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◆関東
茨城県
 
(1)野原 一男
●条件付で造船できる。(助っ人がいる)
年齢:昭和8年生まれ
経歴: 中学3年の頃、船大工だった父の四郎(二代目)は「見て覚えろ」といって教えてくれなかったが、祖父の乙次郎について、5年間働き1年間奉公働きをした。30歳で独立し現在に至る。父親は9人兄弟で、3人が船大工だった。帆曳き網船を造りつづけたが、多い年には年に5隻も造り寝る暇も無かった。1隻150人工でやった。
船種: 帆曳き網船(霞ケ浦の底曳き漁。ワカサギ、エビをとる。・シキ長5〜6間(1間は6尺)全長は5間の船で6間、幅1間より広め・帆(帆柱は3丈)
☆帆に受けた風を力に、船を真横に滑らせて網を曳く。船体には走航と異なる力がかかるため「マツラ」(肋骨)のほか「ジマツラ」を入れて補強している。
材料: スギ・下総の杉が油があって最高。佐原で仕入れた。
釘・地元の鍛冶屋
直近造船:27、8年前に帆曳き網船を、昭和60年に木造のトロール船を造った。この船は自分で今も使っている。
調査者:石原 義剛
 
千葉県
 
(1)小嶋 正夫
●造船はできない
年齢:大正12年生まれ
経歴: 親の代まで自営の船大工だった。小嶋は4代目。昭和12、3年頃15歳で銚子の長塚造船の親方長塚仙之助に弟子入り、6年。礼奉公1年修業した。その後、横須賀の海軍工場で2年弱「内火艇」を造った。あといろいろなところで働いたが、最も長かったのは茨城県波崎町の平金造船で、65歳まで15年間いた。ただしFRP船だった。木造は昭和35、6年頃まで。木造経験は25年、全部で50年。
船種: アグリ船(アグリ網・長10m×幅2.8m20トン・無水焼玉25馬力)
テンマ船(アグリ網のアバを見回る・長3m幅1m・1丁櫓)
小型漁船(タコ釣り、白魚漁・長10m幅1.5〜2.1m・電気着火(チャカ)または4丁櫓)
材料: 船材は佐原、多古などの山から。山師に依頼。
釘は地元で入手。和船の場合、関西の釘はきかない。
備考:旭市の土屋惣市の従兄にあたる。
調査者:松田 睦彦
 
(2)土屋 惣市
●造船は条件付でできる。
道具、材料、助手あれば。
年齢:昭和7年生まれ
経歴: 昭和22年頃15歳で木更津の石橋造船所の親方に弟子入り。6年間修業した。60歳まで45年間やった。木造は遠藤造船で昭和35、6年が最後。
仕事歴 ・銚子 川柴造船所 5〜6年 木造
  ・波崎 平金造船所 5〜6年 木造
  ・旭 遠藤造船所 4〜5年 木造
  ・千葉 三井造船所 5〜6年 鉄船
  ・清水 三保造船所 5〜6年 鉄船
☆FRPの経験は無し。上の3造船所は7〜8人規模
船種: 地曳船(地曳網・長30〜40尺幅6〜8尺、・7丁櫓)
アグリ船(アグリ網1隻巻・長50尺、幅10尺、8〜9トン・櫓→戦後は焼玉→ディーゼル)
(アグリ網2隻巻・40〜150トン)
材料: 杉、樫、ケヤキ・遠藤造船では近隣の山で探した。他の造船所では材木屋に任せた。
釘・地元の鍛冶屋の作ったものを買った。関西からは仕入れなかった。
マキハダ・地元の金物屋
調査者:松田 睦彦
 
(3)遠藤 喜八
●造船はできない
年齢:明治45年生まれ
経歴: 昭和の始め頃15、6歳で父親・藤次に教えられた。以降、昭和30年代まで35年くらいやった。
船種: 地曳船 7丁櫓
アグリ船 7〜10丁櫓
材料: 杉等・香取郡方面から入手、自ら木を探して歩いた。製材も自分でする。
釘・地元や銚子の鍛冶屋
備考:遠藤 隆治の父。高齢のため聞き取り困難
調査者:松田 睦彦
 
