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詩舞(群舞)
「琵琶湖上の作(びわこじょうのさく)」の研究
室鳩巣(むろきゅうそう)作
 
〈詩文解釈〉
 
 作者の室鳩巣(一六五八〜一七三四)は江戸時代の学者で幕府の儒官を勤めた人。作品は琵琶湖に遊んだ折のもので、内容の大意は『琵琶湖を湛える水は見渡す限り果しなく広がって空に迄連なっている様だが、その湖上に折り重なって立つ波は天を揺がすようにも見える。
 また周囲の山々は、国を分けるように東西に連なり、遠くに見える樹木に囲まれた村は絵のように美しい。
 一方色の鮮やかな瀬田の唐橋は、空にかかった虹の様に見え、花の香のただよう浅瀬などを独り尋ねていると、日頃のわずらわしさからはなれて優雅な気分になってくる。
 しかし、この様な自分と同じ心がわかる人はどれだけいるだろうか』というもの。
 
錦絵・矢橋帰帆(比叡山を遠望する琵琶湖上)
 
〈構成振付のポイント〉
 この作品のねらいは、或いは八句目の作者の心を披瀝するためのものかもしれないが、群舞構成としては全体を美しい風景描写で振付表現した方が統制のとれた詩舞作品になるであろう。
 構成は詩文に従って、一〜三句目は湖上の描写、四〜五句目は遠景の山々と村落の景色を五人で隊形変化を持たせ全員で展開する。振付表現の根拠を詩の語句だけに頼らず、例えば″近江八景″の錦絵などを参考にするとよい。
 さて六句目からは、次第に描写の間隔を近づけ、例えば瀬田の唐橋を扇を使って構図的に描き、七句目は扇で花を象徴しその花が舟の帆の様に行列を見せる。最後の八句目は、扇を帆から抽象的な舞の世界に展開して全員で盛り上がりのポーズを見せて退場する。
 
錦絵・瀬田夕照(虹の様な瀬田の唐橋)
 
〈衣装・持ち道具〉
 風景描写がポイントだから、衣装はグレー系、ブルー系、べージュ系の着付けと調和のとれた無地の袴がよい。扇も衣装との調和を大切に、図柄はあっさりしたものか無地でもよいが、全員揃った物がよい。







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