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今月の詩(1)
 平成十五年度全国吟詠コンクールで採用される指定吟題が、七月末に開催された常任理事会で決まりました。【幼年・少年・青年の部】【一般一部・二部・三部】各一〇題は別表のとおりです。
 本誌では今月号から毎月、幼・少・青年の部と一般一・二・三部の各部から一題ずつを選び、財団発行の「アクセント付き漢詩集」に掲載されている詩文、並びに簡単な解説を「大意」として載せることに致します。
 吟詠コンクールを目指す方はもとより、吟詠を勉強されている方々に、大いに参考になると思われます。
 なお、さらに詳しく研究される向きには、「アクセント付き漢詩集」のほか、同じく財団発行「吟剣詩舞道漢詩集」(解説書)絶句編・続絶句編を参照してください。
 
平成十五年度全国吟詠コンクール指定吟題
【幼年・少年・青年の部】
(絶句編)    
  (1)月夜三叉口に舟を泛ぶ 高野 蘭亭
  (2)不識庵機山を撃つの図に題す 頼 山陽
  (3)舟中子規を聞く 城野 静軒
  (4)春日偶成 夏目 漱石
  (5)春暁 孟 浩 然
  (6)桑乾を渡る 賈 島
(続絶句編)    
  (7)春の花を尋ぬ 菅 三品
  (8)名槍日本号 松口 月城
  (9)清明 杜 牧
  (10)雪梅 方 岳
【一般一部・二部・三部】
(絶句編)    
  (1)楠公子に訣るるの図に題す 頼 山陽
  (2)太田道灌蓑を借るの図に題す 作者不詳
  (3)中庸 元田 東野
  (4)寒梅 新島 襄
  (5)峨眉山月の歌 李 白
  (6)独柳 杜 牧
(続絶句編)    
  (7)彦山 広瀬 淡窓
  (8)九段の桜 本宮 三香
  (9)董大に別る 高 適
  (10)長安主人の壁に題す 張 謂
 
【幼年・少年・青年の部】(絶句編)(1)
月夜三叉口に舟を泛ぶ 高野蘭亭
《大意》名月の夜、隅田川の三ツ叉に舟を泛かべて月見をしたときの作。隅田川の川口に近く、中州が川をわかち、今戸川も落ちこむこの三叉のあたりには、秋のけはいが濃い。明るい月かげは真新しく天にかかって、万里の流れが遥々と見渡される。興に乗じて青々と澄んだ空に向かって手なれの笛を吹こうとすると、天上から一ひらの浮き雲が、わが乗る小舟を迎えるかのように漂ってきたのである。
 
【一般一部・二部・三部】(絶句編)(1)
楠公子に訣るるの図に題す 頼山陽
《大意》楠木正成・正行の親子が摂津(大阪府)の桜井の駅で訣別する図に題して作られたもの。兵庫・湊川(みなとがわ)一帯の戦場には、殺気を含んだ風がすさまじく吹き荒れ、草木までが血に染まってなまぐさい。この地で戦死をとげた正成公に対しては歴史の書物が特別に重く扱っており、その名ははるか後々の世までも芳しくかおっているのである。まことに公の身中に満ちあふれる熱血は、おのれひとりのみならず、その余りの滴(したた)りを残して子孫に分け与え、子孫をして他日賊軍と戦って壮烈な死を遂げさせたのであって、その忠誠の情は深く人を感動せしめる。







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