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[3]身に着けた樹皮製品
 
 むかしの人々は被り物から履き物まで身に着けるものすべてを樹皮で作ることができたと言っても過言ではない。岩手県内の山間部で仕事をした人の中には幅広く取ったシラカバの樹皮で作った笠が軽くて涼しかったことを記憶に留めている人がいる。衣料にする布地を織るのにアイヌ民族がオヒョウの樹皮を利用したことは有名だが、本州各地ではシナノキの樹皮やフジ、クズの蔓皮その他が利用されたようである。野外の作業には雨具兼防寒用としてウリハダカエデやシナノキの樹皮で素朴に作った[蓑]を着た写真(14)。霧の深い朝や朝露の降りた山道に入る際などに衣服が濡れるのを少しでも防ごうとして着けたのがシナノキの樹皮で作った[前けら]である写真(15)。同様に腰まわりを保護したのが[腰蓑]でシナノキの樹皮で作った写真(16)。山中で仕事をする際に脛を保護するためになくてはならない[はばき]をヤマブドウの蔓皮やウリハダカエデの樹皮で作ることがあった写真(17)。奥深い山里に住んで藁を買うことが難しかった人の中には履き物をシナノキやヤマヤナギその他の樹皮で作ることがあった写真(18)、(19)。川の流れを利用して丸太を搬送した人々は水濡れに強いヤマブドウの蔓皮で作った[わらじ]を履いた写真(20)。器用な人は自分の[煙草入れ]をヤマザクラの樹皮で作った写真(21)
 
写真(17)
 
写真(18)
 
写真(19)
 
写真(20)
 
写真(21)
 
(17)はばき(やすらぎの家資科館蔵 ヤマブドウ)
(18)すんべ(シナノキ内皮)
(19)木の皮せった(青森市稽古館蔵 ウリハダカエデ)
(20)わらじ(ヤマブドウ内皮)
(21)煙草入れ(岩手県立博物館蔵 ヤマザクラ)







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