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橋田 村俊委員(九州ブロック代表者)
1. 地域里親会のこれからの活動指針について
 戦後世代が7割に達しようという今日、次の世代に何を伝え残すべきか。20世紀は対立と混乱の時代と言われ、現代文明の発達に必ずしも「人を幸福に」して来なかった。我々の暮らしが豊かな反面、失ったものは何か、戦慄すべき凶悪事件や、官民等の度重なる不祥事件の中で、世相は益々混乱しつつある点を考える場合、日本の歴史伝統文化が忘れ去られている事がその基因かと考えられる。
(1)親子の育ち合い・・・として、児童養護施設、乳児院、民生児童委員を交え児童相談所の職員を含め、事例問題や質疑応答で意見交換を実施。
(2)児童の権利条約(児童の意見、表現の自由)
(3)養護施設児の社会自立アンケート調査の中で、要里子の措置後のアンケート調べの必要性。
(4)施設乳児院から見た里親、里親から見た施設乳児院。
 
2. 新しい制度を視野に入れての里親制度の改善策と展望等について
 里親制度はボランティアだが何等ケアシステムの整っていない中での養育は、前近代的な犠牲精神を求められてきた。児童虐待防止法が施行されその対応策として、専門里親、親族里親制度の設置をみました。しかしながらこれら新しい制度を含めよりすばらしく機能させていく上でまだ課題がある。
 制度として、里親に公的休暇の設置、里親人権を明確にして誰もが関心を持ち、参加したくなるような魅力的な里親制度の展開を強く望むものである。
 福祉は人なりの一つの指標として、里親家族の姿勢が多くの人々に21世紀の新しい家族のあり方を示すよう念じまた邁進するものである。
 
学識経験者 石川 守課長
1. 地域里親会のこれからの活動指針について
 日本とは比較にならないほど里親制度のシステムが充実しているといわれるアメリカで、3千人ともいわれる里子の養育をされてきたドーン・イングリッシュさんの話を聞く機会を得た。
 なにか特効薬のような対策が聞けるかと期待し尋ねた「里親制度を普及・拡大する特別な方策はなに?」との質問に、返ってきた答えは「里親当事者が発言し、アピールしていくこと」であった。
 また、別の質問に「里親のことは里親が一番良く理解出来る。里親同志の支援の輪が必要である」と強調されていた。
 多くの里親さんや関係者のこれまでの努力が実り、遅ればせながら我が国の里親制度に陽が当たってきたこの機に、行政関係者の意識変革とともに、地域で、里親さん達も、改めて、制度の推進に向けた主体的な検討や活動を進め、行政と一体となった取り組みを一層活発化させることが期待される。
(1)行政関係者との意志疎通を密にする「仕組み・仕掛け」を各児相や地区里親の状況に応じた形で定着させる。
 児相職員が、まず里親の意見や実情を理解することが不可欠。
 児童相談所職員と里親との話し合いの場づくりは当然のことであろうが、なかなか、児相職員との不定期かつ頻度多く意見交換の場を設定することは現実的に難しいのであろう。
 里親への個別的な支援を必要とする時期の児相担当職員の積極的な係わりは最低限の事として必要である。
 が、関係づくりがおろそかになりがちな、比較的安定している家庭や、児童未委託家庭についても、意見交換や情報共有、或いは、それぞれの里親の状況を児相職員に理解してもらうための「場」を定期的にセットすることでかなりの関係作りや相互理解が可能なのではないか。
 多くの里親との会合とは別に、特定の日(「第3土曜日・午前」とか・・・)に、里親が自由に気楽に児相職員と話が出来る「児相里親サロンタイム」のようなものを設定してみてはどうか。
(2)児相のパートナーとして連携しながら家庭環境の中で、児童の成長・自立を支援するという里親制度上の意義、立場をよく理解する努力が必要と思う。(児相等との協力研修などを開催させるなど・・・)
 里親にもこれまで以上に意識変革が求められていると思うし、児相、本庁にももの申す地区里親会活動が必要になってくる。
(3)多忙な里親同志が、そうそう一堂に会することは難しいと思われる。地区会のホームページや、メールによる意見交換、情報交換が出来る仕組みを是非、創らなければならないのでは。
(4)地域社会に制度を知らせる取組
 様々な広報活動を工夫をしてきているが、行政の職員でさえ、制度を理解していない現状のなかで、里親の苦労も多い。
 区市町村に制度の担当者を設置させるとか、行政とタイアップしながら、里親体験発表会を行うなどにより具体的な活動が求められているのではないか。
(5)小地域単位に小さな班組織のようなものを創ると、複数の里親同志の意志疎通が密となり、里親の孤立化防止策として機能するかもしれない。
(地域によって必ずしも可能でないかもしれない。又、相性が悪い家庭同志であると逆に作用する弊害もあるかもしれないが・・・)
 
2. 新しい制度を視野に入れての里親制度の改善策と展望等について
(1)「金も出すが口も出せる、子どものための」制度へ変化させなければならないのではないか。
 里親の相談を受け止める時点から、認定・登録家庭としての適格性を判断できる指標や専門的なチェック機能を有することが前提となろうが、「職業」に近いものに位置づける。
 その上で、里親の処遇内容について定期的な評価が可能な仕組みを検討する時期ではないか。
(2)子どもの委託可能期間の見直し
 この度通知された「20才までの延長可能」の取扱も不明瞭である。
 本来的には児童福祉法の児童の扱いの問題であるが、真剣に「児童の自立」の視点からの検討がされるべきであろう。
(3)里親が「保証人」として負わされているリスクを軽減できる制度が必要。
 長期の養育をしてきた委託児童の社会的自立に当たって、様々な生活面で必要とされる保証人について、負担感や不安も意識しつつ、里親がなるケースが多いのが実情。
 児童福祉施設の長も同様であろうが、里親個人に負わされる現状は、制度推進の大きな障害の一つである。
 国レベルでの検討を期待したい。(他の施策との横並びの課題もあり、難しい面はあろうが・・・)
(4)委託児童の養育マニュアル
 児童の成長段階に応じた、養育上の留意事項に関する具体的なマニュアル本が必要。
 また、教育関係者や教育委員会、医療機関等に対して、制度を理解してもらうパンフレットなども、実務的な面からだけでなく社会の制度理解を推進する上でも必要と思われる。
 
