日本財団 図書館


◆スタッフに訊く・・・1
富谷 弘さん
●66歳 男性 ボランティアスタッフ 勤続年数12年
●施設と関わるようになった理由
 蔵王いこいの里と関わるようになったきっかけは息子がここに入寮していたからです。本格的にボランティアスタッフを開始したのは9年前ぐらいからです。東京での仕事を若い人間にゆずり、一ヶ月の半分ぐらいはボランティアという形でここに関わっています。
●施設について
 ここは場所も条件も在籍生にとって非常に良いと思います。都会のように子どもへの誘惑が非常に少ない。個人の買い物は月に2回と決まっています。それに誘惑が少ないということは子どもたちが目の前のやるべきことに集中できる環境でもあるわけです。
●在籍生の変化に気づくとき
 ここに来る子だけではないのですが、全体的に何かにつけて人のせいにする子が多い。親・周りの大人・社会等。そういう発言が減ってくると変化を感じます。そうした頃には、子どもたちは自発的に行動するようになります。共同生活を行うことで社会性を学び、人との関わり方や周囲の人間のことを考える気遣いができるようになってきます。
●在籍生との関わりで注意している点
 まずはうそをつかないことです。そして悪いことはしない。当然、人のせいにするようなこともありません。大人がそれをすれば子どもだって真似をします。同じことをしているのに在籍生を注意することはできませんからね(笑)。
 それと共同生活の空間が息苦しくならないように小言は控えます。何かを言うときは面と向かって目を見て話しをするようにしています。小言をいつも言っていると子どもたちもそれに慣れてしまい、その慣れが怒られたときに何も感じない状態を作りかねません。
●ここで働いて喜びを感じるとき
 元気になる子どもたちを見ているときに一番喜びとやりがいを感じます。お金では買うことのできないものですね。損得勘定では子ども相手に何かをすることはできないでしょう。ただ、どうせやるなら楽しくやるということをいつも考えています。
●辛いと感じるとき
 特にないですね。
●施設の今後について
 代表の意思の範囲内であれば、今後も今の施設方針とやり方を継続することで問題ないと思います。ここに来る子どもたちはいつも生き生きしていますよ。
 
◆スタッフに訊く・・・2
河田 由美子さん
●正規スタッフ 女性 勤続年数5年
 
●施設と関わるようになった理由
 職業安定所で求人を見つけて来ました。元々教職を持っていて学校関係に興味があったし、それまでホテルで勤務していたので蔵王いこいの里という場所は非常に自分に合っていると思いました。簡単な職場事情は聞いていたのですが、何も先入観を持たずに来たので素直に溶け込めたと思います。
●施設について
 様々な子どもたちが大自然に囲まれて共同生活をしています。ここで自分は在籍生の母親的な存在だと思います。ですから、子どもたちも本音をぶつけてきたり、わがままを言ってきたりすることも多いです。子どもたちも誰に何を言えるのかを理解しているようですね。私は騙され易いし、そういう意味で何でも話してくるのかもしれないですね(笑)。
●在籍生の変化に気づくとき
 彼らは日々刻々と変化しています。毎日接しているためか、なかなか変化に気づくことは難しいですね。ただ気づかぬ間に季節が変わっているように、子どもたちが変わっていたということのほうが多いですね。
●在籍生との関わりで注意している点
 自分に余裕がなければ子どもたちにも余裕を持って接することができないので、体調をつねに安定させておくことには最善の注意を払っています。これは自分への注意ですけど、体調管理は自分のためでもあり、子どもたちのためでもあると思います。体調が悪いときは子どもたちにあたることもあるので、朝から「今日は体調悪いから気をつけて」と予め警告するようにしています(笑)。
●ここで働いて喜びを感じるとき
 子どもたちが良いほうへ変化していることにふっと気がついた時が非常にうれしいです。突然やさしい言葉をかけてくれたりとか、卒設した後に自立して元気に生活していることを電話などで知らせてくれる時なども喜びを感じます。
 それと少しでも子どもたちの役に立てることに一番の喜びを感じます。変化していくのは本人の自覚次第で、私が彼らに与える影響は大きくないと思っています。ただ本人が将来振り返ったときに蔵王いこいの里での生活が自分に少しでも良い影響を与えたと思ってくれればうれしいです。
 
