日本財団 図書館


資料3−2
国家運輸安全委員会
リベリア船籍の貨物船BRIGHT FIELD号、ポイドラス通り桟橋(リバーウォーク・マーケットプレイス)およびニューオーリンズ・ヒルトン・ホテルとの衝突事故
海難事故報告書(抜粋)
 
結論(CONCLUSIONS)
 
調査結果(Findings)
1. 天候、疲労、船舶の操舵装置または船橋上の機器の機能不良、アルコールまたはその他の薬物、乗組員の健康、乗組員の資格、乗組員の経験といった要素は、Bright Field号が関連した事故の原因でもなく、寄与原因でもない。
2. Bright Field号で技術的な問題が繰り返し発生し、それが主機関の信頼性に影響を及ぼしていた痕跡が認められる。もし技術系統が適切に整備され、定期的に検査されていたのであれば、船がミシシッピ川を下る航海の途中で不意に動力を失うことはなかったかもしれない。
3. Bright Field号の船主による船の技術系統の試験と保守の監督が不適切だったため、技術装置の性能が不安定となり、それが事故当日の主推進機関停止の一因となった。
4. Bright Field号の水先人と乗組員がとった措置が、衝突の回避またはその影響の軽減に役立ったかどうかを判断するには十分な情報がなかった。
5. Bright Field号の緊急事態が発生する前、そして緊急事態の最中において、船の水先人、船長、乗組員は、違う状況であれば事故を回避できたか、少なくともその影響を軽減できたであろう情報交換を行っていなかった。
6. Bright Field号の船上でブリッジ・リソース・マネジメント(BRM)の指針に従っていれば、事故の最中にあって水先人、船長、乗組員の間の情報交換がもっとうまくいき、連携した行動がとれたはずである。
7. Bright Field号の事故に対する地元の緊急事態対応機関の対応は時宜を得た適切なものであった。
8. 緊急事に乗客を外に出すことができる舷門が一つしかなかったため、Queens of New Orleans号の避難活動は阻害され、乗客のリスクが高くなった。
9. Queens of New Orleans号およびCreole Queen号の非操船部門の乗組員は、非常事態のあらゆる状況を網羅した訓練を受けておらず、当該事故の際に自らの責任を適切に遂行する準備ができていなかった。
10. 緊急事態および避難の方法についてQueens of New Orleans号の乗員が恒常的に有効な安全説明をしていなかったことが、船から避難する際に乗客と乗組員の間で発生したと報告されている混乱とパニックの一因となった可能性がある。
11. Queens of New Orleans号の掲示や標識は、緊急時の指示や船舶に関する情報を乗客に伝える効果がなかった。
12. 国際河川センターとニューオーリンズ港湾委員会は、十分なリスク評価や安全管理の監督を行って、自らの財産およびそれを利用する人たちをBright Field号が関与した衝突から守ることをしていなかった。
13. 米国沿岸警備隊、ニューオーリンズ港湾委員会、そして財産所有者は、エラトー通り、ジュリア通り、ポイドラス通り、カナル通りの埠頭に沿って係留された船舶がかかえるリスクに十分に対応していなかった。その結果、一定の状況において、それらの船舶は他の海上交通による衝突に対して無防備な状態であった。
14. ミシシッピ川の航行制限水域で船舶を全速力で航行させれば、緊急事態から復帰するために必要な距離や時間を確保できない可能性がある。
15. 連邦政府、州、地方の当局、民間企業、船主、水先人組合を含むニューオーリンズ港の利害関係者は、港湾区域における一連の活動に関連してどの程度のリスクが存在するのか特定できておらず、この区域の人や財産に対して十分な保護を提供してきていない。
 
推定原因(Probable Cause)
 国家運輸安全委員会は、Clearsky Shipping社がBright Field号の技術設備の保守を十分に管理・監督しておらず、その結果として船がミシシッピ川の危険区域を航行中に不意に動力を失ったことがこの事故の推定原因であると考える。事故の際に発生した物的損害および被害の数と種類は、米国沿岸警備隊、ニューオーリンズ港湾委員会、国際河川センターが、船舶の衝突に脆弱な地域(areas vulnerable)に無防備な営利企業(unprotected commercial enterprises)を置くことに関わるリスクの評価、管理、低減を十分に行っていなかったことが一因となっている。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION