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吟剣詩舞の若人に聞く
ピアノにスイミング、バレエに習字、英語に詩吟と、毎日が多忙な田中初奈さん。持ち前の負けず嫌いで手にした平成十三年度全国吟詠コンクール幼年の部準優勝のことや、吟詠のこと、今の気持ちなどをご家族と総師範を交えてうかがいました。
 
第四十四回
田中初奈さん(十一歳)
●三重県四日市市在住
(平成十三年度全国吟詠コンクール幼年の部準優勝)
父:田中茂毅さん
母:田中多香子さん
兄:田中一茂さん
祖母:田中千代子さん
総範師:辻芳翠さん
(関心流日本興道吟詩会)
 
インタビューを受ける田中初奈さん(正面)の左、師の辻芳翠さん、右へ祖母の田中千代子さん、母の田中多香子さん、父の田中芳毅さん、左端は兄の田中一茂さん
 
目指せ優勝の気持ちで、次なる少年の部を見据える
 
田中初奈さん
 
十一歳で詩吟をしているのはすごいね?
初奈「もともと歌に興味があって、詩吟は歌と関係しているので、吟じていても楽しいです」
歌もいろいろあるけれど、詩吟を選んだのはなぜ?
初奈「辻先生に誘ってもらい、お稽古場に行ってみたら、先輩のお姉さんたちが可愛がってくれて楽しかったから、習い始めました」
先生が薦められた理由は何ですか?
「詩吟をするなら、小さいうちからやったほうが良いと思っていましたので。また、おばあ様もなさっていますし、私とは親戚にあたるもので、いつも出入りしていますから(笑)、『習うぞ』というのではなく、もっと簡単な気持ちでお稽古場に来ていただいたんです」
娘さんが詩吟をするのは、親としていかがですか?
茂毅「おばあちゃんがしていましたので、抵抗とかはありませんでしたし、僕もおばあちゃんが大会などに出るときはビデオを撮りに行っていましたから(笑)、知らないというわけではないので、とくに驚きもありませんでした」(笑)
おばあ様は嬉しいでしょう?
千代子「はい、嬉しいですね。習い始めは遊び半分でしたが(笑)、初ちゃんが楽しそうにやっているので、兄もついて行くといい、兄妹でするようになったんです」
習い始めて上手くできた?
初奈「最初の頃はあまり思いませんでしたが、習い始めてから少し経ったとき、難しい吟を習い、さすがに詩吟は難しいと感じました」(笑)
初奈ちゃんの素質はいかがでしょうか?
「この子は小さな時から、吟じ方が大人びているといわれ、言葉の明瞭さにいいものがあります。昨年の全国大会で『九月十日』を吟じましたが、その中に『一人断腸』という詩文があり、どうしたら子供なりにその雰囲気が出せるか考えましたが、県大会から全国大会までの間、順調にカリキュラムどおりに進んでいましたから、あとは詩情の表現に力を入れようと思い、その頃ちょうど、おじい様がお亡くなりになったばかりでしたから、その悲しみを初ちゃんも我慢したでしょ、といったら泣き出してしまい、薬が効き過ぎてしまいました(笑)。でも、それくらい感受性のある子なのです」
『九月十日』を選ばれた理由は?
「あまり難しい詩は子供には向かないと思い、子供が理解できるような詩文ということで選びました。全国大会では詩文の雰囲気を良く出せたと感じました」
 