★在籍生に訊く・・・1
●24歳 女性 在籍年数2年
 
●入寮する以前の状態と入寮のきっかけ
 父は有名国立大出身の研究者、母も同じく有名国立大出身の教授で、お姉さんも成績優秀でした。家族全員がとても優秀でした。プレッシャーである日突然動けなくなりました。しばらく自宅にひきこもっていたのですが、なんとか自宅近くの相談センターに行って、いこいの里を紹介されました。
●入寮当時の施設の印象
 初めは環境の変化に戸惑い、大変だとかつらいとずっと思っていました。
●現在施設で行っていること(作業・通学・勉強など)
 去年から通信制高校に通っています。月に4回あるスクーリングでは山形駅まで降りて学校に通っています。それと時間があるときにはエコー山荘の手伝いをしています。主に配膳と接客をやっています。
●施設で楽しいこと
 スキー場が目の前で、スキーをすることが多かったので、初めは体力的にきつかったんですが、今では体力も徐々についてきてスキーをすることが楽しくなりました。それと集団生活なので仲間ができ自然の中で非常に健康的な生活を送れて楽しいです。
●施設で辛いこと
 スキーや雪下ろしが辛かったけど今では全然平気です。つらいと思うこともほとんどないです。
●入寮後自分の中で変化したこと
 スキーやエコー山荘での仕事も毎日続けていると自分の変化に気づきます。それと昔は頭の中だけでいろいろ考えていましたが、ここでは実際に体を動かして働くことで頭でっかちだった自分が分かり、地に足がついてきたと思います。まずやってみようと考えるようになりました。
●今の目標
 まずは通信制高校を終わらせて、それまでに本当にやりたいことを見つけたいです。そうしたら、それに向けて資格取得の勉強がしたいです。
●将来について
 自分で生活していくことです。自立ですね。
●現在の施設の印象
 ここではいつでも周りの方々の支えがあり、私という人間を理解してもらっているので精神的に非常に楽です。調子の波が昔より小さくなったのも施設に関わる方々の温かさだと思います。
 自信がなくて外に出られない人は思い切って踏み出せば大丈夫だと思います。仲間と信頼関係を作って支え合って、やりたいことの発見のために一歩踏み出せます。
●他の在籍生との関係
 みんながんばっているので私もきちんとやらないと、と思います。みんなを見て自分の励みにしています。先輩は後輩を指導したりします。
●親との関係
 両親との関係にはまだ変化はないです。
●代表・スタッフの方との関係
 岩川さんは愛情があり非常にやさしい人です。あと、人を叱ることができる人です。
 
★在籍生に訊く・・・2
●16歳 男性 在籍年数4ヶ月
 
●入寮する以前の状態と入寮のきっかけ
 小学校3年生の時に不登校になり、今でも精神科に通って薬を飲んでいます。いこいの里へは親の勧めで来ました。
●入寮当時の施設の印象
 最初はとにかく帰りたくて帰りたくてしょうがなかった。
●現在施設で行っていること(作業・通学・勉強など)
 平日は作業をやっています。
●施設で楽しいこと
 スキーが面白い。どんどん面白くなっています。
●施設で辛いこと
 雪下ろしのときがすごく疲れる。
●入寮後自分の中で変化したこと
 生活習慣が変わった。朝起きて夜寝るようになりました。それと自分のことはすべて自分でやらないといけないので基本的なことは何でもできるようになった。
●今の目標
 スキーをもっとうまくなって検定に合格することと、大検の資格を取ろうと思っています。
●将来について
 いろんな経験をし、いろんな人と会話をして、本当に自分がやりたいことをさがしている途中です。
●現在の施設の印象
 来た頃よりは落ち着いて生活するようになって、今は不満は特にないです。
●他の在籍生との関係
 部屋が2人部屋なんですけど、そのルームメイトと良く会話します。別に1人部屋がほしいとは思いません。
●親との関係
 親との会話はまだないんですが、なんとなく両親の考え方は分かるようになったと思う。
●代表・スタッフの方との関係
 怖くて厳しくてやさしくないです(笑)。
 