(4)遠藤 隆治
●造船は条件付でできる。釘などあれば。
年齢:昭和18年生まれ
経歴: 昭和33年15、6歳で父親・喜八(明治45年)に習った。その後、兄と共同で造船所をやった。兄は今は亡い。25年やって40歳で船大工を廃業した。FRP船は匂いがきつい上、船を造る楽しみが無い。旭市足川の船大工・岩井正雄家が遠藤家の本家。
船種: アグリ船(アグリ網・長20m以上幅3.6m・焼玉→ディーゼル)
貝巻漁船(赤貝、ハマグリ等の巻網・長15m、幅2.6m・焼玉→ディーゼル)
材料: スギ、カシ、シイ、ケヤキ・山倉、柴山等を自分で歩き、木を探す。山だし、製材は山師に依頼。釘・地元の鍛冶屋。後に尾道から取り寄せたが、千葉の木は堅く、地元の釘より良くはなかった。
 
調査者:松田 睦彦
 
(5)多田一二男
●造船できる。現在も木造をやっている。
年齢:昭和9年生まれ
経歴:; 昭和24年頃15歳で父親・政雄(明治末生まれ)に習った。以降、53年の経験。船大工の4代目。
船種: 農船(サッパ船、稲等を運ぶ。現在は観光船・長8.6m、幅1.6m・竿、現在は船外機)
釣船(フナ釣り等・長4.6〜6m、幅1.5m・竿、船外機、オールが多い)
漁船(投網、張り網・長6m、幅1.6m)
材料: 杉、ケヤキ・佐原市内の山へ自分で見に行く。山師にも頼む。釘は昨年までは地元から入手、今年から新潟。
マキハダは地元の金物屋に売っている。
 
調査者:松田 睦彦
 
(6)椎木 佐一
●造船できる
年齢:昭和6年生まれ
経歴: 昭和20年頃14、5歳で叔父・椎木利雄(大正10年生まれ)に弟子入りし5年働き1年礼奉公した。経験は約57年。従兄の椎木崇利と一緒に仕事をしてきた。
船種: アグリ船(アグリ網・長13m、幅4m15トン・焼玉50馬力)
漁船(長8m、幅2〜3m、2トン・ディーゼル30馬力)
テンマ船(小/長4.8m、幅1m・櫓)(大/長5.2m、幅1.5m・船外機)
もぐり船(港湾工事用、ウインチ付き、石などを引き上げる・長12、3m、幅2.4m・ディーゼル)
材料: 船材は大多喜の山などから入手した。東京練馬の問屋で埼玉県の木を買うことも。釘は大原、御宿のものを使っていたが、後は尾道や呉のものを使うようになった。
直近造船:昭和46年頃
調査者:松田 睦彦
 
(7)椎木 崇利
●造船できる。
年齢:昭和22年生まれ
経歴: 昭和37年15歳で父親・利雄(大正10年生まれ)に習った。5年間。椎木造船所は父親・利雄の兄がはじめ、職人は大原、勝浦、天津などが多かった。椎木佐一は従兄で、一緒に仕事をしてきた。木造船の最後は昭和46年頃、もぐり船を造った。
船種:(7)に同じ
材料:(7)に同じ
調査者:松田 睦彦
 
(8)川名 栄治
●造船はテンマならできる
年齢:大正10年生まれ
経歴: 昭和12、3年に15、6歳で父親・安次郎(明治17年生まれ)に約5年間習った。これまでFRPも含めて62年間の経験。
木造は昭和33〜35年頃まで。
船種: アグリ船(アグリ網用テンマ船・焼玉)
サンマ船(長18〜19m、幅4.5〜5m・焼玉無水)
サバ・イカ船(長10m、幅2.5m、3〜5トン・ディーゼル)
材料: 船材は四本木、清澄山等で自分で見て選ぶ。伐採、製材は人夫を雇う。
釘はもと地元の山口鉄工所で造っていたが、後は尾道から取り寄せた。
調査者:松田 睦彦
 
(9)森 久男
●条件付で造船できる。体力が心配なので。
年齢:昭和13年生まれ
経歴: 昭和29年15、6歳で、主として父親から習った。他所の造船場で他人の仕事を見ることも重要だった。森造船所は久男で12代目。
造船場は自宅の横にあったが、昭和40年代前半に勝浦でFRP専門の工場を開いた。
平成元年まで稼働していた。
木造船は昭和42、3年が最後。
船種: 小型漁船(親子乗り、夜サバ、アジ、キンメ、イカ等の釣り・長11.5m、幅2.6m・動力付き)
一丁漕ぎ(エビ網、海女船、小アジ、小ムツ釣り・長4m、幅1.2m・櫓漕ぎ)
材料: 船材は勝浦にあった竹下材木店から購入。勝浦や大多喜の山を買うと一山で3〜5隻の船ができた。
釘やボルトは尾道の業者から買っていた。
調査者:松田 睦彦







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