学識経験者 津崎 哲雄教授
1. 地域里親会のこれからの活動指針について
(1)地域里親会で計画立案/実施できることと全国里親会に任せるべきこととを明確に区別して、議論・行動に移す。
(2)地方自治体の児童相談所の支所との連携をはかるため様々な創意工夫を行う。例えば、仙台市の例のように、里親会と児童相談所のソーシャルワーカーとの定期会合をもつ、など。
(3)北海道のように、所轄児童相談所の里子委託数・施設委託数の統計を把握し、地方における里親委託率の児相別比較一覧を作成、公表する。できればマスコミに報道してもらう。
(4)各児相の児童福祉司に対し、養護児童のニードを真に充足する処遇選択肢は何か、自子が養護措置を受けるようになったらどうするのか(利用者の気持ち把握)、里親委託後にどのような問題が里親/里子の間に起こるか、里親のニードと政府施策の関係(レスパイトなど)について、十分にインフォームする機会をもち、里親の意見に耳を傾けてくれるような人間関係をソーシャルワーカーとの間に築き上げる(理事の西川さんの言われたように里親もしくは里親会が素人の児童福祉司を積極的に育てる姿勢。)
(5)(京都市のように)賛助会員を積極的につのり、地方里親会の活動を活発化する予算基盤を強化する。里親会にも啓蒙広報担当のみではなく、Fundraising(寄付金確保)担当を設ける。これはヴォランティアでもかまわない。
(6)2−(5)と共通するが、地方自治体の審議会への里親加入というような程度ではなく、知事や議会、児童相談所長などへのロビー活動を創意工夫、強力に推進する。里親自身が本当に里子の最善の利益(福祉)を求めて可能な限りの努力を払っているかということが問われている。
 
2. 新しい制度を視野に入れての里親制度の改善策と展望等について(特に全国里親会を対象に)
(1)国連児童権利条約第20条の家庭/家族的養護優先規定をもっと深刻に受け止め、この国の実情(施設94%、里親6%)がいかに国際的に、児童養護施策上で異常か(国連児童権利委員会の指摘)、国民全体に周知してもらい、世論の喚起をこれまで以上に徹底的にはかる(9/27の会でも権利条約20条への言及が全くなかったことは、ひとつの驚きであった)。
(2)地方で作成した里親委託率の全国比較一覧を作成し、どの都道府県・政令指定都市がこの面で努力しているか、時系列指標としても一目瞭然となるような資料を作成、毎年5月や10月にマスコミ報道してもらい、関係省庁に訴える証拠を絶えず創出する。
(3)専門里親制度導入は、給与に当たる報酬(reward)部分を3倍に増額しているので、里親への報酬を制度化したものと考えられるが、被虐待児の治療的処遇を本気で担当させるためのものとしてはあまりにも低額すぎることを、国際比較などを用いて、政府関係省庁に教示する。実際、英国では思春期にある行動障碍を抱える若者への里親手当は、月額50万円ほどである。それでも施設ケアより安い。ちなみに、里親委託費と入所施設経費の比較をすればわかるように、数は少なくても里親の自己負担によって、この国の児童養護負担(税支出)はいかに軽減されているかという全国統計試算を作成し、行政に里親への経費支援の根拠を訴える。(大阪の家庭養護促進協会の試算では大阪市のみで20年間で数億円の支出削減が可能となっている)
(4)全国里親会は政府方針の周知・執行代理機関ではないと思うので、例えば里親手当基準額を(全国消費統計などを用いて)算定し、中央・地方政府に毎年勧告する。地方自治体はそれに基づいて手当・報酬を改定する仕組みを徐々に導入できるように努力する(英国の例では里子の養育経費は普通家庭の1.5倍に設定されている)。
(5)里親委託の大義を訴える相手が、国家の官僚集団である政府官庁のみであってはならず、里親制度というのは本質的には地方自治そのものであるので、例えば全国知事会議・各地方議会(社会福祉・児童福祉)関係委員会あるいは全国児童相談所長会など、地方の施策策定・資源分配権限の在り処に、また児童養護施策・実務の最高権限保有者にその大義を訴える工夫を考案する。
(6)里親は社会的共同親(corporate parent/s)の最も具体的な代表であるという自覚が、里親自身にも十分徹底していないのではないか(回答者の訳書/研究参照)。
 
3.その他
(1)各種社会福祉施設の全国組織が全国社会福祉協議会の主要メンバーを構成し、ある種の影響力を施策策定・実務改定に行使しているが、全国里親会はそのメンバーではどうなっているのでしょうか。なっていないとすれば、その理由は?
(2)地方でも、全国でも、5月の児童福祉月間や10月の里親月間のみにしか、マスコミで里親に関する大規模な報道を行わないのは、マスコミに対する里親会の側の接近が計画的/組織的ではないのでしょうからではないのか。マスコミ活用の担当でも設けたらどうでしょうか。
(3)里親会は本質上、里親委託推進のためのヴォランタリーな機関であり、役所の末端機構ではないので、役所や官僚が使うような表記を極力さけたらよいと思います。(されたい、図られたい、行われたい・・・など)。







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