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ヤドカリのオスとメス
 ヤドカリのオスとメスは、脚(あし)のつけ根(ね)に開く(ひらく)生殖孔(せいしょくこう)の位置(いち)によって見分け(みわけ)ます。オスでは最後(さいご)の脚のつけ根に生殖孔が開き、一部の種類では、生殖孔の開く位置に「精管(せいかん)」とよばれる突起(とっき)があります。これに対し、メスでは前から三番目(はさみ脚を除く(のぞく)と二番目)の脚のつけ根に生殖孔が開きます。
 ヤドカリもカニと同じように、卵(たまご)の中から幼生(ようせい)が出てくるまでの間、メスは腹部(ふくぶ)に卵を抱いて(だいて)います。十脚甲殻類の腹部には「腹肢(ふくし)」という「附属肢(ふぞくし)(触角(しょっかく)や脚などの総称(そうしょう)」があり、メスの腹肢は卵を抱くためにオスに比べて長くなっています。ヤドカリの多くは、腹部の左側のみに腹肢をもっています。ヤドカリが利用しているものをはじめ、巻貝(まきがい)は基本的(きほんてき)に右巻き(みぎまき)で、左側に空洞(くうどう)ができます。ヤドカリの腹肢の位置は、巻貝の形に関係すると考えられています。
 
腹肢に卵を抱えたカブトヤドカリ Dardanus deformis
 
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ヤドカリの成長(せいちょう)
 卵(たまご)から生まれたばかりのヤドカリは、親(おや)とはまったく異なった(ことなった)形(かたち)をしており、ミジンコのように水中を漂って(ただよって)います。これを「ゾエア幼生(ようせい)」とよびます。ゾエア幼生は、数回(すうかい)脱皮(だっぴ)するとやや親に近い形となり、海底付近(かいていふきん)で暮らす(くらす)ようになります。この時期(じき)のヤドカリのこどもを「グラウコトエ幼生」とよびます。グラウコトエ幼生の腹部(ふくぶ)はエビのようにまっすぐで、はっきりした節(ふし)があります。そしてさらに脱皮をして小さなヤドカリ(稚(ち)ヤドカリ)になります。稚ヤドカリでは腹部の節が目立たなく(めだたなく)なり、このころから貝殻(かいがら)をせおうようになります。
 親と同じ形になり、貝殻をせおうようになってもヤドカリは脱皮をしながら成長(せいちょう)を続けます。そして、大きくなった体にあうサイズの貝殻を探し(さがし)、引っ越し(ひっこし)していきます。
 
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これでもヤドカリ
 十脚甲殻類(じっきゃくこうかくるい)をエビ、ヤドカリ、カニと分けた場合、カニのような形(かたち)をしていても分類学的(ぶんるいがくてき)にはヤドカリの仲間(なかま)に含まれる(ふくまれる)ものがいます。私たの食卓(しょくたく)にのぼるタラバガニの仲間がその一例(いちれい)です。広い意味(いみ)でのヤドカリの仲間を「異尾類(いびるい)」とよびますが、その特徴(とくちょう)のひとつは、胸脚(きょうきゃく)のうちいちばん最後(さいご)の脚(あし)が最も小さくなっていることです。タラバガニの仲間は、いちばん後ろの脚が小さく、さらにメスの腹部(ふくぶ)がヤドカリと同じように右にねじれ、その左側のみに腹肢(ふくし)をもっているため、「カニ」ではなく「ヤドカリ」の仲間に入れられています。
 また、カニの形に似たカニダマシやエビの形に似たコシオリエビの仲間も、いちばん後ろの脚が他に比べて小さいため、ヤドカリの仲間に分類(ぶんるい)されています。
 
タラバガニの仲間、アブラガニ Paralithodes platypus
 
アブラガニのメスの腹部
 
普通のカニのメスの腹部







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