戦後我が国はずっと実は輸出主導型だったんです。皆さんもご存知のように、日本は島国で何にもない国で、我々の先輩達は、輸出業でこの国を富ませました。これは我々の先輩に感謝しなければならない。ところが、輸出主導にしたために、逆に外貨がいっぱい入ってきた。外貨がいっぱい入ってくると、金利をどうしても低めにしていく、どんどん、どんどん。そうするとバブルが起こる。バブルが起こると、次に破壊する。
実は、1990年代にバブルが始まったわけじゃないんです。最初はあの別荘、原野商法。あのわけがわからないのが、あっという間に値段が上がってですね、わけのわからない値段になってそれで終焉。終わったかなと思ったら、今度は紙、石油、かずのこ、魚、このバブルが始まった、わーっと。オイルショックです。それが終わったかなと思ったら、今度は株、不動産、金券、ゴルフの会員権とか、別荘の会員権とかが始まった。それで崩壊した。終わったかなと思ったら、去年はITだ、一昨年あたりから。で、また、破壊した。これ、繰り返してるんです。なんてことないんです。ただ、ずっと繰り返してるだけなんです。これが、まず基本にある。
そしてこの中で特に我々にとって一番大きかったのは1990年のいわゆるバブル破壊ですね。これがやっぱり一番大きかった。なぜなら我々の先輩達が作ってくれた経営のシステムは、がらっとここで変ってしまった。まさに明治維新ですよね、同じ位に変った。どんなに変ったかというと、4つの事が大きく変ってしまった。
ひとつは大競争時代になったということです。やたら競争が大きくなって勝ち組と負け組の差が、天地の差がついてきた。貧富の格差が猛烈にできたということです。
それから、もうひとつは、軽薄短小といって軽くて薄くて短くて小さい。こういう企業、コンビニエンスストアみたいなやつが、ものすごくいいんですね。例えば映画の東宝という会社はあんまり人がいないんですね。大もうけしている。東映と松竹はみんな自分がかかえてるんです、社員を。だから大赤字です。東宝はなにかというと、全部子会社にして、アウトソーシングされてるんですね。だから例えば皆さんの方の業界でいえば、車管理している会社がひとつあるんですね、車だけを管理している会社。運転手、ドライバーは、人材派遣会社を作ってそこに全部置いといて、派遣させている。それで、ここは口座と免許と、その受注を専門にやってるだけ。あとは全部アウトソーシング、こういうふうな事をやってるのが東宝なんです。そうすると高収益なんですよ、借入金なんか要らない。ところが、全部抱えちゃった会社は、みんなひーひー言っちゃうんですね。
それから、3つめに変ったのがスピード。これはインターネットやコンピューターの普及で、情報がもの凄い勢いで流れていって、あっという間に皆さんの会社の経営を変えていっちゃったですね。そしてこれから変るのがカーナビゲイションですね。カーナビをどうやって利用するか、あれをただ交通混雑なんかで考えていたら全然駄目です。これを徹底的に企業の中でどうやって利用するか、これがこれからの経営戦略です。
そして4番目に消費者が変った。平成7年からわが国はめどき、女時文化になります。おおよそこれから30年間、女性と子供が消費の中心となってきます。
だからこういうふうに、いろんなものが変ってきます。今、エンドユーザーは瞬間大衆と覚えてください。瞬間大衆、同質化。「ルイ・ビィトンのバッグがいい。」というと、全員がルイ・ビィトンをばっです。茶髪、ガングロがいいったら全部ばっです。もうあっという間です。小泉総理いいとなったら全員がばっ。引くとき、早い。さっと引いちゃいます。魚の大群みたいなものです。これが今の消費者の典型スタイルです。大衆融合、瞬間。瞬間的にばっと。
これを作ったのがコンビニエンスストアと携帯電話です。あの茶髪、ガングロの姉ちゃんが世界を全部変えてしまいました。ウラジオストックから、今、タイまで行ってますよ、あのスタイルが。ジャポニカ、まさに日本化です。私、この間、内モンゴルのフーホーハオトー(呼和浩特)まで行ってきました。こんな厚底の女の子が闊歩してました。もう全部日本化です、典型的な。
今後、アメリカの資本と日本の文化がどこかで必ずぶつかってきます。今まで世界の大国、フランス、プロシア、イギリス、みんな世界を制した国は文化も一緒に流していました。アメリカは文化、ハンバーガー以外ない。金だけしかない。こんな国は必ず滅びます。そしてそれに対して徹底的になんか、コツコツコツコツとやって、世界の英語の辞典に「おたく」というのを入れたのは日本なんですね。「おたく文化」っていうのを、わけのわからないですね、ゲームだとか、カラオケとか、あっという間に世界を制していってですね。キティちゃんなんてのは、中国の、上海のマクドナルド第2号店を見てください。キティちゃん人形をあげるとマクドナルドが出した瞬間、雲霞のごとく子供が来て、過ぎ去っていったらマクドナルドがなかったっていうんだ、ガラスから割れて全部。そのキティちゃん人形を貰うために大殺到して。あの子供達の同じ同質化。これは携帯電話とコンビニの影響がもの凄く大きい。
