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個人タクシー事業におけるグリーン経営推進マニュアル
◎この「個人タクシー事業におけるグリーン経営推進マニュアル」は、グリーン経営の実施について詳しい内容を知りたい方のために、グリーン経営の具体的な進め方を解説したものです。
 
 
平成15年3月
交通エコロジー・モビリティ財団
 
はじめに
 ハイヤー・タクシー事業は、国民の足として日常生活を維持する上で必要不可欠な存在ですが、一方、自動車の走行に伴う大都市や幹線道路周辺における大気汚染や騒音の問題は依然深刻な状態が続いています。
 また、地球温暖化の原因物質である二酸化炭素(CO2)の運輸部門からの排出量(2000年度)は、わが国のCO2排出量の20.72%を占め、年々増加しています。このうち、タクシーの割合は運輸部門のCO2排出量の1.5%を占めています。
 温室効果ガスの排出削減については、我が国は平成14年6月に京都議定書を批准しました。また、これに先立って平成14年3月には、内閣総理大臣を本部長とする地球温暖化対策推進本部において「地球温暖化対策推進大綱」が決定され、この大綱では運送事業者のグリーン経営が温暖化対策のひとつとして位置づけられました。今後、温室効果ガスの排出削減に向けた動きが具体化されることが予想されます。
 環境保全活動の継続的な改善を進めるための手法としてはISO 14001(環境マネジメントシステムに関する国際規格)がありますが、個人タクシー事業者がこれを取得するのは現実的ではありません。
 そこで、交通エコロジー・モビリティ財団では、(社)全国個人タクシー協会のご協力を得ながら、個人タクシー事業者の自主的な環境改善への取組を支援・推進するため、環境負荷の少ない事業運営(グリーン経営)を進めるためのマニュアルを作成しました。
 同財団では、平成12年度より、運送事業における環境問題への取組を一層促進することを目的に、事業者の実態に合い、かつ簡易に取り組めるツールの提供を目指し、「環境負荷の小さい事業運営(グリーン経営)推進のためのマニュアル」の作成とその普及方策の検討を行っており、平成13年度にはトラック運送事業者向けに「トラック運送事業におけるグリーン経営推進マニュアル」を作成し、今年度はこれに引き続き旅客自動車運送事業者(バス、法人ハイヤー・タクシー、個人タクシー)向けにマニュアルを作成したものです。
 このマニュアルは、ISO14031(環境パフォーマンス評価に関する国際規格)の考え方に基づき、取組むべき環境保全項目の各々について、その具体的取組内容を明らかにするとともに、目標の設定と評価が容易にでき、これを通じて経営のグリーン化が進められるようになっています。
 個人タクシー事業者のみなさんが、このマニュアルを活用してグリーン経営を積極的に進められることを期待します。
 
第1章 グリーン経営とその必要性
 事業活動は基本的には営利活動であり、事業者は事業を進めるにあたってコストを削減し、利益をあげることが要求されています。一方、環境問題が深刻になるにつれて、事業者は営利性の追求と同時に、環境保全を事業者の社会的責任としてとらえ、事業活動における環境負荷の削減を図っていくことが不可欠となってきました。これは法人事業者だけでなく個人事業者においても同様です。また、とくに自動車の走行については、大都市や幹線道路周辺における大気汚染や騒音の問題やエネルギー消費に伴う地球温暖化の原因となるCO2の排出など環境への負荷が大きく、環境配慮が社会からの要請となっています。このマニュアルでは、事業活動のなかに環境保全への配慮を組み入れ、営利性の追求と環境配慮の両立を図っていくことを「経営のグリーン化」と呼んでいます。
 したがって、グリーン経営とは自主的・計画的に環境対策を進めながら、経営面でも向上を図っていく経営をいいます。具体的には、燃費向上によってコストの削減を図ることができる「エコドライブの推進」や「低公害車の導入」等は、グリーン経営を推進する代表的な取組といえます。個人タクシー事業者にとっても、事業活動を進めるうえでこうしたグリーン経営の考え方は不可欠です。
 
 このマニュアルは、個人タクシー事業者のみなさんが自主的・計画的な環境対策をもとに、グリーン経営を進めるための手法を示したものです。
 グリーン経営では、自主的な目標の下での取組、結果の点検・評価、見直しというサイクルで進めることが基本になります。このマニュアルはそうした仕組みを前提に、個人タクシー事業者でも取り組みやすいよう、環境保全への具体的な取組を簡易なチェックリストで把握し、それをもとにグリーン経営を進めようとするものです。グリーン経営の実効性を高めるために、このチェックリストをご活用ください。
 
第2章 グリーン経営の進め方
 グリーン経営を進めるためには、「自らの環境保全活動の取組状況の把握」→「(評価結果に基づく)今後の改善へ向けた取組の検討」→「取組の推進」→「取組状況の把握と見直し」というサイクルによって、様々な環境保全活動の継続的な向上を目指すことが必要です。
 このマニュアルでは、個人タクシー事業者の実態に合い、かつ、容易に環境保全活動が行えるよう、環境保全への具体的な取組を「グリーン経営推進チェックリスト」(以下、チェックリスト)で把握・評価し、それをもとにグリーン経営を進めることができるような仕組みを示しています。
 
