第4回 里山体験セミナーのご案内
ご参加をお待ちしています。
2002年 3/2日(土)14:00 〜3日(日)15:00
おもに引きこもり・不登校の子どもたちやその両親を対象に、連続して5月・8月・11月と3回里山体験を中心とした宿泊セミナーをしてきました。思いがあってもなかなか外に出ることができなかったり、日程が合わなかったり、不都合でキャンセルしたりで、当日の参加者はあまり多くはなかったのですが、参加した者はその時々を大変充実して過ごしました。その積み重ねの中で、セミナー以外に、日常的に共生庵を親子で訪問・宿泊して行かれたり、ご両親が見学と相談に来られたりと。輪が広がっています。日本財団の助成事業として次回も下記のように計画しています。どなたも是非ご参加下さい。お待ちしています。今回予定していた講師の比婆郡口和町スイス村の木原信行さんは、どうしても現場を離れることが出来ないと言う事情のためにお出でになれません。次回の機会に楽しみにしましょう。
代わって友人の中岡和己さんが講師を引き受けて下さいました。木原さんともよく行き来し、親しい方です。不登校の子どもたちのお世話をよくしておられ、いろいろなグループの相談役でもあります。現在広島YMCA主事として専門学校の校長をはじめ中・西部事業統括責任者としてお働きです。ゆっくりお話を聞き、いろいろな体験を共有しましょう。
◆とき:3月2日(土)14:00−3日(日)15:00 ◆会場:共生庵とその里山
◆費用:5000円(1泊3食) ◆定員:20名(先着順)
◆講演:「いま私たちに一番必要なことは?」
講師:中岡和己さん(広島YMCA主事)中西部事業統括責任者
◆持ち物:防寒着・寝間着・シーツ・作業着・長靴・作業手袋・帽子・筆記用具
食ベ物・飲み物などの差し入れは大歓迎です。
★参加申し込み:2月25日(月)までに共生庵へ電話かFaxでどうぞ Tel&Fax 0824−52−7038
問い合わせは:お気軽に共生庵までどうぞ! 電子メールでも受け付けます。juntaro@enjoy.ne.jp
◆プログラム
時間 |
3月2日(土) |
時間 |
3月3日(日) |
14:00 |
集合・受付・登録 |
7:30 |
起床 |
オリエンテーション |
15:00 |
里山整備作業 裏山へ |
8:00 |
朝食(食後・麦踏み作業) |
下草刈り・除伐・枝打ち |
16:30 |
ハーブティでひと休み |
9:00 |
開発教育ワークショップ |
シイタケ菌打ち |
「人生の切り札」 |
17:00 |
再度、ソーセージ作りに挑戦 |
KAERU CARDを使って |
それを燻製にしてみよう! |
ハーブティでブレイク |
17:30 |
薪割り→薪で風呂焚き |
10:00 |
里山整備作業 裏山ヘ |
18:30 |
囲炉裏を囲んで 夕食 |
11:00 |
ソバ打ちに挑戦 |
薪ストーブ歓談 |
ピザを薪で焼こう! |
20:00 |
講師:中岡和己さんを囲んで |
12:00 |
ランチパーティ |
「今一番必要なこと」 |
22:30 |
入浴・就寝 |
13:00 |
春野菜の畝作り |
ジャガイモの種芋植え付け |
14:00 |
まとめのセッション |
15:00 |
散会 |
|
★日時:2002年3月2日(土)14:00〜3日(日)15:00
★会場:共生庵および里山・農園
1. プログラム:案内状のプログラムに沿って行われた。
(1)裏山での里山体験(枝打ち・除伐・下草刈り)
(2)シイタケ菌打ち(ホダ木約20本に約2000個の齣菌を打ち込む)
(3)裏山から持ち帰った丸太で「薪割り体験」
(4)薪での風呂焚き体験
(5)囲炉裏を囲んで講師から講演を聞く その後ディスカッション
(6)麦踏みと追肥やり
(7)開発教育ワークショップ「人生の切り札」
教材「KAERU CARD」を用いて
(8)ソバ打ち体験
(9)薪窯でのピザ焼きに挑戦
(10)農体験「ジャガイモの種芋」の植え付け
畝作りと春野菜の種まき
