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(5)熊本県の鉄道
(1)概況
 熊本県内の鉄道は、JR九州、熊本電気鉄道、旧国鉄からの転換線である第三セクター南阿蘇鉄道、くま川鉄道の4社により運行されている。
 このうち、熊本都市圏内を運行しているのはJR九州、熊本電気鉄道であり、基幹交通機関として大きな役割を果たしている。
 熊本市中心部と熊本都市圏東部を結ぶJR豊肥本線については、平成11年に熊本〜肥後大津駅間の電化が行われ、運行時間の短縮、増便、鹿児島本線への直接乗り入れ等が可能となり、基幹公共交通機関としての機能・利便性が大きく向上している。
 熊本電鉄は、都心部と熊本都市圏北部を結んでおり、熊本市電との結節も検討されるなど、近年その重要性が再認識されているところである。
 地方部においては、JR九州(三角線、肥薩線)、南阿蘇鉄道、くま川鉄道が運行しているほか、九州新幹線の開業に伴ってJR九州から経営分離される、鹿児島本線の八代〜川内間を運行する第三セクター「肥薩オレンジ鉄道」も今年10月31日に設立され、平成16年の営業開始へ向けた準備を進めている。
 これらの鉄道は、いずれも交通弱者の生活交通として重要な役割を担っているほか、南阿蘇鉄道のトロッコ列車、くま川鉄道のイチゴ列車等のイベント列車が運行されるなど観光振興にも寄与している。
 九州新幹線開業後は、熊本県への旅行客も大幅に増加することが予想され、熊本都市圏、地方部のいずれにおいても、定時性、大量性に優れた鉄道の果たす役割は、ますます重要になると思われる。
 
(2)熊本市電について
 大正13年に開業した熊本市電は、最盛期には路線長25km、年間利用人員2700万人に上っていたが、自動車交通の発達等により、路線長は9.5kmに短縮され、年間の利用人口も昭和60年には900万人にまで減少した。
 
阿蘇根子岳を背景に走るトロッコ列車 南阿蘇鉄道(株)
 
 その後、運行本数の増便、新型車両の導入等、熊本市交通局による利便性向上のための取り組みが進められた結果、平成11年には年間利用者数が1096万人まで回復している。
 特に、平成9年に日本で初めて導入された超低床式路面電車(LRV)は、段階的に導入が進められ、現在では20分に1便程度の割合で運行している。LRVは従来の電車に較べ走行速度の面で優れているほか、高齢者、子供等の乗降が楽になり、騒音、振動も低減されるなど人や環境に優しい乗り物として注目を浴びている。
 今後は、九州新幹線開業の効果をより十分なものとするため、JR熊本駅と熊本市東部を結ぶ公共交通軸である熊本市電の高機能化、走行性能に優れるLRVの導入に加えて、定時性の確保のための様々な施策や他の交通機関との結節の強化等に取り組むこととしている。
 
超低床式路面電車(LRV)
 
(6)九州新幹線鹿児島ルートについて
(1)概要
 九州新幹線鹿児島ルートは、博多・西鹿児島間を結ぶ257kmの路線であり、昭和48年に整備計画の決定がなされ、平成3年に八代・西鹿児島間、平成10年に船小屋・新八代間がスーパー特急方式の工事認可を受け、着工された。
 しかし、平成12年12月の政府・与党の申合せにより、全線フル規格による着工が決定されるとともに、新八代・西鹿児島間が平成15年末完成、博多・新八代間が概ね12年後の完成を目指すことが明示され、平成13年4月に正式に認可された。
 現在、博多・熊本間は特急で約1時間20分程度かかるが、全線が開通すると、約30分となり、50分程度の時間短縮となる。
 
(2)現在の状況及び今後の取り組み
 九州新幹線鹿児島ルートの整備状況については、新八代・西鹿児島間は用地取得もほぼ完了し、事業の進捗も88%と順調に進んでいる。博多・新八代間については、事業進捗率はまだ13%程度であり、用地取得のための職員を増員するなど体制を整えて取り組んでいる。
 また、県では、新幹線の開業効果を最大限に発揮させ、かつ、県内全域に波及させるため、今年度から県内の各界の有識者で構成する「新幹線くまもと創り協議会」を設置し、観光、商工業、農業などさまざまな分野での新幹線活用方策を検討するとともに、県、市町村、民間の役割分担を整理しながら、その活用方策の具体化に向けた取り組みを行うこととしている。
 







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