|
講演
『東アジア太平洋地域における域内観光の開発と振興:インドネシアの見通し』
サムリン・バクリ
インドネシア政府観光省副大臣
ジャワ島やバリ島のように広く知られた観光名所を持つインドネシアでは、観光産業は成長著しい部門であり、活気を呈している。2000年には観光客数は506万人、観光収入は57億ドルに達し、アジア太平洋地域の第8位になった。観光産業が発展することによって、外貨準備高の増加や雇用の創出がみこまれるため、インドネシア経済にとって重要な産業の一つになっている。
市場の動向を見てみると、2000年には世界のどの地域でも観光客が増加している。その中でも、もっとも急速な発展を遂げたのはやはり東アジア太平洋地域であり、成長率は14.5%、観光客数は1999年に比べ約1400万人増加した。世界観光機関(WTO)の「2020年へ向けた観光予測(ツーリズム:2020ビジョン)」では、東アジア太平洋地域は今後年6.5%のペースで成長し、市場シェアは25%まで伸び、アメリ力地域に代わって第2位の観光客受入地域になるだろうと予測している。
東アジア太平洋地域の域内旅行をさらに振興させるには、入国規制を撤廃し、移動のためのコストを下げ、時間を短縮し、サービスを向上させることが必要である。また、インドネシアのアチェ及びマルク地域で続いている紛争に対しても対策をとる必要がある。
文化観光省は、観光産業を活性化させるため、マーケティング・ブルー・プリントを策定している。その上で、環境保護、地域社会の参加、消費者保護の三つの点を考慮することが、観光産業関係者に求められている。
東アジア太平洋地域市場の示しているチャンスを活かすためには、地域的協力を強化することが必要である。このため、インドネシアを含むASEAN加盟国は、ASEAN観光協定を結んでおり、ASEAN共同マーケティング・プログラムも地域内で試みられている。
他のイニシアチブとしては、ASEAN+3(ASEAN、中国、日本、韓国)による観光協力がある。さらに第2回ASEAN+3観光大臣会議では、共同推進及びマーケティング、観光投資、観光人材開発、クルーズ観光、緊急通信システムのプロジェクトに関して合意がなされた。
日本ASEANセンターでは、日本人観光客向けのサービス向上のために、さまざまなセミナーや研修コースが企画されている。インドネシアでは、アジア太平洋地域への観光だけでなく、地域内で発生する観光産業のさらなる成長のために、他の国際機関と協力してさまざまなイニシアチブに取り組んでいる。
バリ島の爆発事件の影響を受け、各国政府はインドネシアを危険地域の一つに指定するようになり、この結果、インドネシアの観光産業は危機に瀕している。各国政府がいつまでこのような対応を続けるかは予測し難い。インドネシア政府はこれにより、市場戦略の抜本的見直しを余儀なくされている。観光産業に対する被害をできるだけ抑え、観光産業を再び活気づかせ、できるだけ早く観光産業が正常に運営されるように対策を立てなければならない。政府は現在、広報活動などを展開することで、国際市場における信頼感を回復することを目指した取り組みを行っている。短期的には、回復、復興、正常化、拡大というプロセスを経て、観光産業をよみがえらせることを目標としている。
講演
『域内観光−香港の経験について』
ダンカン・ペスコド
香港経済開発労働局観光委員会副大臣
香港は狭いが多様性に富み、アジア、北米、欧州と中国の間輸出入貨物輸送の約30%を担う珠江(パール・リバー・デルタ)の中心に位置し、中国で最も急速な経済成長を遂げている地域である。またアジアの中心に位置し、アジア地域全体の発展のために最も重要なエコノミーの一つである。
アジア経済危機の影響を受け、1997年と1998年に観光客到着数が激減したことをきっかけに、香港政府は従来の観光振興策や都市開発政策では、観光客到着数の継続増加を維持することはできないことを認識した。その結果、政府内に観光委員会を設立し、香港を世界一級の観光目的地に生まれ変わらせるために、政府の助成によって香港観光協会が設立された。一流の観光商品を開発するための投資も行なわれた。このような観光業界の構造改革の成果は、米国同時多発テロ事件の影響を香港がさほど受けなかったことにも現れている。昨年の観光客到着数は約1,373万人、今年は1,530万人を越える見込みである。
域内観光は間違いなく成長分野である。世界観光機関(WTO)の統計にはアジアの方向性がはっきりと表れている。中国は、今、急激な成長期を迎えようとしている。これにうまく対応するために、1980年代から1996年まで急成長を果たした日本人需要の特性の変化が参考となる。一方で中国のアウトバウンド観光は大きく成長するであろうが、依然緩和すべき規制が残っている。
旅行業の成長を阻むさまざまな障壁を国際レベルで緩和、撤廃する努力が必要である。香港には非常に自由なビザ制度がある。中国国家観光局との緊密な連携によって、ビザ支給の割当制度を廃止し、香港への旅行を提供できる旅行会社の数を増やすことに努力している。香港経済開発労働局は、メインランドの市場の拡大のために旅行・観光のビジネス面の問題にも取り組んできた。だが特別行政区として、独自の対移民政策及び税関規定を維持する必要もある。特別行政区側にも中国本土の側にも相互の努力が必要である。また地域内のパートナー国とも協力して、香港をすべその人にとってアクセスしやすく親しまれる場所にするよう努力している。
香港には多様な観光商品がある。しかし香港は、それらに安住することなく常に前進を目指している。たとえば2005年に完成するディズニーランドも家族観光を発展させるチャンスとなり、新しいタイプの到着者を香港に引き付けることになると期待される。政府は直接的に大規模な投資を行う一方、間接的に民間部門による投資の促進にも尽力している。大切なことは、政府が観光業界を後押しし、業界もまた政府の様々な施策や取り組みを支持し、協力するといった関係を構築することである。香港観光協会は、域内の観光・旅行関係者との提携関係をはじめ、アジア太平洋地域内のネットワーク、さらにそれを越えたグローバルなネットワークを持っている。こういったネットワーク・連携関係によって、香港が世界第5位の人気観光地になるという予測を実現するために努力して参る所存である。
|