■エコドライブの効果
エコドライブの各取組の効果は、概ね次のとおりです。
○荷物の積み降ろしの際には、アイドリング・ストップに心がける
アイドリング状態(大型車の場合450〜550r.p.m.)にある時の時間あたりの燃料消費量は、そのエンジン排気量の約10%程度です。つまり、排気量10lのエンジンならば、1時間のアイドリングで1lを消費することになります。
○急発進、急加速を控える
急発進・急加速をすると、必要以上にエンジンの高回転域を使うことになり、通常の加速に比べて著しく燃費が悪化します。
○急ブレーキを控える
ディーゼル車は、走行中にアクセルペダルの踏み込みをやめてエンジンブレーキの状態にすると、エンジンの燃料供給がカットされ無噴霧状態となるので、この状態を多用すると燃費向上につながります。
フットブレーキのみの使用に比べて、エンジンブレーキを使用して停止した場合、一般的に大型車で1回当たり20〜25ccの燃料を節減できます。
これを、1日のブレーキ回数を600回としてさらに、年間に換算すると延べ18万回となり、燃料消費量としては3,600〜4,500l、金額として23.4〜29.3万円(65円/l)の節約となります。
○シフトアップは早めに行う
大型車が5速でなく4速、中・小型車が4速でなく3速というように、一段下のギアで走行したとすると、燃費はそれぞれ20〜40%も悪くなります。
○経済速度で走る
例えば、交通の状況から経済速度が50km/hの時、60km/hに速度を上げた場合、燃料消費量は約10%多くなります。
○タイヤの空気圧を適正にする
空気圧が100kPa(=1.0kgf/cm2)低いと燃費は約1.5%悪化するといわれます。
実験データから得られた空気圧と燃費の関係
空気圧 |
500kPa5.0kgf/cm2 |
700kPa7.0kgf/cm2 |
900kPa9.0kgf/cm2 |
燃費(指数) |
97 |
100 |
102 |
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車両:前2軸大型車、荷重:100%積載、速度:80km/h
タイヤ:11R22.5/14PR、平坦路直進定速走行(出典:ブリヂストン) |
○空ぶかしをしない
空ぶかし1回あたりの燃料消費量は、
大型車 |
中型車 |
小型車 |
10〜12cc |
5〜7cc |
3〜5cc |
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例えば、燃料1lで大型トラックが約3km走行(1ccで3m走行)できると仮定すれば、大型トラックが1回空ぶかしすると、30〜36m走行分の燃料を無駄にしていることになります。
出典:(社)全日本トラック協会発行「エコドライブ推進マニュアル」「環境基本行動計画推進マニュアル」
■エコドライブによるコスト削減効果
エコドライブへの取組の成果は、燃費の向上として表われます。トラックの場合、エコドライブを実施した場合としていない場合とでは、燃費が10%も違うという報告があります。
仮に、年間の走行距離を10万km、軽油価格を65円/l、エコドライブによる燃費向上率を5%、10%、20%と想定し試算してみました。これによって、次のようなコスト削減が見込まれます。
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通常運転 |
エコドライブによる燃費向上率 |
5%向上 |
10%向上 |
20%向上 |
リッター当たり走行距離 |
3.0km/l |
3.15km/l |
3.3km/l |
3.6km/l |
年間の燃料消費量 |
約33kl |
約31kl |
約30kl |
約27kl |
年間の燃料費 |
約217万円 |
約206万円 |
約197万円 |
約181万円 |
コスト削減額 |
- |
約11万円 |
約20万円 |
約36万円 |
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(注)年間走行距離:10万km、軽油価格:65円/lとして算出した。 |
■燃費の向上が国レベルの二酸化炭素削減に寄与する割合(試算例)
1999年度の日本全体のCO2排出量は、12億2,498万トンで、そのうちの運輸部門の割合は日本全体の排出量の21.2%に相当する2億5,991万トンでした(地球環境保全に関する関係閣僚会議)。
営業用貨物車のCO2排出量は、運輸部門の約16.7%に相当する4,344万トンとなっています。
仮に、営業用貨物車の燃費が10%向上した場合、日本全体のCO2排出量の0.36%に相当する434万トンの排出削減が可能となります。
【燃費等に関する定量的な目標の設定等】
会社としてエコドライブを体系的に進めるためには、運転日報等により燃費を把握した上で、会社として燃料使用量の総量を削減するような目標を設定することが望まれます。具体的には、車種別や用途別、ドライバー別などのより小さな単位で、効率を高める目標として、燃費(燃料1 lあたりの走行距離)について設定するとよいでしょう。
定量的な目標値を設定するには、燃料使用量の総量や燃費を経年で把握し、その絶対量や増減量、変化率などを、前年比、前年同期比といった形で捉えると良いでしょう。
ただし、燃費(効率)が向上していても、会社として業務量や総走行距離が伸びれば、会社の燃料使用量全体の削減にはならない場合もありますので、留意が必要です。
定量的な目標として、次のようなものが挙げられます。
・燃料使用量の削減:対前年比**%削減、対前年同期比**%削減 など
燃料使用量による把握では、効率を把握することが出来ません。仮に比較の対象となる期間(前年など)と比べて、業務量や総走行距離がほぼ一定ならば、エコドライブの結果をあらわすものと見なすこともできます。
・燃費改善率の向上:大型車 **%改善、小型車 **%改善 など
・目標燃費:大型車 ** km/l、小型車 ** km/l など
燃費による把握では、燃料使用量の総量の変化はわかりませんが、業務量や総走行距離の変動に関係なく、効率を把握することができます。
■燃費の把握事例
燃費を継続的に把握し、燃費管理へ活用することが、環境保全と経営改善につながります。次の例に示す運転日報では、燃費の把握に必要な走行距離、軽油及びオイルの給油量の他にも、業務の状況や独自に設定したエコドライブ活動を推進させるための項目に関する記入欄が設けられています。
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■実施計画の策定
エコドライブへの取組を継続的に進めるためには、担当、責任、手段、スケジュール等を盛込んだ実施計画を策定して取り組むことが必要です。
また、エコドライブ推進月間等を設定し、エコドライブの必要性をドライバーに喚起したり、全社的な取組を進めることも重要です。
■目標達成状況等の確認・見直し
目標が達成できなかった場合は、なぜ達成できなかったのかその原因を探り、次回の目標や計画の策定に活かします。
取組の改善、見直しには、同じ資料をもとに経営層、エコドライブ責任者、ドライバー等がそれぞれの立場で意見を出し合い、工夫することが必要です。このため、エコドライブの結果のデータを次のように整理し、全ての関係者に周知しておきます。
○結果の確認
・営業所・支店単位等の実施状況の整理
・車両運行月報等でのデータの整理
・車両別走行距離および使用燃料の対前年比較表の管理
○結果の評価と管理
・目標達成状況の解析と評価
・グループ別の燃費管理の実施
【エコドライブのための実施体制】
会社としてエコドライブを推進し、実績を把握するため、エコドライブについての管理者を設置し、管理者による様々な指導を行います。
具体的な指導としては、次のような事項が考えられます。
○運転手・車両毎の実施状況の確認
・毎朝点呼時におけるドライバーごとのエコドライブ目標の確認
・安全エコドライブ運転確認表による確認(毎日)
・デジタコ活用による空ふかし・運行速度の点検
・点呼時のキー抜きロープの装着確認
○職場巡回時等におけるチェック
・アイドリング・ストップの添乗指導
・職場巡回時のアイドリング・ストップの指導
・運行管理者による抜き打ちチェック・指導
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