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漢詩初学者講座
吟詠家に漢詩のすすめ(49)
四国漢詩連盟会長
(財)愛媛県吟剣詩舞道総連盟会長
伊藤竹外
 
一、漢詩はむつかしいから面白い
 作詩がむつかしいものだと初学者の誰しも抱く先入観です。吟詠剣詩舞家は常に先賢の詩を愛唱しているのですから、一般の者よりはるかに漢詩に興味を持っていますが、さて作詩の門を叩いてみるとこれが案外、容易でないことを知り挫折する人が多いようです。然し吟詠も剣詩舞も最初から上手な人は居ません。毎月練習を続け努力して追々と上達し面白くなってくるものです。
 本欄を熟読している方は文芸に対する先祖の良き素質を受けついでいるのですから是非作詩に努めて下さい。
 
二、作詩豫習のすすめ
 「作詩豫習」とは小宮水心編著の「漢詩講座」(五巻、昭和五年刊行)に独習のための勉学の方法として挙げているもので、愛媛の各吟社では二十年来毎月課題しているものです。
 これは先賢の絶句一首を二字二字三字に分解し順不同に竝べたものを元の詩に復元するものです。この作詩豫習から学び得るものは
(一) 押韻、二四不同、二六対などの作詩の法則が自然に覚えられる。
(二) 先賢の作詩の要領、措辞、妙句を知らず識らずのうちに体得できる。
(三) 起承、転結の脈絡、意脈の貫通を理解する。
(四) 歯切れのよい句調、格調を学ぶ。
(五) 対句の妙諦、句中対等の要領を理解する。
 作詩上達の秘訣は「多読」「多作」「多商量」「多添削」を挙げて来ましたが、いずれを取っても必ずしも容易ではありません。その点、作詩豫習を毎月学ぶことによってこれらを補うのみでなく、解答への興味と併わせ将来の大成への道が開けます。これより毎月、最後に課題を出しておきますからご回答下さい。
 
三、課題吟「○○吟詠大会書感」について
 吟詠家であり、漢詩家の各位は今回の課題は最も親近感のあるものです。私なども県内外より招待の賀会は一年約五十回に上りますが、その都度賀詩を作り半切に認ため呈上しています。
 今回の投稿詩を拝見するにどうもその経験がないらしく適切な表現になっていないものが多く、大会書感の作り方の要領を次の如く知って欲しいものです。
(一) 先ず大会場の場所(城、山、川、海、高閣など)を背景にする。
(二) 開催日の季節(風、雲、花草など)の彩りを添えておく。
(三) 大会壇上の吟舞の演出場面などを表現し、結句は歯切れのよい餘韻を据える。
(四) 何十周年、又は宗家を頌える会のときは、その前段で多年に亘る功績を述べ(過褒をさける)転結で大会風景を表現すると大体まとまりましょう。







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