栽培センターからの便り(5)
無病アワビを大量に放流
生産三科長 赤岩健治
無病アワビについては前々回の便り(3)で紹介しましたが、今回は続編として、その後の放流に関する話を少しさせていただこうと思います。
長年の念願でありました無病アワビ(平成一一年産のクロアワビ稚貝)は、当センターの施設で順調に生育し、今年(平成十三年)の四月には放流サイズである殻長二・五〜三cmとなりました。そして、四月中旬以降、表に示したとおり府内の漁協等に配付し、各地先で放流していただきました。その数は例年の二倍以上の合計三四万個余りで、これは京都府アワビ放流事業が本格的に始まった一九八二年以来、最大の放流数になります。この中には、水産振興事業団と京都府の共同で実施した府内集中放流(放流場所は伊根町蒲入地先と宮津市島陰地先)、水視連のご要望にお応えしたもの(一四の水視組合が放流を実施)および事業団独自で行ったもの(放流場所は網野町磯地先)が含まれております。アワビ放流事業をより一層発展させようという、漁業者の皆さん方と関係機関の積極的な取り組みに、今後も当センターとして可能な限り協力させていただくつもりです。
ところで、府内のアワビ放流適地に溝ブロック礁が投入されてから相当長い年数が経過しています。恐らく、付着生物や海藻遷移等で溝がかなり詰まっているのではないかとみられます。事業団が磯地先で実施した放流試験においても、宮の下造成漁場の一画で溝がすっかり埋もれている状況が確認されました(写真(1))。この放流試験の中では、機械力による効率的な溝の清掃方法も検討され、ある程度実用の見込みがあることが判りました(写真(2))。
表平成13年度アワビ種苗配付結果(6月末時点)
配布年月日 |
配布先 |
(放流場所) |
配布サイズ(mm)と個数(個) |
30 |
27 |
25 |
22 |
合計 |
4月12日 |
伊根漁協 |
(青島周辺) |
20000 |
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20000 |
〃 |
湊漁協 |
(蒲井〜旭) |
10000 |
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10000 |
4月16日 |
田井漁協 |
(水ケ浦、馬立島) |
5000 |
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5000 |
〃 |
三浜漁協 |
(大谷尻) |
1670 |
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1670 |
4月17日 |
蒲入漁協 |
(カマノババ他) |
20000 |
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20000 |
〃 |
舞鶴漁協 |
(戸島、吉田、白杉) |
33340 |
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33340 |
〃 |
網野町漁協 |
(三津、遊、浅茂川、塩江、浜詰) |
10020 |
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10020 |
4月19日 |
新井崎漁協 |
(新井) |
3340 |
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3340 |
〃 |
丹後町漁協 |
(袖志、中浜、竹野、砂方) |
16000 |
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16000 |
4月19日〜24日 |
海洋センター |
(蒲入、島陰) |
11000 |
113000 |
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124000 |
6月4日〜5日 |
水視連 ※ |
(蒲入を除く14水視組合の各地先) |
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50000 |
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50000 |
6月12日 |
事業団独自 |
(網野町磯) |
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50000 |
50000 |
合計 |
130370 |
113000 |
50000 |
50000 |
343370 |
※以下の15水視組合が現在加盟している。 |
田井、成生、栗田、養老、新井、泊、本庄浜、蒲入、袖志、中浜、竹野、間人、島津、浅茂川、浜詰 |
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放流に関連しまして、付着器のことにも触れておきたいと思います。京都府では、殆どの場合、船上から塩ビ製の付着器ごとアワビを放流されております。しかし、御承知のように塩ビ等の合成樹脂製品を漁場に放置しておくことは、海洋環境保全の面からして好ましいことではありません。また、当センターではこの付着器を、経費削減のためにも毎年再利用に努めております。そのような訳で、海況等の影響もあってなかなか難しいとは思いますが、放流後の付着器の回収と当センターへの返送にさらに努めていただきますよう、この誌面をお借りしましてお願いします。
京都府のアワビ栽培漁業を発展させていくため、私達は、栽培センターの第一の目標である健康で活力があり粒の揃った良い種苗を大量に生産することはもちろん、その放流効果がより一層得られるよう漁業者の皆さん方、関係機関とともに取組んでまいりたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いします。
(1)磯地先:宮の下漁場 溝ブロック礁(清掃前)
(2)同上(清掃後)
(3)同上 放流翌日の様子(溝の中に放流アワビがびっしりとかくれている。)
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