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◎ダフール族の樺樹皮文飾と墨絵輪郭描法◎
連続L形文と半円形文の樺樹皮の盒
 
花形と幾何文の樺樹皮の盒
 
山水文の樺樹皮の盒
 
墨絵で輪郭を描いた花鳥文
 装飾文様は満・漢二族の文化の影響を深く受けており、吉祥の喜鵲花文を装飾とする。
 墨絵輪郭画法はダフール族特有の装飾技法で、比較的新しく生まれた。筆と墨が満族から伝わって後のことであろう。墨絵輪郭画法は樺樹皮器物に、直接墨筆で各種の図案を線で輪郭を描き、墨が乾いた後、さらに上に桐油を薄くひと塗りして、墨の色を落ちにくくする。墨絵で輪郭を描く図案は、動物、植物、山水や、満・漢の吉祥文字、人物故事などである。
 
「団結」の字形を描いた樺樹皮の盒
 
◎漢聲雑誌51号よリ転載
写真提供−顧徳清+李建新+賽林
 
(註)漢語で「撮羅子」とよぶテント式の円錐形住居は、エベンキ語では「シーロンツュー」、オロチョン語では「シェンレンツュー」「ツュールンアンガー」、ホジェン〈漢字は「赫哲」をあてる。ロシア領内では「ナーナイ」と呼ぶ〉語では「ツュールオアンコウ」とよぶ。「ツュー」は家の意味で、「とんがり屋根の家」「木の幹の家」を意味する。以下はオロチョン族の例である。三〇本前後の長さ五〜六メートルの樺や柳の木の幹を骨組とする。まず六〜七本を頂端でたがいにかみ合わせて、約七〇度の傾斜角度の円錐形とする。残りの木の幹は、この六〜七本の木の幹の間に架ける。これが「木の幹の家」の骨組である。
 骨組を覆うものは季節によって異なる。冬はノロジカの皮で縫った三枚の扇形の囲いで覆い、二枚の大きな囲いは両側、小さな一枚は後面を囲う。一張りに五〇〜六〇枚のなめしたノロジカの皮がいる。覆うときは囲いに縫いつけたひもを木の幹に結びつける。皮の張りを保つために、囲いの上にアシないし草で編んだすだれで囲うものもあり、こうすると皮の囲いは数年使える。また草を用いてすだれを編んで囲いとし、骨組を覆うものもある。項部には煙を通したり採光のためのすき間がある。出入り口は一般に南ないし東南にとり、ノロジカの皮を掛けて門簾とする。春になって、移し運ぶ必要のないときには、皮の囲いを取り外し、樺樹皮で囲いとする。樺樹皮の囲いをつくるには、まず樺樹皮を少し蒸して、しなやかで強くした後に、一平方メートルの樺樹皮六〜七枚を馬の尾ないしシカやヘラジカの筋でつくった糸で縫い合わせ、さらにその上に薄い樺樹皮を取りつけ、合計十数枚のこうした囲いをつくる。覆うときには一枚に一枚をかぶせ合わせ、四隅に縫いつけた皮のひもで、木の幹に周定する。夏は風通しのために、周囲の囲いは地面につけず、三〇センチほどの高さのすき間を残す。春菊ないし柳の枝で編んだ門簾に替える。夏は一般に冬に使った骨組を用いず、地勢が高いところに移動し、風通しのよい場所に新しく建てる。
 内部の設備は比較的簡単で、中心は住人の席(奥路(アオルー)とよぶ。寝床でもある)である。席をいくつ設けるかは家族の人口によってきまり、人口が少なければ、門に正対するところと左側に二ヵ所を設ける。子供が成長し結婚して人口が増えると、さらに右側に席を設け、息子とその嫁は左側の席、老夫婦は右側の席につく。門に正対する席を「瑪路(マールー)」とよび、神を祭る場所であり、男性の客人や男性の主人だけが座ったり横になることができ、配偶者を失った老夫は「マールー」の席につくことができ、老婦ならば右側につく。もう一人の息子が結婚すると、もう一張りの「シェンレンツュー」を設けて分居する。(以上、韓有峰編著「鄂倫春族風俗志」『民俗文庫』14 中央民族学院出版社 一九九一年刊)







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