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VII. 勧告(RECOMMENDATIONS)
1. 国際海事機関(IMO)は、定期的に無人となる機関室のためのオートメーション設備を装備した船舶に対し、その船舶の国籍のある国の政府または船級協会が承認した船上総合オートメーション検査手順を備えておくことを義務付けるために、海上人命安全条約(SOLAS条約)第II章1項パートEを改正すべきである。

措置(USCG長官の対応 以下同じ。):この勧告には賛同する。明らかになった欠陥は、システム保全の評価と判断を行う方策と手順が不適切であり、あるいは存在せず、あるいはそれらが最適に文書化されていなかった結果である。オートメーション・システムにおけるソフトウェアとハードウェアが正しく機能し、そして適切に統合されていることを明らかにわかる、テスト手順が必要であり、その手順はわかりやすくきちんと解説されていなければならない。しかし、オートメーションの統合や検査に適用される国際的なガイドラインや基準は存在しない。長官(システム・エンジニアリング・ディビジョン:G−MSE−3)は、海上人命安全条約(SOLAS条約)の改正に向けた国際海事機関による今後の協議事項として提出する方針説明書にこの勧告を取り入れ、オートメーションのテスト手順を策定するためのガイドラインを提案する。
 
2. 国際海事機関(IMO)は、オートメーション・システムのオーバーライド処理およびオートメーション・システムの自動減速または自動停止機能の使用のための標準業務手順書を義務付けるために、SOLAS条約第II章1項パートEの規制52を改正すべきである。この標準業務手順書は、オーバーライド処理を使用するにあたっての定期的な訓練と研修の実施、ならびに訓練と研修の適切な記録を船内に保管することに対応しているべきである。ポート・ステート・コントロールの船上点検の際にはこれらの記録の検査を行い、記録がない場合は、その船舶の国籍がある国の政府または船級協会が満足する訓練と研修が実施されるまで、その船舶を抑留すべきである。

措置:この勧告の意図に賛同する。しかし報告書には、オートメーション・システムをオーバーライドするという選択肢があるということを船橋乗務員や機関室乗務員が認識していなかった、またはこの選択肢のことを認識していなかったことがこの事故の寄与原因であるという記述はなかった。報告書には、船橋乗務員や機関室乗務員がオーバーライド機能の使用を試みたが、訓練を受けていなかったためにそれができなかったという記述もなかった。しかし、主機関がトリップした際の航行状態の深刻さを船橋乗務員が機関室乗務員に伝えなかったという証拠がある。船舶の乗務員が、自動化されたエンジニアリング・プラントのオーバーライド機能についての訓練を受け、それを確実に実施できるようにするためには、集中して船橋管理を行う必要がある。本件事故が提起する状況と類似した状況において必要となる判断と対応を養うのに最も適しているのは、船橋と主機関の乗務員間でのやりとりを含む船橋管理の訓練を行うことである。船橋チームワーク手順および機関室緊急時手順に精通することが「船員の訓練および資格証明並びに当直の基準に関する国際条約」(STCW)によって義務づけられている。船橋チームワーク手順および機関室緊急時手順に精通することの重要性については、ポート・ステート・コントロール活動の中で強調していく。
 
3. 国際海事機関(IMO)は、制限水域を航行する船舶に船舶事象記録計の装備を義務付けるための費用便益を評価するために、SOLAS条約第V章の規制12を改正すべきである。

措置
:この勧告の意図に賛同する。しかし、国際海事機関は費用便益を評価していない。1997年に開催された第20回国際海事機関会議において、航海情報記録装置(VDR)の性能基準を含む決議案が採択された。SOLAS条約第V章における航海情報記録装置の搭載義務の確立は、航行安全小委員会の議題に予定されている。航行安全小委員会のアメリカ代表団は、この議題を積極的に推進する。
 
4. 沿岸警備隊(USCG)は、制限水域を航行する船舶の船主、船長、担当者が、警報や緊急事態に対応する能力を持つ乗務員を適切に機関室に配置するために、第33連邦規則集(33 Code of Federal Regulations)164.11を改正すべきである。

措置:この勧告の意図に賛同する。航行安全規則が初めて起草された時にも同様の規則が提議されたが、第33連邦規則集(33 Code of Federal Regulations)164における狭い水域や混雑した水域の完全でかつ最新のリストを維持するためには多くの困難が伴うこと、そしてそのような要件の適用可能な部分を第33連邦規則集(33 Code of Federal Regulations)165の規制航海水域規則に含めた方が適切であると判断されたため、その規則は撤回された。長官(規格評価開発:G−MSR)は、航行安全規則の中でこの問題について検討するための規制プロジェクトを立ち上げるほか、この報告書のコピーを沿岸警備隊管区司令官に配布し、必要に応じて各水域における規制航海水域(RNA)の確認に利用させる。沿岸警備隊第八管区司令官は、1997年10月30日にミシシッピ川下流の規制航海水域に対し、同様の規制を発布した。
 
