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[6]運搬に用いられる樹皮
 
 物を背負って運ぶのが当たり前だった時代、[荷縄]は生活必需品だった。東日本ではそれをシナノキの樹皮やヤマブドウの蔓皮で、九州方面ではヘラノキの樹皮で作った。東北地方では、山中で木を伐ったり削ったり挽いたりする仕事に従事する人々が諸道具を入れて運ぶ背負い籠や、山菜を採る人が使う背負い籠を樹皮で作った例が珍しくない。写真(25)は編んで、写真(26)は組んで作ったもので共にヤマブドウの蔓皮を使っている。クリ、トチ、ヤマナシ、ヤマブドウなどの実を採り入れる腰籠には樹皮で作ったものが多い。写真(27)は編んで、写真(28)は組んで作ったもので共にヤマブドウの蔓皮で作られている。これらに対してよそ行きの時に使われたらしいのが肩に掛けたハンドバッグ型の物入れで、写真(29)、写真(30)はヒバの内皮を組んで、写真(31)はシナノキの内皮を編んで作ったものである。
 
[7]はた織り、縫製に用いる樹皮
 
 績んだ繊維を溜める[おごけ]には曲げ物のほか樹皮製もあった写真(32)。地ばたの織り手が縦糸を張るために使った厚い樹皮製の腰板も各地に分布している。サビタ(ノリウツギ)の樹皮を煮ると糊状のものができる。それを縦糸が交差する部分に古い布切れで塗って[筬]の通りをよくすることが行われたという。そのようにして織り上がった布を自分で縫う際にフジ蔓の内皮を灰水で煮て柔らかくしたのを藍で染め、それを爪の先で裂いて縫い糸として使った人もいた。
 
[8]山仕事に用いる樹皮
 
写真(25)
 
写真(26)
 
写真(27)
 
写真(28)
 
写真(29)
 
写真(30)
 
写真(31)
 
写真(32)
 
(25)こだし(千畑町教育委員会所蔵 ヤマブドウ)
(26)こだし(仙北町教育委員会所蔵 ヤマブドウ)
(27)こだし(やすらぎの家資料館蔵 ヤマブドウ)
(28)こだし(照井定子氏蔵 シナノキ)
(29)物入れ(田中忠三郎氏蔵 ヒバ内皮)
(30)物入れ(むつ市教育委員会蔵 ヒバ内皮)
(31)物入れ(長内三蔵氏蔵 シナノキ内皮)
(32)おごけ(油谷満夫氏蔵)







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