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表2−1 評価項目の体系およびチェックリストとして取り上げた理由とトラックとの相違点
評価項目 チェックリストとして取り上げた理由とトラックとの相違点
大項目 小項目
1. 環境保全のための仕組み・体制の整備 ○環境方針

○推進体制

○従業員に対する環境教育
 企業等のヒアリング結果からは、環境保全全体の取組についての体制を整備している例は少なく、各社の取組は十分とはいえないが、企業が環境保全の取組を一体となって進めるためには、まず、環境に関する方針を明確に示したうえで、責任者を決め、従業員教育を進めるなどの計画的な取組が必要であるので、小項目はトラックと同様の項目とした。
 具体的取組内容については、以下の事項を追加した。

(従業員に対する環境教育)
・バス事業では「従業員からの標語や提言を募集し、事業者からの教育の実施だけではなく、従業員と一体となった取組を進めている事業者もある」との委員からの指摘を受け、従業員からの標語や提言の募集に関する取組を追加した。
2. エコドライブの実施 ○燃費に関する定量的な目標の設定等

○エコドライブのための実施体制

○アイドリングストップの励行

○推進手段等の整備
 ヒアリング結果では、各社とも重要な取組として位置づけ、様々な取組が進められている。エコドライブは、燃費の向上やNOx・PMの排出削減、安全管理や事故防止という面でも効果のある取組である。運輸業界で緊急の課題となっている燃費の向上、自動車排出ガス対策などを通じて、環境と経営の両立を図るうえで基本となる取組であるので、小項目はトラックの場合と同様の項目とした。
 具体的取組内容については、以下のように変更・追加を行った。

(燃費に関する定量的な目標の設定)
・トラックの場合は、燃費および燃料使用量の両項目についての目標の設定を想定したが、バスの場合は燃費管理が通常であるので、小項目の「燃費等」を「燃費」に改め、合わせて燃料使用量による目標設定欄を削除した。
・走行距離および燃費の使用状況、定量的目標の記入表の車種区分をバスの車両に合わせて変更した。

(エコドライブのための実施体制)
・エコドライブに関する基礎的知識に関する教育・指導の内容は、NOx・PM法の自動車管理計画書作成のための「事業者の判断基準」を参考に、バス事業における取組実態に合わせて作成した。
・実技講習会等への参加(レベル2)の割合をバス事業における実施状況に合わせ、トラックの場合の5割以上から2割以上へ変更した。
・バス事業では、トラックに比較し車両担当制を実施している例が少ないため、燃費管理の結果に基づく指導、表彰をグループ別で行う場合も追加した。

(アイドリングストップの励行)
・バス事業においては、エコドライブを実施するに際して利用客の理解を得ることが重要であるので、ステッカー等の掲示や車内放送の実施などの利用者の理解を得るための取組を追加した。

(推進手段等の整備)
 バス事業における取組実態を勘案し、取組内容の一部を変更した。
・エコドライブを着実に実施するためには、エコドライブの重要性や取組姿勢についての手引を作成・配布し、ドライバーを教育・指導していくことが重要であるが、バス業界では手引を作成していないため、まず、ステッカー・ポスター等の車内掲示によるドライバーへの指導を取組項目とした。
・次いで、一部の事業者では独自に手引の作成している例があるので、より積極的な取組として、手引の作成とそれを用いた教育・指導に関する取組を追加した。
・トラックで例示した推進装置のうち、バス業界では導入実績がほとんどないデジタルタコグラフを除外し、導入実績のあるエンジン回転数警報装置付きタコグラフを追加した。
・流量計を利用したエコドライブの取組の例も見られたが、実施しているのが大規模事業者のみなので対象としなかった。
3. 低公害車の導入 ○低公害車等:導入目標の設定と取組

○最新規制適合ディーゼル車:導入目標の設定と取組

○燃料の管理

○条例に定める運行規制対象車数の把握
 低公害車やディーゼル車の最新規制適合車の導入は、CO2や大気汚染物質の排出削減などについて大きな環境改善効果が得られる。このため国土交通省、環境省、経済産業省における「低公害車開発普及アクションプラン」での取組、今後の排出ガスに関する規制動向を考慮し、バス業界でも率先して取り組むことが必要な項目とした。小項目はトラックにおける項目に加えて、低硫黄軽油や不正軽油に関する教育・指導の実施等についての「燃費の管理」を追加した。
 具体的な取組内容は、バス事業の実態を踏まえ以下のように変更した。

(低公害車等:導入目標の設定と取組)
・バス事業で対象とする低公害車等は以下のとおりとした。
 ・低燃費かつ低排出ガス自動車 ・・・燃費基準(トップランナー基準)達成車および低排出ガス認定車
 ・ハイブリッド自動車
 ・天然ガス自動車
 ・メタノール自動車
 ・電気自動車
 ・低排出ガス認定車(LPG車) ・・・国の低排出ガス認定車、および七都県市指定低公害車、京阪神六府県市指定低排出ガス車、山梨県指定低公害車、札幌市指定低公害車等の地方公共団体で定める低公害車
 ・ディーゼル自動車から代替したガソリン車およびLPG自動車
 ・アイドリングストップ装置付きバス
 ・DPF装着バス

