報では子供たちの様子も紹介しています。
スタッフに訊く・・・1
末長 千明さん
●29歳 女性 正規スタッフ 勤続年数2年
●施設と関わるようになった理由
ニュージーランドにワーキングホリデーで行っていたときに現地のコロンブスと出会ったのがきっかけです。そこで4ヶ月働き、日本に帰国後コロンブスアカデミーに入りました。
●施設について
現在危機的状況下にある子供たち、そして家族の「かけこみ寺」的存在として、多いに利用していって欲しいです。
●在籍生の変化に気づくとき
何気ない会話の中でその子の言葉づかいなどから気づいたりします。また次の段階の問題にぶつかっているのを見ると、前の段階はクリアしたんだなと思います。
●在籍生との関わりで注意している点
問題が起こった時のスタッフの対応に特に注意しています。いろいろな役割分担で一人ひとりの子供たちと接し関わっています。
●ここで働いて喜びを感じるとき
やり甲斐を感じているので事務所で一人で仕事をしているときでも楽しいです。みんなで一緒に食事をしたり、笑ったりしているときは本当に楽しいですね。
●辛いと感じるとき
その子を叱ったりした原因が実は自分の問題だと気づいたときです。それから子供のためにいろいろやっていたのに寮から出て行ってしまったときは辛いです。
●施設での自分のポジション(役割)
事務処理一般です。それと子供と関わっているスタッフやボランティアスタッフの精神的なフォローもやっています。あとは寮生の親御さんとの連絡とサポートです。
●施設の今後について
まずはムツコロの寮生を増やしたいですね。精神的に子供をきちっとフォローできるようなボランティアの養成も必要だと思っています。そしてボランティアを含め、スタッフの数を増やして、子供と関わることの出来る人数を多くしたいですね。
●代表・その他のスタッフについて
代表はわがままで自分の気持ちに素直で、どこか人を惹きつけるところがあります。彼が好きだからそこで生活をしている子供たちも多いです。人を許し、人に寛大。スタッフも生徒も同じ気持ちだと思います。スタッフはみんなで一つひとつ壁にぶつかって、一緒にそれを乗り越えた仲間です。自分もそれを教え、また教えられている、そのような関係です。
●その他
ここに関わる前は、世間一般と同じような目で不登校の子供たちを見ていたと思います。しかし、ここでそのような子供たち一人ひとりと一歩一歩共に進み、共に問題を解決していくことを体験し、このような取り組みが社会に欠けていることを知りました。そしてグループとして大勢を見るのではなく、一人ひとりとじっくり関わりあうところがあってもいいということを知りました。
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