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31. 事故発生から後日沿岸警備隊とNTSBの職員が検査を行うまでの間に、船橋の警報パネルに修理が行われている。この修理は、おそらく船舶の乗務員によって行われたものと思われる。
32. 沿岸警備隊は、この事故の調査にとって極めて重要な証拠(とりわけオートメーション・システムに関する証拠)を保存するための十分な行動を取らなかった。沿岸警備隊とNTSBの調査員によるオートメーション・システムの検査が終了する前に、一部の機器に手が加えられたり、修理や調整が行われたりしたことを示す状況証拠が存在する。
33. main engine sumpの潤滑油量が十分でなく、主機関の潤滑油の油圧が低下した場合に第二主機関が自動的に作動するよう、第二主機関の潤滑油ポンプの調整を怠ったという意味で、機関長に過失があったことを示す証拠がある。
34. 機関長、そしておそらく他の機関士数名は宣誓した上で虚偽の陳述をした証拠がある。具体的には、第二主機関の潤滑油ポンプが実際は手動モードであったにもかかわらず待機モードだったと陳述したほか、推進力が失われた時に自動減速表示灯が点灯したと述べている。
35. 前機関長(Liu Qing Zhu)には、Bright Field号の主機関を満足のゆく状態に保つ正しい保守のための訓練と経験が欠けており、main engine sumpに十分な量の潤滑油を維持していなかったことを示す証拠がある。
36. 「定期的に無人となる機関室(EO)および機械装置集中制御(ECO)」に関するDNV(ノルウェー船級協会)規則は、毎年および更新時に行われるオートメーション検査と併せて、オートメーション・システムの自動停止機能および減速機能に情報を送るすべての温度センサーと圧力センサーの適切な較正の確認を、特に義務付けていない。
37. 証拠として扱われた4つのオートメーションの検査手順は、いずれもDNV(ノルウェー船級協会)のオートメーション検査プログラムの一部として使用することが認められたであろう。
38. 「定期的に無人となる機関室(EO)および機械装置集中制御(ECO)」に関するDNV(ノルウェー船級協会)規則は、船上で同協会承認の検査プログラムを整備し、それをオートメーション・システムの体系的な保守や機能検査のための計画として利用することを義務付けていない。
39. 衝突の際、COSCO(中国遠洋運輸総公司 China Ocean Shipping Company)は船級維持に必要とされるDNV(ノルウェー船級協会)の要件を満たしていなかった。COSCO(中国遠洋運輸総公司China Ocean Shipping Company)は、主機関の故障と修理が継続して発生していること、そしてテラサキ製WE3警報システムおよび監視システム用の第一モニターが作動していないことをDNV(ノルウェー船級協会)に通知すべきであった。
40. 危機障害の際に船主と操船者が行う通知に関するDNV(ノルウェー船級協会)の要件は曖昧であり、直ちに報告しなければならない重要な船舶システムについての具体的な対応はない。
41. 主機関、主機関制御システム、技術警報監視システム、潤滑油ポンプ、潤滑油ポンプ制御システムの設計や構造に本質的な問題はなかった。
42. 船長は、船舶が直面していた緊急事態について機関長に連絡をしなかった。その結果、機関長は掃気制限をバイパスして主機関の加速率を高める衝突回避ボタンを使用しなかった。衝突回避ボタンを使用していれば衝突を防ぐことができたかどうかは定かではない。
43. COSCO(中国遠洋運輸総公司 China Ocean Shipping Company)は、推進力喪失などの緊急時に対応する際に主機関のオートメーション・システムのオーバーライド機能を使用する方針を、Bright Field号の乗組員に対し規定していなかった。
44. Bright Field号が両主機関の潤滑油ポンプを同時に作動させて航行していたならば、主機関の自動トリップはまず起きなかったはずである。
45. Bright Field号の船長は、汽笛信号が出す大音量の音によって携帯型無線機という唯一利用できる通信手段が利用できなくなったため、錨の近くにいた営繕係と効果的な通信を行うことができなかった。
46. この事故では錨の使用は効果的ではなかったものの、錨を迅速に使うことによって効果を発揮できる状況は数多く存在する。
47. ニューオーリンズMarine Safety Office(海事安全事務所、MSO)は、管轄水域内で操業する客船のリスク評価を実施し、該当する場合は、乗客が乗船中に実況の船橋監視をVHF−FMの67チャンネルで行うことを義務付けている。
48. ニューオーリンズ港に係留されているすべての一般船舶で、乗員が船上で生活している船舶に実況の船橋監視をVHF−FMの67チャンネルで行うことを義務付けている連邦、州、地方の規定は存在しない。