・低公害車には、業界においてアイドリングストップ装置付きバスやDPFの導入が進められつつあること、(社)日本バス協会の「地球温暖化防止ボランタリープラン」では、両者とも低公害バスとして位置づけられていることなどを考慮し、トラックの場合と異なり、アイドリングストップ装置付きバスやDPF装置付きバスについても低公害車と位置づけた。
・国や地方公共団体で低排出ガス車として認定されているLPG車も低公害車とした。これは、Nox・PM法での「自動車使用管理計画書」で、低公害車として位置づけられており、また、地方公共団体での助成対象となっているためである。
・地方公共団体独自のDPF装置バスの導入計画や導入実績については「低公害車等の導入」に含まれることとなるので、条例に関連する取組は「条例に基づく運行規制対象車種の把握」のみとした。

(燃料の管理)
・排ガス対策として進められてきた低硫黄軽油の供給が開始されたことから、その使用上の注意事項を従業員に教育・指導することが必要であること、不正軽油の使用についての規制が強化されたこと等を踏まえ、燃料の管理に関する従業員への教育指導を取組内容とした。
4. 自動車の点検・整備 ○点検・整備のための実施体制

○車両の状態に基づく適切な点検・整備

○法定点検に加えて環境に配慮した独自の基準による点検・整備の実施
 トラック業界においては、整備管理者の設置基準に満たない事業者が多いこと、整備は委託が多く、法定点検の実施率が低いなどの特徴があり、評価項目の内容もその実態に即したものとしたが、バス事業においては、法定点検の実施率が高く、また、1ヶ月点検の実施や独自の点検整備基準による点検整備など独自の取組が行われている。このため、小項目は、車両の使用状況等を見ながら適切な時期に、適切な点検・整備を進める体制を構築することを念頭において、ドライバーや整備員に対する教育や情報の提供を内容とする「点検・整備のための実施体制」、日常の運行における車両の異常に対応した「車両の状態に基づく適切な点検・整備」および「法定点検に加えて環境に配慮した独自の基準による点検・整備の実施」とした。
 具体的な取組内容については、バス事業とトラック事業の点検・整備等の相違を踏まえ、トラックの内容を大幅に変更するとともに、取組を追加した。

(点検・整備のための実施体制)
 トラックの場合は、事業の許可基準や整備管理者の設置義務未満の保有台数(4台以下)の事業者が多く、また、法定点検の実施率も低いという実態をふまえ、責任者の任命、実施計画に基づく実施と結果の把握・記録、点検・整備体制の見直しなど体制の整備自体を取組の対象とした。これに対し、バス業界の場合は法定点検の実施率が高く、点検・整備も自社工場で行っている場合が多いこと、整備管理者に加え、整備員も設置されているなど体制が整備されている。このためドライバー、整備員の役割に応じた情報提供、教育の実施を取組内容とした。

・ドライバーに対する教育項目は、日常業務の中で車両の異常を判断し、的確に整備員や整備管理者に伝達するに必要な事項とした。
・整備員に対しては、環境面に着目した点検整備に関する教育の実施を取組項目とし、(社)東京乗用旅客自動車協会資料を参考に、環境面からの具体的な事項を例示した。

(車両の状態に基づく適切な点検・整備)
 トラックの場合には、整備事業者への委託が多いことから、整備事業者への情報提供など密接な連携を進めるための取組を対象としたが、バス事業者の場合には、自社での整備が多いことから、整備事業者に委託することに限定せず、広く車両の使用状況等を見ながら迅速な点検・整備を実施するための項目とした。
・環境への負荷の増加原因となる恐れがあり、迅速な対応が必要と考えられる現象を整理し、LPG車の臭気の悪化(燃料の異常燃焼)、燃費の悪化(原動機や走行装置の異状による燃料消費量やCO2の増加)、エアコンの効果の低下(エアコンガスの漏洩)、異常音の発生を追加し、具体的に例示した。