2. 参加者:大人11名 通信制高校生 1名 小学生 3名 総計 15名
3. 講演:中岡和己さん「今私たちに一番必要なことは?!」要約 報告
YMCA主事で語学学校・予備校・専門学校・青少年部などにおいて長く教育面での働きを続けてこられた中岡和己さんから、「今一番必要なこと」と題してお話をいただいた。教育相談を受ける中で、特に不登校や引きこもりの子どもやその親御さんのお世話を積み重ねる体験から、具体的なケースをいろいろ聞くことが出来た。
いわゆる「不登校」の子どもたちの問題に関わって10年くらい続けている。相談を受けているなかで「お母さんが大変なんだ」と気づくようになり、「親の会」を作ろうと言うことになった。今回の講師の予定だったスイス村の木原信行さんや、第3回の講師だった山本泰章さんのところへも月に一度出かけて、子どもや親達が憩う時を持った。親はそれぞれに違った問題を抱えているが、子どものことと自分のことで悩んでいるという事ではみんな同じだと思う。多くの場合、子どもの問題に過剰に反応してしまう。お母さんが楽になることが必要だ。「私はもう疲れたよ。あんたのことはもう知らないからね」と親が子供の前で自分の弱さや過ちを認めて、ある意味で全てを放り出した時に、子どもは楽になったといって登校を始めたケースがある。親が変われば事態は急変し、こどもが回復へと向かうことが多い。子どものけんかに親が介入すると余計にこじれてしまう。見守ってやろうと我慢することが必要だ。しかし、親は親なりの善意で手を出してしまうことで、子どもの中の良い芽を摘んでしまう。
子どもが子どもであるために、もっとゆとりのある時間が必要である。親自体がいつも不安感を持っているが、もう少しゆっくり見てやれれば子どもは変わるのだ。これらの問題に父親が関わり始めると事態は楽になっていく。最近は若い30代の夫婦には、家事を共有するケースが増えているが、家庭内のことをいつも関心を持って責任を負いあう事が普段から出来るようにしておくことが大事だ。
講演のあと、更にお互いに人間関係や親子関係で行き詰まっている状況の報告や問題の共有がなされ、講師の助言などをいただいて、それぞれに問題解決への糸口を与えられた。
4. ワークショップ
二日目の朝には、これらの講師のお話とお互いの話し合いを踏まえて、「今一番必要なことは何だろう」という主題について課題を深めるためにワークショップをした。まず、それまでの学びの中から、各自が自分にとって今一番必要なことと思う事を一つのキーワードで表現して、カードに記入しその思いを分かち合った。そこで出されたことは「希望」「認められること」「何でも好奇心を持つ野次馬性」「絞り込み」「せずに後悔より、やって後悔を」「自分であり続ける事・ありのままの私でいる事」「柔軟な思考」「何でかな?と考えるようにすること」等々であった。
特に「せずに後悔より、やって後悔を」と書いた高校生は、3年以上にわたる不登校から引きこもりになった経験を持ち、今そのスランプから抜け出そうとしていることを語ってくれた。一同深く同感し、そこまで的確に今自分に必要なことを表現したことにエールを送った。彼女は今春、名古屋の短期大学に合格・進学し、保健の先生になって「保健室登校する子どもに役立ちたい」との夢を持っている。
次に開発教育教材の一つである「KAERU CARD」を用いて、自分へのメッセージを受け取った。トランプ(切り札の意味)のようにカードを一枚選んで、自分が考えたキーワードとの関連でそこに記された言葉について話し合いを持った。たとえば「Signals」合図をえらぶと「このカードは今あなたにいろいろな形で気づきのチャンスが来ていることを意味します。夢で見ること・日常生活のひとこま・本の一節・歌詞・誰かの言葉など、何らかの合図に注意を向けていて下さい。それが深い気づきにつながって、あなたが新しい人生を築いていく決断のきっかけになるでしょう」。とのメッセージが伝えられる。それを受けた時の自分の思いなどを語り、みんなのコメントを加えたりして今自分に必要なことの確認を進めていった。
