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コウナゴ漁
 
 
 
撮影:昭和51年
 
 
 コウナゴ(小女子)は、イカ釣りと同じ船を使い、4月10日頃〜5月中旬に行なわれます。
 その後、6〜11月末はスルメイカ、秋遅く11月〜12月初旬はヤリイカ・・・というように、装備を替えて同じ船が使われます。
 コウナゴ漁は、イカと同様、夜に集魚灯をつけて行なわれますが、装備は全く異なります。(イカ漁は最近昼も盛んに行われるようになりましたが、コウナゴ漁は夜のみ行なわれます。)
 船の片側に、箕(み)を大きくしたような網を取り付け、100Wの電球を9個程つけた木の棒で、海を直接照らします。
 その灯りに集まったコウナゴを、箕ですくいあげるような要領で網あげし、さらにこれを小さいタモですくいます。
 漁に出た男性が休息をとるため、コウナゴ(小女子)を干す作業は女性の仕事となります。
 現在は、たいてい生のまま、佃煮工場などの加工業者に出荷しています。
 
■泊のマルキブネ
 泊では、今日でも丸木船で漁をする姿を見ることができます。
 この丸木船はブナやカツラの大木をくり抜いて作った完全な一木作りで、海で使用する丸木船としては秋田県男鹿半島の丸木船と共に、日本に残る最後のものです。
 記録では、泊がある下北半島をはじめ、県内各地で丸木船が使われていたことを知ることが出来ます。丸木船の具体的姿を知ることができる記録として、明治22年調査の『青森県漁具誌』に記された下北半島大間の「漁業用丸太船ノ図」があります。しかし解説の中に「船体ト縁板ヲ縄ニテ結ヒタルナリ」とあることから、これは後に述べるカッコと同様のムダマハギの船ということになります。現在でも同様の船を丸木船と称する例が各地で報告されていることから、記録の中に多くあらわれる「丸木船」を、泊の丸木船と同様な完全な一木作りとしてしまうには無理があり、むしろ泊の丸木船は、海で使用する丸木船としては昔から特殊な存在であったかも知れません。
 泊の丸木船は、長さ4メートル60センチ、幅70センチが標準的な大きさで、漁船としては大変小型です。鰹節の両端を切り落とし、半分に割ったような形をしていて、前部が広く船尾は非常に細くなっています。通常は1人乗りで、最大3人まで可能です。船を進めるには、車櫂と呼ばれるオールのような特殊な櫂が用いられます。車櫂で漕ぐと丸木船の走りは思いのほか軽快です。
 泊の丸木船は、主に岩礁の多い海岸での、冬のアワビ漁に使用されます。
 丸木船は専門の船大工ではなく、漁師自身が山に入り船作り(フナウチ)をします。
 何人かが組になって山に入り山中で大体の形に彫り込んでから里に引き下ろし、最後の仕上げを船大工が行いました。丸木船に使われる木は軽くて水切れ良いカツラが最も好まれますが、一般には容易に入手出来るブナが用いられました。山の木は山の神様のものであるという考えから、木を切る前に根元にシトギを供え、御神酒をかけて山の神様にあいさつをします。山から引き出す時にもシトギを供え御神酒を切り株にかけて、山側に三回引いた後に前へ引き出します。これは、引かれていく丸木船の最後のあいさつの意味をもつのではないかと考えられています。
 
■カッコ(ムダマハギ型漁船)
 また、丸木船より一回り大型のカッコと呼ばれる漁船も使われています。
 この船は、船底の部分に丸木船を浅くしたようなムダマと呼ばれる材を用い、それに舷側板(棚板)を取り付けた構造です。
 カッコが使用されるようになったのは、明治以降であると伝えられています。その理由として丸木船の原木の入手難が上げられていますが、丸木舟に比べて軽いので、波にぶつかると船体が動いて波が入らず、多少の波でも漁を行うことができるという利点もあります。
 カッコは、一木作りの丸木船から発展した構造の漁船で、船底材ムダマの名称を冠してムダマハギと呼ばれます。ハギとは接ぎ合わせること、すなわち造船の意味です。
 船の発達過程は、丸木船、準構造船(ムダマハギ)、そして構造船(シマイハギ)に進化すると考えられています。
 泊は、これら全てが現役で使用され、船の発達の過程を目の当たりにする事ができる大変珍しい地域と言えます。







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