「グリーン経営推進チェックリスト」を活用したグリーン経営の推進フロー
(拡大画面:56KB)
 
■「グリーン経営推進チェックリスト」の使い方
 チェックリストは、左に「チェック項目」、右に「改善取組項目」、下に「まとめ」という構成になっています。
 
(1)左の「チェック項目」の欄に直接チェックをつける
 「チェック項目」には、個人タクシー事業者のみなさんにぜひとも取り組んでいただきたい環境保全活動を示しています。自らが実施している取組にチェック()をつけます。
 
(2)右の「改善取組項目」の欄を記入する
 チェックが終わりましたら、チェック結果をもとに、今後取組をどのように改善していくかについて、「何を」「いつまでに」「どうやって実現するか」を検討し、右の「改善取組項目」の欄に記入します。
 
(3)下の「まとめ」の欄を記入する
 最後に、チェック結果以外の取組も含めて、今後の環境負荷低減への取組についての自己宣言(私は・・・する)を下の「まとめ」の欄に記入します。まとめには以下のような内容をご記入ください。
○今後の環境負荷低減への取組について最も重要視すること
○具体的な取組方針
○チェック項目以外での取組内容
 
 チェックリストには、グリーン経営を進めるうえでの重要な取組をあげています。
 バスや法人ハイヤー・タクシーといった法人向けのチェックリストでは、取組の内容に応じてレベル設定(レベル1〜レベル3)を行っていますが、この個人タクシー事業者向けのチェックリストではレベル設定を行っていません。したがって、チェック項目における取組内容のレベルは様々です。
 また、取組内容でも、すぐに実施できること、状況が整わないと実施できないことなどがあります。例えば、「次の点に注意してエコドライブを実施している」については心がけ次第ですぐに実行に移せますが、低公害車やアイドリングストップ装置の導入については、車種の選定や予算の確保について十分な検討が必要です。
 次にいつチェックリストの記入を行うかを決めた上で(半年後など)、それまでの間にそれぞれの取組に関してどのように実現していくのかについて、「何を」「いつまでに(×月までに))」「どうやって」実現するかを明確にします。
 
 チェックリストのそれぞれの欄をすべて記入することにより、「グリーン経営推進チェックリストを活用したグリーン経営の推進フロー」(3頁)の「1. 自らの環境保全活動の取組状況の把握」および「2. 今後の改善へ向けた取組の検討」を実施することになります。
 この後は、「改善取組項目」に記入した改善取組の内容に従って、具体的な取組を実施します(「3. 取組の推進」)。自ら期間を決め、再びチェックリストの記入を行い、フローの最初に戻ります。
 このようにして、「自らの環境保全活動の取組状況の把握」→「(評価結果に基づく)今後の改善へ向けた取組の検討」→「取組の推進」→「取組状況の把握と見直し」というサイクルをまわしていきます。
 
「グリーン経営推進チェックリスト」における評価項目の体系
 個人タクシー事業者のみなさんがグリーン経営を進めるために取り組むべき活動には様々なものがあります。このチェックリストでは、すべての事業者にぜひとも取り組んでいただきたい項目として次の6項目を取り上げました。
 「1. 環境保全のための仕組みの整備」の項目は、まず、環境保全活動に取り組むことを自ら表明し、環境に関わる事項についての情報を収集・習得することが必要であるとの観点から取り上げました。
 「2. エコドライブの実施」と「4. 自動車の点検・整備」は、今、運輸業界に期待されているCO2や自動車排出ガスの削減対策を進めるうえで効果的であり、かつ、不可欠な取組です。また、経営と環境対策の両立を図るという観点からも重要な取組です。
 「3. 低公害車の導入」は、CO2や大気汚染物質の排出削減などについて、大きな環境改善効果が得られます。国土交通省、環境省、経済産業省が定めた「低公害車開発普及アクションプラン」の趣旨を踏まえ、運輸業界でも率先して取り組むことが必要な項目として取り上げました。
 「5. 廃棄物の適正処理およびリサイクルの推進」は、車両の使用に伴う環境保全対策だけでなく、廃車等に際しての二次公害の防止も運輸業にとって重要な取組として取り上げたものです。
 無線配車の導入による「6. 空車走行距離の削減」は、乗客の要望に迅速に対応し、かつ環境負荷の低減につながる取組であり、経営と環境対策の両立を図るという観点からも重要な取組として取り上げています。
 
評価項目
大項目 小項目(具体的取組内容)
1. 環境保全のための仕組みの整備 環境保全への取組についての意思表明と利用者への周知
環境関連情報の収集・習得
2. エコドライブの実施 燃費に関する定量的な目標の設定
エコドライブ関連情報の収集・習得およびエコドライブの実施
推進手段等の整備
3. 低公害車の導入 低公害車等の導入
4. 自動車の点検・整備 環境に配慮した点検・整備の実施
車両の状態に基づく適切な点検・整備
5. 廃棄物の適正処理
およびリサイクルの推進
廃棄物の適正な管理
6. 空車走行距離の削減 空車走行距離の削減







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