(法定点検に加えて環境に配慮した独自の基準による点検・整備の実施)
・トラック事業においては、法定点検に加えて厳しい使われ方等も考慮したとしていたが、内容がわかりづらいとの委員の意見を受け、「環境に配慮した」と表現を変更した。
・3ヶ月ごとの法定点検に加えて、より短い期間で、独自に点検項目を定め、自主的に点検を実施している例が多く、環境面からも効果があると考えられるので積極的な取組項目とした。
・自社の点検整備記録や事故・故障記録、収集した他社の故障情報をもとに車種や使用条件の違いを考慮した独自の整備基準を作成し、自主的に点検・整備を行っている例があるので、先進的な取組として設定した。
・粒子状物質減少装置について、的確な点検・整備を実施しないと機能が十分に発揮されないこともあり、重要な取組み項目のため追加した。
・トラックと違い、乗客向け車内冷暖房関係機関(エアコンフィルタ・エア漏れ)の点検整備は重要であるので、追加した。
・それ以外の環境保全面から自主的な点検整備が必要と考えられる対象個所等については、基本的にトラックの場合と同様とした。
・環境に配慮した独自の点検・整備基準を設定している場合が多く見られるので、具体的例示項目以外の独自の基準を記入できる項目を追加した。
5. 廃棄物の適正処理
およびリサイクルの推進
○廃棄物の適正処理  車両の走行に伴う環境保全対策だけでなく、廃車や整備時の二次公害の防止や、資源の有効活用等もバス運送事業者にとって重要な取組である。廃車にともなう主な廃棄物であるフロン、エアバック、シュレッダーダストは自動車リサイクル法の対象となるため、ここでは、整備等に伴って生じる廃油、廃タイヤ、廃バッテリーの適正処理とリサイクルを評価項目とした。
  「処理やリサイクルを適切に実施している業者に委託している」という項目が、具体的にどうするかわかりにくいという指摘があったため、記入の手引きに「購入、整備を委託している事業者に廃棄物処理を依頼すること」と明確にした。
A. バスの利用促進 ○乗りやすさ、使いやすさを考慮したサービスの提供

○効率的な運行ルートの設定
 バスの乗車率向上のための取組や効率的な運行ルートの設定等を進めバスの利用促進を図ることは、結果的に自家用車からの利用客のシフト、全体としての自動車走行距離の削減に資するものであり、環境保全への取組と位置づけられる。
 しかし、これらの取組は、事業規模、地域特性によって多岐にわたり、また、他の運輸機関、国・自治体との連携を必要とするなど一律に具体的事項を明示するのは困難である。このため、このマニュアルでは事業者の任意の取組を期待する項目とした。

(使いやすさ、乗り継ぎの容易さを考慮したサービスの提供)
 バスの利用しやすい仕組みや、機器や運行形態の導入等の面から検討した。
 仕組みの導入については、環境定期券や共通パス等の導入、WEB時刻表案内サービスやバスロケーションシステムの導入を例示した。また、機器・車両に係わる取組としは、非接触型カードシステムやワンコインバスの導入、深夜バスの運行をとりあげた。また、バスの車両に係わる取組としては、低床バスは環境保全に資するとの側面もあるので取組項目として検討したが、「バリアフリー法」において、新規購入車両については低床バスが義務づけられているので、チェックリストからは除外した。
(効率的な運行ルートの設定)
 バス経営の効率化が主目的であるが、回送車の削減による走行距離の削減、利用者の増加が期待できるので取組項目として取り上げた。
 なお、バス専用レーン等の設置、公共車両優先システム(PTPS)の導入も定時性の確保の観点から重要であるが、バス事業者が独自に実施することが困難であるので対象から除外した。
B. 事業所における
環境保全
○グリーン購入の実施

○エネルギー・資源の節約

○ごみの排出抑制

○周辺環境への配慮
 営業所における環境保全の取組は、管理部門における事務処理等に際しての取組と操車場などでの車両に関する取組がある。前者には、グリーン購入やエネルギー、紙、水等の節約、ごみの発生抑制、分別等がある。後者には、アイドリングや扉の開閉時などの騒音による周辺への影響、洗車水の節約などがある。
 こうした取組は、経営者が明確な方針を示すことによって容易に取組が可能であり、既に、多くの企業が取組を行っている事項である。このため、マニュアルでは各事業者が様々な工夫を行い、独自の取組として進められることを期待して任意項目とした。

(グリーン購入の推進)
 廃てんぷら油を再利用したディーゼル車への燃料の使用が一部事業者で実施されている。廃油燃料等の使用は、リサイクルの推進、化石燃料の使用量削減といった環境負荷低減に寄与するものであり、評価項目(任意項目)とすることを検討したが、現状では法制度が未整備であり、チェック項目とすることは見送った。
C. 社会との
コミュニケーション
○社会への取組のアピール

○住民からの苦情への対応
 事業活動を進めるうえで、地域社会と良好な関係を保つことが重要である。そのための取組として、事業者の環境保全活動の状況の公表、地域と協働した取組の実施等が考えられる。また、排ガスや騒音等の苦情に対し素早く対応できる体制を作ることも必要である。
 こうした取組は、バス事業だけでなく全ての企業に要求される事項であり、各企業とも何らかの形で既に取組でいる項目だと考えられる。このため、このマニュアルでは各事業者が様々な工夫を行い、独自の取組として進められることを期待して任意項目とした。







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