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◎エベンキ族の幾何文◎
 樺樹皮器物の装飾文様には、幾何文がおそらくもっとも数が多いであろう。幾何文は簡略ではあるが、狩猟民族は、陰刻や陽刻などの変化技法や色配りで、器物上の幾何装飾文様を十分に生き生きと変化に富んでみせる。狩猟民族のなかでは、オロチョン族の幾何装飾文様がもっとも多く、約三十余種ある。オロチョン族が装飾芸術の基本法則をつかむことに相当に熟練し、技法も熟達していることを示している。
 
【直線文】
 
直接交叉文
 交叉する直線で菱形の装飾文様を構成する。
直線交叉文の樺樹皮のバッグ[上と下]
 
連続直線文
 上は直線で長方形と三角形を構成し、下は多くは一本の直線を加えたり、または交叉文を構成する。
直線文の樺樹皮のたばこ入れ
 
十字文と鹿角文
 樺樹皮の袋にある十字文の両端は横に鹿角文を置く。十字文はおそらくエベンキ族が西方のギリシャ正教の十字架の影響を受けたものであろう。
 
エベンキ族が居住するテント、漢語で「撮羅子」(註)、エベンキ語で「希楞柱(シーロンツュー)」。これも樺樹皮でおおって防寒・防水とし、携帯に便利であり、たえず移動しながら狩猟生活をするのに適する。
 
円周式直線交叉文
 中央から直線で外へ向かう交叉
円周式直線交叉文の樺樹皮の器蓋
 
【山字文】
達続山字文と変形山字文の樺樹皮の盒
 
【円形文】
十字文と半円形鋸歯文の樺樹皮盒
 
十字文と半円形鋸歯文
 この樺樹皮の盒は、器蓋が十字文で中心をなし、周囲は半円形の歯形文をなす。器体は連続・重畳する鋸歯文をなす。
連続円形文の樺樹皮の盒
 
【咬合文】
 
 樺樹皮の器体にはしばしば樹皮の両端が等分する継ぎ目の線が残り、狩猟民族はさまざまな形の鋸歯形文で装飾し、縦向きの特殊な幾何形咬合文の帯をつくる。
いずれも咬合文の樺樹皮のたばこ入れ







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