5. 参加者の感想
◆みんなで一緒に活動することの楽しさをあらためて感じました。人と人とのつながりはとても大切です。これからも新しい出会いをたくさんしていきたいです。
◆どんなところか一度訪れてみたいと願っていました。一泊二日の里山体験に今回参加できて嬉しく思います。出会いの場・語り合いの場・活動する場・・・ここはいろいろな場を与えてくれる所ですね。
今回体験したことで、大変だったなと思うことは、山の手入れ・草刈り。人が山に手を入れるっていうのが、本当に大変なんだなあと初めて実感させられました。また、食べるっていうっことが、いつにもまして嬉しく感じられました。
◆シイタケ菌を原木に埋め込む作業がおもしろかった。
◆ゆったりとした気分で過ごして、初めて今に自分が毎日セカセカ過ごしているかを振り返ることが出来ました。セカセカしているその時は、そのことになかなか気づけませんね。「みんな色異論青も井を抱えて生きているんだ。・・・がんばろう」という気持ちも湧きました。がんばる意欲とゆっくりする時間のバランスがいいと思います。
◆自然の中で暮らすには、永い目で行動だなと思いました。
◆ゆっくり出来たなあ。色んな話聞けたなあ。色々食べたなあ。ぜいたくな二日間だったなあ。
◆「おいしい食事」とは、どういう腹具合で・新鮮、安全な食材、手作り・誰と食べるか等によるものであることを学びました。
今春、彼女は新たな旅立ちをする。みんなより2年遅れの短大への進学だが、親元を離れ名古屋で新しいスタートを切る。養護教師になることを夢見て。3年に及ぶ不登校や引きこもりと闘いながら、NGO手作りセミナーにOさんから誘われてから、少しずつ学校とは違う様々な年齢層でいろいろな仕事を持つ人たちに出会うことで、人とかかわりを持ち始めた。そんな中で共生庵にやってくるようになった。そして今回の「自分探し・里山体験連続セミナー」にも参加するようになった。見違えるように明るくなり自分を取りもどしたようである。まだまだ揺れ動きがあるが、きっと新たなスタートをしっかり歩み始めてくれるだろう。その彼女からのメッセージである。
共生庵でのゆっくりとした時間の流れに身を置く度、「いつもこんなに自然な自分で過ごしていただろうか」と振り返らずにはいられない。私は以前「あれもしなくちゃ、これもしなくちゃ」と自分に自分でプレッシャーをかけていたように思う。そして、その通りにできないと自信を無くし、「こんな自分では誰にも受け入れてもらえない」という考えに捕らわれていった。気が付けばいつの間にか、外へ出ることさえ怖くなってしまっていたのだった。
そんな状況であった私に変化をもたらしたのは、人との出会いだった。話をしようとしてもなかなか言葉の出ない私をみんなは待ってくれることを知った。また、活動範囲の違う人との出会いは、世界は自分が思っていたより、ずっと広いことを教えてくれた。そして、語り合ううちに、辛いのは決して自分一人ではないと考えられるようになっていった。
受け入れられる安心感や、新しい気付きが、外へ出る原動力となり、私を少しずつ強くしてくれたのだと思う。もしかすると、自分の殻から抜け出せずにいる人にとっては、共生庵へ出掛けることが難しい場合もあるかもしれない。しかし、そこにある人との出会いは、きっと何か手がかりになるはずである。抜け出すためのマニュアルがない中で、どうしたらよいかわからないでいる人は多い。そういった、抜け出すキッカケを求めている人にとっては「共生庵がそこにある」こと自体が大きな意味を持つものであると思う。
自然の中で作業することの気持ちよさ、人と出会い語り合うことで生まれる気付き、それらを取り巻くゆっくりとした時間の流れ・・・。共生庵にはこれからも、それらをじっくり感じることのできる場所であってほしい。私にとって共生庵は、ありのままの自分でいることの大切さを、思い出させてくれる場所なのだ。
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