戦略例(1)九州域内貨物の北部九州集約化
最後、例としていくつか示しています。これは、結論という話ではなくて考え方を示したものです。
ひとつは、九州の域内貨物を北部九州の港湾に集約化するということを考えた場合に、まず、国内のフィーダー機能を、九州一円あるいは中国地方から北部九州にもってくる。国内輸送を強化する。これはトレーラー輸送を効率化するとか、鉄道を活用するとか、内航フィーダーを今は神戸に取られていますが、博多か北九州に繋がるように導入するとか、こんなことがあります。
それから当然国際航路の充実というのがあります。ここについては、船会社が寄港したいと思う魅力というのが一番大事なので、港湾コストの低減と利便性をあげるということです。そしてターミナル運営の効率化というのがより一層必要になってきます。
それからロジスティクス機能の強化ですが、国内の物流の動きをみてみると、各企業ベースでは物流拠点の集約化というのがかなり進んできた段階で、福岡、北九州とか、鳥栖周辺、こういう所に国内の物流拠点を作って、ここの役割を、保税の機能とか、コンテナの対応とか国際物流に対応できるものを併せ持つと強化できると思います。
この場合、いろいろ課題はあると思うんですけれども、大きく2つに、北部九州と地方港に分けてみました。北九州、博多以外の港湾は、韓国航路はほとんど持っていて、当然韓国との輸出入の貨物もあるんですが、半分位は釜山で積換えて、他の国にいく。それを北九州、博多に集めるようにすれば、韓国航路の寄港頻度は下がる可能性がある。あるいは各県の港の取扱量の減少も考えられる。ただし、内航フィーダーを使えば、フィーダー船に貨物が移るだけで済む。鉄道・トラックを考えた場合には貨物自体が減る。
それから、博多、北九州がどういう役割をもっているかということと、ターミナルオペレーターのあり方ということで、例えば、シンガポールのPSAというのは、元々港湾管理者と一体の組織ですが、それがターミナルとして独立したので、国営会社として一体的にやっています。一方、香港は複数のターミナル会社があって、各々香港の中での競争をしています。ただし、これらの港は取扱量の桁が違いますので、おそらく博多や北九州でたくさんのオペレーターが競争するというのはスケールメリットが出にくいので、一体的にやるということが効率的だと思います。その時に、北九州と博多が香港にあるターミナル会社のように各々と競争していくというのがいいのか、あるいはドイツの例でいいますとハンブルグとブレーメルハーフェンのオペレーターが合併したりしていまして、一体的にやっているわけです。そういう形でその辺までも共同運営と考えると、いろいろとる道があると思います。
戦略例(2)国際積換機能の強化
これは北米から中国への積換需要ということですが、当然積換の機能として基幹航路、国際フィーダー航路ともにですね、阪神、釜山位の寄港頻度をもっていないと、利便性で勝てない。特にアジア域内航路ですが、基幹航路に劣らない水準にもってくるには、背後の需要が違いますから、同じ努力では勝てないと思います。
それから積換になってくると、当然コスト競争が強くなってきます。積換はどこの港を使ってもいいわけですから、同じ土俵でのコスト勝負になると、当然、物価水準の違う国と戦うというのは相当のハンディがあります。
戦略例(3)地方港間の連携強化
これは九州の中でもいいですし、例えば中国、四国とでもいいんですけれど、地方港間で連携をして地方港の利便性を高めようということです。
ひとつは同じ航路を利用するということで、現に韓国航路が長崎、熊本、八代にもあるとかですね、東九州側でいえば瀬戸内と組み合わせて、大分とか細島、志布志と結ぶ。これは現状でもかなり進んでいる。
もうひとつは、役割分担を考えるということですね。例えばXという国はA港と、Y国はB港ということで役割を決めてそこを強くする。ただ、これは現実的な動きとしては、まだないです。
3つめは国内フィーダー。これは例えば博多、北九州、阪神でもいいんですが、フィーダー輸送をする場合あるいは鉄道輸送をする時にですね、地域間で連携をするということもあり得るかと思います。
