◎四、現代の樹皮利用◎
樹皮は現代も僅かだが使われている。例えば岩手県盛岡市辺りではお盆の頃になると迎え火、送り火用としてシラカバの樹皮が店先に並ぶ。曲げ物写真(81)の側板を綴るのは今もサクラの表皮だし、樹皮を組み込んだ[箕]写真(82)は今も売られている。器用な人は昔ながらの編組技法でいまふうのバッグ写真(83)や籠写真(84)を作る。秋田県角館町の樺細工写真(85)、山形県温海町や新潟県山北町の[しな織り]写真(86)はともに地場産業として発展した例である。染織家の中には[しな織り]の独特な風合いに惹かれる素材として使う人がいるし、[葛布]写真(87)を使う織物作家もいる。
写真(81)
写真(82)
写真(83)
写真(84)
写真(85)
写真(86)
写真(87)
(81)せいろ(ヤマザクラ表皮)
(82)箕(ヤマザクラ表皮)
(83)セカンドバッグ(長郷千代喜氏製作 ヤマブドウ蔓皮)
(84)買い物籠(米沢金吉氏製作 ヤマブドウ蔓皮・シナノキ内皮)
(85)たばこ入れ(ヤマザクラ表皮)
(86)しな布(シナノキ内皮)
(87)葛布製帯(福田ハレ氏製作 クズ蔓内皮)
このように現代の樹皮利用例はむかしに比べるときわめて限定された分野にしか用いられていないのは、機械的に大量生産される化学素材に押されているからであろう。そんな限られた範囲でしか使われなくなった樹皮だが、その利用のされ方には伝統的な技法が受け継がれている。ここでも弥生時代や縄文時代に遡る技法が利用されているのである。
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