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[3] 熊本県の観光について
(1)概況
 熊本県は、九州のほぼ中央に位置し、世界最大級のカルデラを誇る雄大な阿蘇、蒼く澄んだ海に囲まれた大小120余りの島々からなる天草など、美しい自然に恵まれており、日本三名城の一つと謳われる熊本城や水前寺成趣園などの歴史・文化遺産、さらに、県内各地に湧き出す温泉や、馬刺、辛子蓮根、熊本ラーメンといった食べ物、球磨焼酎に代表されるお酒など、観光客にアピールする素材を豊富に有している。
 県内には、自然、歴史・文化、伝統芸能、食といった様々な分野で、全国に売れる可能性を持った潜在的な観光資源が他にも数多くあり、これらを掘り起こし、磨きをかける必要がある。また、施設の改善や接遇のレベルアップなど、受け入れ態勢の整備を進めることが当面の課題である。
 
(2)観光客の誘致状況
 本県の平成13年の観光客数は、新規施設の開業や既存施設の盛況、また、平成13年度全国高校総合体育大会「ひのくに新世紀総体」をはじめとするイベントの開催等の影響で、日帰り客、宿泊客ともに増加し、観光客総数は、前年比103.8%の5886万人と10年連続増加、過去最高を記録した。
 
米塚
 
 特に平成10年以降減少が続いていた宿泊客数については、全国的に「安・近・短」傾向による減少が続く中、久しぶりに増加に転じて、700万人台に回復したところである。
 また、外国人旅行者数もテロの影響等が懸念される中、APEC人材養成担当大臣熊本会合をはじめとする国際会議の開催等により、前年比100.7%の26万8千人と僅かに増加する結果となった。外国人宿泊客数を国、地域別に見ていくと、韓国、台湾、香港の順に多く、アジア地域が全体の約8割を占めている。
 
黒川温泉
 
(3)熊本県における観光PRの取り組みと今後の展開
 「くまもと」の美しい自然、豊かな農水産物、歴史・文化・伝統芸能といった観光資源を全国に広く情報発信するため、民間と行政が一体となり「くまもと観光推進協議会」を組織し、観光連盟とも連携して観光客誘致のための期間を定めたキャンペーンを実施している。
 具体的な内容は、阿蘇や天草といった主要観光地に加え、県内各地域に点在する観光素材を再発見し、旅行商品化の促進を図るとともに、特典やイベントを盛り込んだキャンペーンガイドの作成、また、ポスターや新聞、雑誌等の紙面媒体、テレビやラジオ等の電波媒体によるPRが主である。
 本年度は、4年に1回開催される「第24回全国菓子大博覧会九州in熊本」の会期に合わせ、例年より一ヶ月早い11月1日から冬場の集客を目的とした「くまもと冬の旅キャンペーン」を展開している。そのオープニングイベントとして、県内に多数存在する歴史遺産である石橋に焦点を当て、伝統的な郷土芸能である人形浄瑠璃「清和文楽」と組み合わせた企画「清和文楽と石橋紀行」を実施した。この企画は、農業用水を引くため江戸時代に建設された矢部町の石橋「通潤橋」前の棚田に特設舞台を設置し、ライトアップされた眼鏡橋をバックに文楽を楽しんでもらおうというもので、県内外から多数の観客が訪れ、好評を博した。
 海外からの観光客誘致については、アジア地域からの観光客が、本県を訪れる外国人観光客全体の約8割を占めていることから、台湾、韓国、中国に重点を置いたセールスプロモーションを推進している。本県では、民間の観光事業者等による「外国人観光客誘致連絡協議会」が結成されており、行政と密接に連携をとりながら現地説明会、観光展への出展、さらに旅行エージェントやマスコミ等の招待事業を実施している。また、本県が平成13年度から駐在員を派遣しているシンガポールについては、観光展への出展や旅行エージェントヘの商品造成の働きかけに加え、修学旅行の誘致活動にも取り組んでおり、期待が持たれている。
 来年度以降の展開としては、平成16年春の九州新幹線開業に合わせ、鹿児島県と共同でJRデスティネーションキャンペーンの実施を計画しており、平成15年度から集中的に観光客誘致に取り組むこととしている。
 
通潤橋
 
霊厳洞
 
 さて、平成15年1月からNHKの大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」の放映が予定されている。熊本は、宮本武蔵の「終(つい)の住処(すみか)」となったところであり、人間「宮本武蔵」完結の地である。県内には、霊厳洞(れいなんどう)や武蔵塚などの武蔵ゆかりの地や武蔵の手による書画、彫刻などの品々が数多く残っており、これらを素材に、旅行商品造成や観光PRの促進を図っていくこととしている。
 現在熊本では、阿蘇、天草などの主要観光地に加え、黒川温泉や山鹿温泉が、「九州・山口の行ってよかった観光地ベスト20」の、それぞれ第1位、第10位に選ばれるなど、全国的な知名度が高まりつつある。このような動向を踏まえ、本県の素晴らしさを、より多くのお客様に来て、見て、知っていただき、よきリピーターとなっていただけるよう、今後とも努力してまいりたい。







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