戦略例(4)阪神港との連携強化
これは、そういう選択をするかどうかは別問題ですけれども、特に東九州、南九州でいえば現在も内航フィーダー航路、フェリー航路がありますけれども、今、内航フィーダーと、フェリーやRORO船というのは別の扱いをしています。これを国内の航路をうまく使う形でフィーダーとして使うことができる。例えばフェリーやRORO船を直接外航バースにつけるとかですね。あるいは鉄道を使うこともあります。
戦略例(5)環黄海国際交流圏の拠点化
九州はわが国の他の地域とは違いまして、コンテナ以外の、あるいはバルク以外の国際港湾の機能というのをたくさんもっているのが特徴ですね。ですから、各港がとりうるべき戦略、選択肢としては、海上コンテナに特化していかない考え方というのがあるんです。具体的には旅客船の航路が、博多、北九州、下関にありますけれども、その辺をもう少し拡げていくと。あるいはクルーズ船。高速フェリーについても、テクノスーパーライナーという考え方もありますが、もう少しリーズナブルな値段で、そこそこ貨物も積めるというフェリーもありますので、中国、韓国あたりは距離的には十分考えられると思います。その場合にはどの港がどういう役割をするかという役割分担は考えないといけないと思います。
○実現に向けた課題
九州で考えた場合にですね、港湾管理者間、あるいは国と地方との連携というのがひとつの課題だと思います。
もうひとつは運輸産業の需給調整規制をもうしないということになったわけですから、そういった中で官と民の役割分担というのをどういう形にするのが一番いいのかというのは、まだこれからもう少し良い関係が作れる可能性があると思います。
それから特に貨物の需要ということを考えると、産業政策と連携できるか、つまり輸出貨物というのは増える可能性というのは小さいわけですから、その貨物をどこの地域で仕立てていくか。当然産業立地の時には物流、港湾のことばかりを考えてするわけにはいかないわけですから、産業側からみても港湾がインフラとして期待していたとおりになるように、何らかの形で連携するなり、こういうことも視野に入れることを考えるべきだと思います。
《自由討議》
原田講師の講演後の討議では、参加者から活発な意見交換が行なわれました。ここでは、その一部を紹介します。
・地方港湾の連携強化ということについては、もし博多港に将来外航船が入らなくなったら、現行よりも高くなるという試算がある。従って、そういうことも考えていく必要があるのかなと思う。
・地理的位置の問題、阪神工業地帯の元々の地盤沈下からくる輸出貨物の減少の問題を含めて、日本の港湾がアジアのハブ港湾になるという発想自体が限界にきていると思う。港湾の業務というのは、どうも先進国の業務ではない部分があるのではないかと思う。
・中国との関係は、これから10年くらいのタームでみても、10%近い単位で伸びる。中国との間に準国内輸送のネットワークがひけるかどうかというのが、大変重要になるのではないかと思う。
・今のところ港湾は産業になりきっていない。港湾自身がポートオーソリティということを謳いながら、オーソリティになりきっていないというのが、日本の港湾管理者の現状だ。
・鳥栖が何故注目を浴びているかというと、ひとつは内陸地では最高の保税地域の集積度を誇っている。2つめは、ここで物流加工している。3番目は九州の交通の要衝で配送センターの役割を果たしていることである。
・北九州港はいろんな歴史をひきずっていて一枚岩ではないというのが問題なのかなと思う。だから今回のスーパー中枢港湾の問題については下関と博多との連携を深めていかないといけないと思う。
・これからの基幹航路というのは多分中国に変わっていくのかなと思う。その上でスーパー中枢港湾という流れがあるわけだが、北九州と博多は切磋琢磨してお互いやっていただければいいけれども、その時に地方港はどうなるのか、どう流れても流れが厳しいのではないか。結局パイを奪い合うだけで実りはないのではないか。
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