全国大会には初めて出たの?
初奈「初めてです」
初めて出た全国大会の印象は?
初奈「少し緊張しました・・・いえ、思い切り緊張しました」(笑)
自分で上手くできたと思う?
初奈「自分ではあまりわかりません」
準優勝という成績はどう?
初奈「入賞はしたいなと思っていたので、準優勝の成績には驚きました」
皆さんも会場にはいかれていたのですね?
千代子「はい。ただ、お父さんは仕事でこられませんでしたが、多くの人に応援していただき、ほんとうに恵まれています。半分まで吟じたときは、あと半分何とか吟じてと思い気が気ではありませんでした」(笑)
多香子「心臓が飛び出るほどドキドキしていました(笑)。大きな声で吟じられたということだけで、良かったと思っています」
千代子「この子にしては上出来だと思います。なにしろ出番が一番でしたから。この子も一番は嫌だったようでした」(笑)
一番は嫌だった?
初奈「私的には五、六番が良かったです(笑)。一番だと舞台でどのようにすればいいかわからないから」(笑)
多香子「朝は皆さん着替えているので、発声練習もまだしていない状態で、ここで声を出してはいけないような感じでしたが(笑)、一番の子が練習しなかったら、誰が練習するのと発破をかけました」(笑)
発声練習はしたの?
初奈「はい。三回目までは声が小さいといわれましたが(笑)、四回目からは大きな声が出るようになりました」
緊張したけど、落ち着いてできた?
初奈「はい」
茂毅「どちらかというと舞台度胸はあると思います」
「練習のときはお兄さんが良いなと思いますが、いざ舞台になると初ちゃんの方が良くできますね(笑)。でも、お兄さんは声が良く、音程もしっかりしていて、それが舞台で出ればと思います」(笑)
声が良いの?
一成「はい」(大笑)
妹が準優勝を取ってどう?
一成「悔しい」(笑)
兄と妹で吟のことを話したりする?
初奈「したことはありません」(笑)
茂毅「同じようなときに吟を習い始めていますから、二人で競り合っているのは、練習を見ていてもわかります。片方が上手になると、片方がまた上手になろうとしています。お兄ちゃんは音程が良く、初ちゃんは節回しがいいというか、大人びたうたい方が上手ですね」
 
初奈さんはお稽古も多彩。習字では市長賞も受けた
 
取材時はちょうど雛祭り。初奈さんの雛壇の前で前列左より師の辻芳翠さん、初奈さん、田中千代子さん(祖母)、後列左より田中茂毅さん(父)、田中多香子さん(母)、田中一茂さん(兄)
 
「そういう風に吟じろとは要求しないのですが、自然にできてしまうようです。それは、この子の個性だと思いますが、コンクールなどでは作り過ぎに取られないかと心配ですが、だけど、それが持ち味なので抑えてしまうと、この子が生きないとも思います」
今後、どのように伸ばそうとお考えですか?
「まだ小柄なので、体ができてきたら声にも幅が出るでしょうし、少年の中でも通じるような、体力を伴った声による大きな吟をさせたいと思っています」
入賞でいいと先ほどいったけど、優勝したかった?
初奈「・・・したかったです。ハッキリいうと、目指せ優勝でした」(大笑)
それなら、今度は少年の部でがんばらないと?
一成「はい」
お兄さんから返事があったね?
茂毅「妹は負けず嫌いです。マラソン大会でも優勝しなければ気がすまないようで、学年の女子で優勝しましたから」(笑)
詩吟をやめようと思ったことはない?
初奈「とくにありません」
多香子「先生も上手にご指導してくださるので、そういうことはありませんね」
今後の目標などはある?
初奈「少年の部で優勝したいです」(笑)
そのためにはどうするの?
初奈「もっと練習します」(笑)
練習振りはいかがですか?
「今の子は忙しくて、稽古場での練習時間が少なく、ご家庭でも練習ができるといいなと思いますが、普通の家では無理かもしれません。何とか週にもう一回練習日があればと感じます。決められた時間をいかに有効に使うか、集中させるかを考えてやっています」
初奈ちゃんにアドバイスなどはありますか?
「詩吟をこれからも続けて、少年の部で優勝してほしいです。それから、若い人を育てるには若い先生の方があっているように思いますので、指導者になって、吟界の発展のために力になって欲しいと思います」
千代子「続けることま大変ですが、がんばって続けてください」
茂毅「日本も国際化してきて、日本の伝統的なものを身に付けていることは、外国から見ると興味のあることだと思います。習字とか詩吟を習っていることはいいことだと思いますし、自分がしたいと思うなら続けていって欲しいです」
一成「僕もがんばるので、がんばってください」(笑)
初奈ちゃんから、何かいうことはありますか?
初奈「続けていって、大人になったときに詩吟を習った経験を役立ててみたいです」
これから楽しいことが他にも出てくるかもしれないよ?
初奈「何か楽しいことが出てきたら、習い事の空いている日に入れます」(大笑)
最後に詩吟は楽しいですか?
初奈「はい、楽しいです」
今日はインタビューに皆さんお答えいただき、ありがとうございます。これからのご活躍をご期待しております。
 
田中初奈さん
 
田中初奈さんを中心に前列(左)師の辻芳翠さん、(右)祖母の田中千代子さん、後列左より父の田中茂毅さん、母の田中多香子さん、兄の田中一茂さん







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