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講演
『韓国の観光動向』
姜 基洪
姜 基洪
韓国文化観光省国際観光課長
 
章 致英
韓国文化観光省国際観光課課長補佐
 
 工業化と近代化を特徴とする20世紀には、経済が加速的に成長し競争が激化した。新しいミレニアムを迎えると、地球社会は人間のアイデンティティの源を伝統的価値観や文化に求めるようになった。多様な文化の交流を促す観光業の価値が見直され始めている。
 韓国は多彩な文化遺産と美しい自然環境に恵まれている。政府は、それを海外に知らしめるための各種施策を実施してきた。その結果、旅行者数は着実に増加し、韓国は今や世界有数の観光目的地になろうとしている。
 1998年には400万人だった外国人旅行客の数は、「外国訪問の年」2002年には532万人にまで増加した。2001年の観光客到着数のデータによると、アジアからの観光客が最も多く、続いてアメリカ、ヨーロッパ、オセアニア、そしてアフリカである。国別にみると、日本が長期にわたって韓国観光産業の最大市場である。だが中国も着実に伸びて現在第2位の市場であり、アメリカは3位である。この成長の背景には「コリアン・ウェーブ」の影響があると言われる。アジアの若者の間に韓国のポップカルチャーを流行させ、韓国に対する明るいイメージを醸成する役割を果たしている。
 一方海外旅行をする韓国人の数は、収入と余暇の増大によって1992年から1996年にかけて着実に増えた。1998年の外国通貨危機の際には著しく低下したものの、経済の回復に伴い再び上昇に転じ、記録を更新するまでに至った。2001年の出国者総数は608万人で、おもな目的は観光、男女の比率は59:41で、年齢的には30代が最も多い。韓国人旅行者に最も好まれる観光地は中国、次いで日本とアメリカである。
 経済危機以後、韓国人は海外旅行を控えるようになったが、外国からのインバウンド旅行者は増加の一途をたどっていた。2001年にはこの傾向は逆転、アウトバウンドが急増し、インバウンドは減少した。順調に回復する経済を背景に、韓国人は海外で消費するようになってきた。韓国観光調査研究所によると2002年の観光収支は20億ドルの大赤字となる予測している。
 2002年に入り、ワールドカップ開催期間には、一ヶ月あたりのインバウンド旅行者数の成長率は過去最高を記録した。ワールドカップ終了後もこの傾向は継続している。また東南アジア諸国からの旅行者もコリアン・ウェーブの影響で増加している。ロシアからの観光客も大幅に増加している。
 アウトバウンド旅行者の数は7月から8月にかけての休暇シーズンに急増し、過去最大の14.1%増を記録した。今年、韓国人の4人に1人が中国を訪れている。対アメリカだけがマイナス成長。
 旅行の目的として最も多いのが、どの国についても観光(成長率は19.8%)次いで、学習・研修目的とビジネス目的の旅行(成長率はそれそれ21.4%と11.3%)である。
 世界観光機関(WTO)加盟国の協力によって、韓国は2002年FIFAワールドカップの主催国としての役割を十分に果たすことができた。ワールドカップのために韓国の観光インフラは著しく改善された。また一方、近年開始された北朝鮮−韓国間の鉄道の建設はまもなく完成する予定である。南北朝鮮間の観光交流を通じた南北統一のための努力に対する支援を、WTO加盟各国に引き続きお願い申し上げる。
 
講演
『中国の対外観光交流』
鄭 保塁
中国国家観光局大阪駐在事務所所長補佐
 
 中国では、対外観光交流というと、インバンド(国際観光業)とアウトバンド(海外観光業)の2つの市場を指している。
 インバンド市場の発展戦略を中国政府(国務院)は20年前に定めた。発展戦略には三つの目的が謳われている。第一に、外国人観光客を中国に誘致し、中国に対する理解を深め、外貨を獲得すること、第二にはこれを受けて国内観光業を成長させ、国内消費を促進することによって社会を安定させること、第三には国際交流を深め、国民の見識を広めること、である。この戦略を基に対外観光業を促進した結果、中国のインバンド市場は毎年平均2桁の高い成長率を維持し、2001年の中国への入国者数は8,900万人(うち宿泊旅行者数は3,316万人)を数え、外貨収入は178億米ドルに達した(宿泊旅行者数、外貨収入とも世界第5位)。世界観光機関(WTO)は、2020年に中国を訪れる中国人観光客数は1.37億人に達し、世界一のインバンド市場になると予測している。
 一方、アウトバンド市場の開拓は海外旅行を制限せず、段階的に市場秩序を整備するという戦略がとられた。市場の形成のため、中国国家観光局は最初に約60社の旅行会社に対して海外旅行の経営権を付与した。今年、その数は532社にまで増加した。2001年の中国からの海外旅行者の内訳を見ると、約1,200万人の旅行者総数のうち、私用を目的とする(公用旅券以外の)旅行者は約700万人、観光を目的とする団体観光客は370万人であった。国民1人当りの収入が1,000米ドルを超えると海外旅行への関心が生まれると言われるが、中国総人口数の3分の1に相当する約3.7億人がこれに該当する。この推計から、WTOは中国が2020年で、1億人以上の観光客を送り出す世界4番目の旅行者送り出し国となると予測している。一方現在中国人の海外旅行者数の増加を妨げる問題点が存在することも事実である。中国国内の事情として渡航手続きの煩雑さがある。これを改善するための取り組みが進められている。さらに観光目的地の数が限定的なことが海外旅行者数の増加を遅らせている。WTOのメンバー各国が、観光ビザの発給手続きの簡略化など中国人観光客を積極的に受け入れられることを希望する。
 最後に中国と日本の観光交流について。中国への訪問客が最も多い国は日本である。低迷する経済、昨年の米国での同時多発テロ事件の影響で日本人の海外旅行の自粛傾向が進む中においても、中国への日本人観光客数の成長率は依然高い。中国からの訪日観光客数の増加も、日米両国政府間の関連書簡交換後にスタートした訪日団体観光旅行(2000年9月)の受け入れ以降、着実に増加している。今後ビザ発給基準等の緩和によって、より多くの中国人が観光ビザを取得することができれば、日本への中国人観光客の増加は現在の予測をはるかに超えることになるだろう。
 今年は日中国交正常化30周年にあたる。様々なレベルでの日中間の交流は確実に拡大した。またその一環として日中文化観光交流事業が中国国家観光局と日本国土交通省の主催によって実施された。この事業が今後も引き続き両国の観光業の発展、経済の繁栄、及び両国友好関係の更なる強化に寄与するものと信じる。インバンドとアウトバンド双方の日中観光大交流時代の到来を望む。







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