5. 沿岸警備隊は、オートメーション・システムの自動減速または自動停止機能のオーバーライド処理の状況と作動方法を水先人が認識するために、第33連邦規則集(33 Code of Federal Regulations)164.11.11(k)を改正すべきである。

措置:この勧告の意図には同意しない。報告書には、Bright Field号のオーバーライド機能についての水先人の知識の有無がこの事故に何らかの役割を果たしたという記述がない。水先人は、船舶の推進または操舵に関して何らかの懸念を抱いた場合、必ずその懸念を船長に伝えなければならない。船舶の推進または操舵を維持するためにオーバーライド機能を使うかどうかの判断を下すのは船長の責任である。
 
6. 沿岸警備隊は、制限水域を航行する際は船首見張りおよび/または錨担当を配置するよう、船主と船長に義務付けるために、第33連邦規則集(33 Code of Federal Regulations)164.11.(o)を改正すべきである。この規制変更を実施する前に、各港長は推進力および/または操舵の喪失事故が港に及ぼすリスク、ならびに船舶がアメリカ合衆国の操船水域を航行する際に錨担当の配置を義務付けることの適切さについて評価すべきである。

措置:この勧告の意図に賛同する。航行安全規則が初めて起草された時にも同様の規則が提議されたが、第33連邦規則集(33 Code of Federal Regulations)164における狭い水域や混雑した水域の完全でかつ最新のリストを維持するためには多くの困難が伴うこと、そしてそのような要件の適用可能な部分を第33巻連邦規則集(33 Code of Federal Regulations)165の規制航海水域規則に含めた方が適切であると判断されたため、その規則は撤回された。長官(G−MSR)は、航行安全規則の中でこの問題について検討するための規制プロジェクトを立ち上げるほか、この報告書のコピーを沿岸警備隊管区司令官に配布し、必要に応じて各水域における規制航海水域(RNA)の確認に利用させる。沿岸警備隊第八管区の司令官は、1997年10月30日にミシシッピ川下流の規制航海水域に対し、同様の規制を交付した。
 
7. 沿岸警備隊は、オートメーション・システムの可視可聴機能補助警報機を検査する際の要件を明確にするために、第33連邦規則集(33 Code of Federal Regulations)164.25(a)(2)を改正すべきである。

措置
:この勧告に賛同する。可視可聴機能補助警報機は、主要、補助の如何を問わず、すべて検査することが義務づけられる。長官(G−MSR)は、すべての警報機の検査の義務化に向け、航行安全規則を検討するための規制プロジェクトを立ち上げる。
 
8. 沿岸警備隊は、定期的に無人となる機関室のためのオートメーション設備を装備した船舶に対し、沿岸警備隊規則(第46連邦規則集(46 Code of Federal Regulations)61.40および62.20)において義務付けられているものと類似した、その船舶の国籍がある国の政府または船級協会が承認した船上オートメーション検査手順書を備えることを義務付けるために、第33連邦規則集(33 Code of Federal Regulations)164.33を改正すべきである。この手順を示す文書は船上に備えられねばならず、ポート・ステート・コントロールの船上点検にはそれを検査すべきである。

措置
:この勧告の意図に賛同する。勧告1に対するUSCGの措置が完了した後、この勧告に対する適切な措置を講じ、米国の取組みが国際基準を確実に反映するようにする。
 
9. 沿岸警備隊は、規制航海水域を航行する船舶がGovernor NichollsまたはGretnaの灯台オペレーターに連絡を取る方法として、VHF−FMの67チャンネルの無線電話が好ましく、第二の手段は笛信号と電話であることを認識するよう第33連邦規則集(33 Code of Federal Regulations)165.810を改正すべきである。

措置
:沿岸警備隊管区司令官には、規制航行水域の規制を出す権限が与えられている。かねてより、当該勧告を沿岸警備隊第八管区司令官に委ね、適切な対策を講じるよう求めている。沿岸警備隊第八管区司令官は、1997年10月30日にミシシッピ川下流の規制航海水域に対する暫定最終規制を出した。
 
10. ニューオーリンズ港内の船舶の往来は激しく、海難事故が発生しやすい状況にあるため、沿岸警備隊はできる限り早い時期に、海上交通サービス(VTS)をニューオーリンズ港に設置することを考慮すべきである。

措置
:この勧告に賛同する。1998年には、ニューオーリンズ地域に海上交通サービス(VTS)の設置が開始される。これは、港湾および水路の安全システム(Port and Waterway Safety System)を港に初めて設置する事例となる。







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