49. 船舶の航行監視と制御を行う灯台オペレーターの能力を向上させるために、規制航行水域の交通規制システムの機器と制御システムの改善点が多数ある。
50. ニューオーリンズMarine Safety Officeは、船舶の避難基準を定めるために、Queens of New Orleans号(カジノ船)の(係留時)緊急避難手順の検討を開始している。
51. 沿岸警備隊の海洋安全情報システム以外に、水先人が特定の船舶の操舵を行う際のリスクを評価するにあたって使用することができる、船舶の事故や欠陥に関する全国的データベースが存在しない。
52. ミシシッピ川下流を航行に関わる特有の問題、使用されるテクニック、水先人が予想すべき事柄について、簡単に説明している標準化された情報カードがあれば、水先人が外国人の乗務員に提供することができ、船橋管理チームの結成を促進する貴重なツールとなるだろう。
53. ニューオーリンズ港リスク分析調査に記されているように、リバーウォーク埠頭一帯に船舶を係留することは、その一帯を通過する船舶から衝突されるという既知のリスクである。
54. Queens of New Orleans号の(係留時)緊急避難手順では、乗客の上陸用に普段から用意されている唯一の舷門に到達するためには、乗客全員がボイラーまたは「02」デッキまで階段を上ることが求められる。
55. 沿岸警備隊は、乗客が乗船した状態で係留して操業する収容能力の大きい客船に対する保護対策に関する全国規模の方針(船橋での監視および/または防波堤のような受動的な保護手段)を未だ定めていない。沿岸警備隊が実況の船橋監視を命じたところでは、監視員が船舶からの即時避難などの必要とされる対応を命じる能力と権限を備えていなければならないかどうかが必ずしも明確ではない。
56. 衝突の前に船舶が沈殿物(the silt)に乗り揚げたように見えたという、二等航海士の陳述は正しくないと思われる。埠頭に衝突した後、船首が整備浚渫の対象となっていない区域に突っ込んで船舶が座礁したのは事実である。沈殿物(the silt)との摩擦が、埠頭の側面に沿って進む船舶の動きを止めるに一役買った可能性はある。Bright Field号が埠頭の側面に沿って進み続け、Queens of New Orleans号に衝突するのを沈殿物(the silt)が防いだかどうかを判断することはできない。
57. Queens of New Orleans号とCreole Queen号(外輪遊覧船)の係留箇所の下部およびその近辺に沈殿物(the silt)が多く堆積していたとすれば、水深は最低許容レベルまで浅くなり、これらの船舶がBright Field号のような喫水の深い船舶から衝突を受けることをかなり高いレベルで消極保護(passive protection)するであろう。
58. 旧来の曳航船を護衛船として使用していても、この事故による被害を回避または緩和することはできなかったであろう。
59. Marine Boardは、調査の一環として川岸地域という操業環境におけるトラクター曳航船の有効性に関する情報を探した。トラクター曳航船がこれまでにミシシッピ川で護衛船として使用されたことがあるという証拠も、流れの早い河川におけるその有効性に関する情報も入手できなかった。
60. Bright Field号がリバーウォーク近辺の浅瀬に急速に接近したため、船舶の前に大きなうねりが発生し、それがQueen of New Orleans号とCreole Queen号で報告された軽度な損傷や傷害の原因となった。
61. Queen of New Orleans号とCreole Queen号の船長がとった行動は冷静であり、乗客と乗務員をドックに避難させるという彼らの決断によって、潜在的な人命の損失や傷害を最小限に止めることができた。
62. 船長が水先人に喫水、操縦特性、異常な状況(すなわち主機関の最近の故障歴や大規模修理)について連絡するという責任を果たしておらず、第33連邦規則集(33 Code of Federal Regulations)164.11(k)に違反しているという証拠がある。水先人も、船長からこの情報を得るために特別な行動を起こしていない。
63. Bright Field号の水先人または乗務員の疲労、病気、投薬、違法薬物の使用がこの事故に関与していたという証拠は存在しない。
64. 前述した事柄を除けば、有資格者や資料が提出された人たちに対して訴訟を提起できる違法行為、任務に対する不注意、怠慢、法規制の意図的な違反行為はなかった。調べた資料や機器の故障、そして沿岸警備隊の職員またはその他の機関や人物が事故の原因となったことを示す証拠はない。







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