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【螺旋に剥いだ素材の加工】
 
 サクラの表皮は曲げ物の綴じ皮に使われてきたことからも判るように、強靱このうえない素材として古くから多用されてきた。その樹皮は縦剥ぎにはできないものだから、長いテープ状の素材が欲しい場合は幹や枝から螺旋剥ぎの方法で取るしかなかった。写真(68)は山際の畑でダイズを播いた時に鳩が片端から掘り出しては食べるので、鳩除けのために張ったテープである。このようなサクラのテープで作った各種の入れ物も全国的に分布している。写真(69)はそんなテープを組んで作った鉈の鞘である。写真(70)は真っ直ぐなオニグルミの枝に刃物を当てて樹皮を螺旋に剥ぎ取り、側縁を重ね合わせながらメガホン状に巻き上げた吹鳴具を吹いている様子である。江戸時代後期にこれと同様のものを見た菅江真澄によればそれは子どもの遊び道具で、サワグルミ、ヤナギ、カバ、クルミ、ツキなどの樹皮で作っていたという。
 
写真(68)
 
写真(69)
 
写真(70)
 
(68)鳩除けの樹皮テープ(長内三蔵氏蔵 ヤマザクラ表皮)
(69)鉈の鞘(雫石町教育委員会蔵 ヤマザクラ表皮)
(70)ぼほのげ(佐藤基三氏 オニグルミ)







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