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第6回海洋文学大賞受賞作品集

 事業名 海洋文学大賞の実施
 団体名 日本海事広報協会 注目度注目度5


第六回海洋文学大賞特別賞
受賞者 作家 石原慎太郎
受賞理由
「還らぬ海」、「風についての記憶」、「わが人生の時の時」などヨットレースや海での体験をもとに描かれた多数の作品を著し、その著作をとおして広く一般の人々に海や船への興味と関心を高めた功績。
プロフィール
石原 慎太郎 いしはら・しんたろう
 一九三二年(昭和七年)神戸市生まれ。一橋大学卒業。同大学在学中に「太陽の季節」を発表、第一回文學界新人賞を受賞。翌年同作品で芥川賞を受賞。ヨットとの出会いは昭和二十年代半ば、父親に買ってもらったA級ディンギーが最初で、後にコンテッサ号で多くの外洋ヨットレースに出場。一九八〇年から一九九三年まで日本外洋帆走協会の会長を務める。著書に「還らぬ海」、「星と舵」、「男の海」、「風についての記憶」など多くの海洋小説やエッセイがある。現東京都知事。
選考委員 作家 半藤一利
 とにかく海を主題にした長編・中編そして短編小説その他を数多く書いている。わたくしの記憶にあるだけでも、『一点鐘』『貧しい海』『海の地図』『還らぬ海」『風についての記憶』『わが人生の時の時』『孤島』『男の海』などなど。とくに米西海岸のサンペドロ沖からハワイまで、太平洋横断ヨットレースを主題にしている『星と舵」を読んだときの感銘がいまもあざやかである。主人公「僕」が艇長として走らせるヨット“ユリシーズ号”は苦闘のかぎりをつくすが、優勝の望みは失われる。しかし、「僕」たちは、海と風と雲と星などから多くのこと、つまり自然の偉大さを学ぶのである。
 「僕らが夜や昼、或いは春夏秋冬と区別しているその間に、天体たちは、互いに軽く顔をそむけたり、一寸見合せたりしてカドリールを踊っているだけなのだ。昨夜は寒かった、昨日は悪い風が吹いて時化た、・・・などと人間が言い合っている間、天体は彼らのほんの一歩、一挙動を動いているだけだろう」
 その作者の謙虚さが何よりもいい。
 新しい文学とはいつだって既成の感性やモラルに逆らって生まれ出る。文学者としての石原さんはずっとそのような存在であった。けれども、精神の根源にはいつも謙虚さと素直さとがあった。つまりは、その小説に描く海にたいする人間のそれである。石原文学の根源にはいつも海があった、と言いかえてもいい。つねに波や風との闘いであり、船底一枚下は死が待っている。しかし、その海は−−行動する人間に無限の可能性と、同時に人間の無力さとを教えてくれる。それゆえに、その海へ人はあえて挑戦するのである。彼のナショナリズムも、なまの政治的野心も、いってしまえばそうした挑戦の一つならんか。とは思いつつも、今度の特別賞受賞を期に、危険な政治家たるよりは、ふたたび危険な文学者たれ、とやっぱり言いたくなっている。
 
 海には、さまざまなものがある。小説でも、ノンフィクションでも、恐らく素材は無限であろう。だからこそ、ほんとうに必要なものはあると思う。つまり、海に対する愛情である。それがなければ、安直な思いつきと受け取られる危険がある。自らの海に対する思いを、一度見つめ直してから、筆を執って欲しい。それから、最低限の文章の修練は積むこと。難しいことではない。毎日少しだけ、なにか書く習慣をつければいいのだ。人に伝わるように、正確に、そして平明に。応募するということは、人に読んでもらおうということだ。心の海を感じさせるような、いい作品を切望している。選考の任に当たる者の喜びは、いい作品との出会いなのだ。
 
 今回は残念ながら大賞にふさわしい作品はなかった。選考委員が称賛するような海洋小説、ノンフィクションを期待したい。
 佳作作品の中では中条佑弥氏の「約束の海」が比較的小説としてまとまっている。とはいえ、大賞に推すほどの出来栄えではない。
 仲間達司氏の「トレード・ウインド」はヨットレースの舞台裏を描いた作品だが、作品に深みがなく、テーマのシーマン・シップも胸を打つほどのものではない。清原つる代氏の「やしの実漂着」は、筆づかいが達者だが、面白みに欠けていた。ノンフィクションにしたほうが、むしろ、よかったのではないか。
 山崎敢造氏の「船渠のトリオ」は、内容は面白かったが、文章がいただけなかった。
 
 まあ面白かったのは、清原つる代さん「やしの実漂着」で、一応は愉しい「物語」になっている。が、いまどきこんな幼いテーマが大賞でいいのか、と問われれば、返答に窮する。上手にまとめることが先だってはいないか。海洋文学にあらず、海浜文学なり、という当初からの難問を、仲馬達司さん「トレード・ウインド」がクリアしてくれるか、と少しく期待したが、残念無念。だらだらした会話。構成にあまりに難がありすぎる。中条佑弥さん「約束の海」は、とにかく話しが単純すぎ、それを伝える芸も単純では、ただただ困ってしまう。
 結局、作者が深い洞察を秘めて、その心奥からとてつもなく面白く創ったドラマがなかった。それで大賞なしとなったのである。仕方がない。
 
 小説は例年にくらべてやや低調だった。佳作三篇、それぞれ題材は悪くないのだが、海の生活に正面から取りくむよりも、それを側写し、中身の浅さを別な事件でカヴァーしているような感じがした。「約束の海」は潜水漁一家の生活の内部が知りたかったし、ヨットレースの裏方の苦労を描いた「トレード・ウインド」は、レースを中断して、遭難者救助を主張する人物の姿が、最初から透けて見える。「やしの実漂着」は盛りだくさんの要素の中で、家出した父の部分が特に「作りすぎ」である。
 なお選外作で「船渠のトリオ」は、珍しい素材で興味深かったが、何分文章が粗雑すぎる。まず正確な文章を心がけて欲しい。







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更新日: 2019年12月7日

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