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自然と文化 72号

 事業名 観光資源の調査及び保護思想の普及高揚
 団体名 日本ナショナルトラスト  


四、町並み保存地区の名物
 さて、富をもたらし重厚な建物群を残した木蝋。木蝋は、ハゼノキから採れるワックスの総称であり、二次加工される原材料の名称でもある。蝋燭は、木蝋を使った加工品である。内子町には、現在その伝統的な製法を守り続けている蝋燭店が一軒のみ現存する。
 内子町における蝋燭づくりは、すべて手作りである。現在、六代目の大森太郎さんが蝋燭づくりの技術を踏襲している。
 蝋燭の芯をつくる。まず「シン」(竹串)に和紙を巻き付けて和紙を筒状にする。その和紙の上にい草の芯「トウシミ」を巻く。スポンジ状の弾力を持つもので、筒状の和紙に螺旋状に隙間無く巻き付けていく。これを固定するため、「トウシミ」の上からネットをかけるように、真綿を薄く巻き付ける。和紙とその外側に「トウシミ」、そして真綿で固定した安定した芯ができあがる。この串から抜き取って完成。この作業は、女性が担当することが多かった。
 灯芯の頭(先端)二センチくらいは、溶けた蝋液に浸しておく。これは、この芯に蝋分を塗りつけた後、最後に芯だしをするために、頭部がたやすく切れ、出やすいためである。
 芯に塗りつける蝋は、生蝋をつかう。常温で固形なので、煮とかして芯にこすりつけなければならない。
 まず炭の入った木箱に「ゴトク」を乗せ、「テツナベ」を掛ける。その鉄鍋には、中央に「スイノウ」というこし器を沈ませる。生蝋のまわりや中に含まれている不純物を取り除くためのものである。生蝋の融点はおおよそ五〇度であり、鉄鍋内の温度管理は重要である。沸騰させないよう、また固まらない温度管理で、炭加減がものをいう。溶けた蝋は、蝋鉢に移される。
 蝋燭作り職人は、まず「ロウカケグシ」にできあがった芯を差し込む。蝋鉢の中に左手を浸して溶けた蝋をすくい取る。右手側には、「マクラ」といわれる芯の挿入された「ロウカケグシ」を回転させる台を置いて、右手を伏せ「マクラ」と右手の間にある「ロウカケグシ」を回転させながら、その芯を左手の平にある蝋に浸して、付けていく。
 ある程度回転させ、蝋を付けたら、「マクラ」から「ロウカケグシ」をはなして、乾燥させ、また同じ工程を繰り返す。
 
蝋燭づくりをする大森太郎さん
 
 蝋燭の重量によって、この巻き付けていく工程を増やしたりする。最後には、融点の高い良質な生蝋をコーチィングする。
 整形が完了したところで、蝋燭の表面をなめらかにするために、炭火で室内を暖めている「台」とよばれる箱に入れて温め、さらに手でつやをだす。最後に、温めた包丁で先端の頭を出す「芯出し」の作業をする。
 蝋燭の種類は、百匁、五十匁、十匁、五匁など数種類有る。伝統的な町並み保存地区を訪れている全国からの観光客に、技術そのものを公開し、蝋燭も販売している。毎日百八十本を作ってはいるが、作る一方から売れていく状況で、在庫がない。おみやげにしたいと、注文を受け数ヶ月先まで予約でいっばいであり、町並み保存地区の名物となっている。神社仏閣の宗教行事にも引く手あまたで、一度注文を受けると次回も必ず注文が寄せられるなど、品質の高さも良く、人気の要因となっている。
 さらに、蝋燭の波及効果として、蝋燭の燭台用にと、地元の鍛冶屋さんが考案した燭台も商品化され、人気を呼んでいる。
 蝋燭は芯が太くて大きく、人の手によって作られたため、炎は大きく、時折さらに大きくもえるなど変化に富む。またすすが出にくく、長時間にわたって灯る。融点の高い蝋を蝋燭の外側に塗りつけているために、蝋燭の中央が早く溶けて陥没していき、外側に蝋が垂れてこない、という長所がある。このため、宗教行事以外の催しにも多く使われている。
 「内子座」。大正五年(一九一六)に建てられて、取り壊し寸前になっていた芝居小屋が昭和六十年(一九八五)十月に復元が完了し、こけら落としをした。内子座では地元の芝居上演はもとより、東京からの歌舞伎上演や大阪の国立文楽劇場の本格的な文楽公演も行われている。平成六年(一九九四)には全国芝居小屋会議も開催され、大森さんの作った蝋燭を灯した「ろうそく能」は、内子座定員六百五十人を超える盛況であった。
 内子町における和蝋燭の今日的評価は、木蝋生産という内子町の近代産業史をひもといたことにもある。木蝋生産の技術や流通、販売を具現した民具、あるいは木蝋の原材料ハゼノキの収穫や運搬、販売などに使われた民具、総数一四四四点は平成三年(一九九一)、国の重要有形民俗文化財となった。
 
 木蝋に関連する建物群や民具、技術など、一連の評価の中で、現存して唯一現代にその手法を変わりなく続け、生業としているのは、和燈燭だけである。ハゼノキの油脂という自然の恵みをかぎ分けた先人たちの知恵、その加工技術、さらに蝋燭という手仕事の確かさを継承していただきたいと思っている。また、内子町の和蝋燭が、末永くあまねく人々に愛されるよう願ってやまない。
 
内子座で「ろうそく能」が開らかれた時のポスター
 
 
・・・<内子町役場>







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更新日: 2022年5月21日

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