▼団体詳細
団体名称●蔵王いこいの里(ザオウイコイノサト)
代表者名●岩川 松鶴(イワカワ ショウカク)
所在地●〒999−3114 山形県上山市永野字蔵王山2561−1(ナガノアザザオウヤマ)
電話番号●023−679−2214(代) FAX番号●023−673−2610
URL●無し E−MAIL●無し
設立年度●1983年 在籍生平均在籍年数●1年
入寮生数●男・・・5人 女・・・2人(平均年齢・・・19歳) 入寮定員●男・・・10人 女・・・5人
通所生数●男・・・―人 女・・・―人(平均年齢・・・―歳) 通所定員●男・・・―人 女・・・―人
年齢制限●無し 性別制限●無し 相談業務●有り(無料) 家庭訪問●無し 親の会●無し
会報発行●有り(年12回)
特記事項●親の会の代わりに年4回原則両親参加の保護者会を行っている。
スタッフ状況●日中・・・各作業にはスタッフが共に行動する。夜間・・・共同生活のため夜間にはスタッフの代表も同じ場所に宿泊している。
スタッフ●正規・・・男4人・女2人/ボランティア・・・男2人・女―人/その他・・・男1人・女―人
 
▼通所費・入寮費
通所生●―
入寮生●入会費・・・150,000円/月額負担金・・・140,000円/実習費・・・60,000円(年額)/スキー実習費・・・160,000〜250,000円(シーズン・11月ごろ)/賛助会費・・・30,000円(年額・一口)。
 
▼生活
日課スケジュール●[午前]6:15・・・起床・洗面/6:30・・・ラジオ体操・ジョギング・当番作業(動植物の世話・掃除・食事)/7:30・・・朝食・通学者は登校/9:00・・・作業・学習[午後]12:00・・・昼食/1:00・・・作業・学習・運動/3:30・・・おやつ/4:00・・・当番作業(動植物の世話・掃除・食事)/5:30・・・面接/6:00・・・夕食。以降自由時間/9:00・・・自室に戻る/10:00・・・就寝。ただし、学習希望者は0時まで学習室使用可。
週末・休日●週末は自立支援として「エコー山荘」の手伝い。エコー山荘はスキー客等のための民宿であり、様々な業務の中から在籍生の状態や希望に応じて何を任せるかを選択する。休日は水曜日となっている。
食事●食事の準備は当番制。スタッフのサポートがある。エコー山荘でのお客様に出す食事も在籍生が担当している。
清掃●自分の部屋は自分で清掃。共同で使用している場所は毎日の日課として日に二度清掃をおこなう。また清掃場所には動物の小屋や植物の小屋なども含まれる。
年間スケジュール●1月・・・正月(新年会)・書初め/2月・・・スキー検定・樹氷・霧氷観察/4月・・・スキー場ごみ拾いボランティア/5月・・・山菜狩り・畑作り/6月・・・サクランボ狩り・援農/7月・・・山歩き・七夕パーティー・天体観測・高山植物観察/8月・・・海水浴・キャンプ・野外学習/9月・・・紅葉狩り・木の実狩り/10月・・・きのこ狩り・漬物作り/11月・・・11月から3月まではスキー。
※その他にも不定期で力ラオケ大会やボーリング大会を開催する。月例誕生日会や歓送迎会もある。6月・・・第一回連続生活体験合宿/7月・・・第二回連続生活体験合宿。7月、8月は各自夏季日課を任される。







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