そして、こういうふうに大きく変った我々の中で、一番実は多く変ったのが、先ほどから申している銀行です。昨日UFJがでて、いよいよ、東海、三和も合併です。さあ、何が始まった。皆さん、銀行は「法人よ、さようなら。個人よ、こんにちは。」これが本音です。
日本はいい国だったんですね。その証拠は銀行の平等と社会保険が徹底してたことですね。これはものすごくいいことなんです。この2つが今崩壊しようとしています。
ひとつは銀行。これは1億円預金しても、千円預金しても、今まで用があると銀行の窓口に行くと、なぜか変な番号札持って、ずっと待ってるんですね。俺は忙しいんだと言ったって、関係ない。こんな国、世界で他にない。今からあなたが預金をいくらしてるかによって、あなたへの扱いがもう全然違ってきます。
なぜそうなったかというと85%もの赤字会社、1千億円を貸して2%か3%というと、20〜30億円です。そのうち、10社、15社が倒産したら、貸してるのがお金ですから全部なくなっちゃうんです、あっという間に。それなら個人がいいだろうというんで、アイワイバンクだとか、トヨダバンクだとか、どんどん個人を狙ってきます。そうすると我々会社はどうすればいいんだ、金が借りられなくてやめていくのか。そうじゃない、知恵を出せ。それが先ほど言ったように、直接金融です。
貸してくれないなら、お金は2つしかない。借りるか、集めろかです。日本は戦後、皆さんの能力の中に、金を集めるという能力が完全に麻痺してなくなってたんですよ。それは世界ではおかしいことなんです。私は先ほど言ったようにロンドンに行って、そのことをもの凄く感じました。株式総会でやること、取締役会では必ず、金を借りるという仕事と集めるという仕事の2つをチェックしなきゃいけないんです。これがもの凄く大事な役員の仕事のーつなんです。そのノウハウがもの凄くいっぱいある。
バブルが崩壊してこの不況を作った、その元凶は金融政策の失敗です。要するに、製造業、運送業みんながんばった、皆さん悪くない。誰が駄目だったか、金融、私どもで言えば、紙偏(かみへん)の商売と言います。紙をいじってた奴です。不動産も紙です、保険も紙です、証券も紙です、汗流さないで紙をいじってた人が、崩壊したんですよ。
何で崩壊したのか、紙偏の失敗、なぜか、アメリカのグローバルスタンダードに合わせたからです。格好いいですよね、グローバルスタンダードなんて言ったら。アメリカのITに乗っていこうと、これ、いいです。日本もがんばりました。ただ、新聞もあんまり出さなかったんですが、実はアメリカで日本と全然違ったのが金融工学、これが日本になかった。いわゆるデリバティブとかですね、お金を貸すマニュアルを、担保だけじゃなくてもっといろんな事で金を貸せばいいじゃないかというシステムが、わが国は殆ど作られてなかった。ここの差が今猛烈に出てきています。
皆さんの銀行が、アメリカやヨーロッパの銀行と違うのは、向こうの銀行は皆さんの会社にビル建てる、「大いに結構、社長、土地、何億」「いくらいくら」「よし、じゃ10億貸しましょう。」「あなたはこうやって必ず10年で返してくださいよ。15年で返してくださいよ。」「はい。」昔はこれでOKだった。ところが、アメリカの会社は、その貸したお金を債権にして、別な会社にそっくり売ってしまう。信託にして、証券にしてしまう。10億をまた債権にして売ってしまう。そうすると、難しい言葉ですと、自主的な代弁済がされたわけですね。もう関係ない。債権譲渡されちゃったんですから。そうすると、もし途中でこの会社の株が、土地が下がろうが、何しようが、金融機関から見れば、「おお、それは残念ね、またがんばってよ。」それで終わりです。彼らは、土地が下がったからといって追求なんかしない。何をするかというと、絶対約定とおり返済させる。そして、もしそれが出来なければそのビルは、証券化されたものは売られていっちゃう。その代わり、残った残債務についての請求はしません。いうなれば質屋と同じ。質屋は質札を取ったものを、下がったからといって、追求してお金取りになんかいかないです。自分の自助責任で処理します。これと同じシステムが向こうでは当たり前なんです。
これが日本にはなかった。しかし遂に昨日出来た。ダイエーが始めた。あのUFJ、4社が集まって5千何百億円融資してそれを債権化する、これがそれです。いよいよ日本も始まったんです。これからどんどん始まります。そうすれば債権処理で倒産しなくても助かる会社がいっぱい出てくる。そういう時代にやっとなった。こういう金融工学がわが国はもの凄く弱かったんです。それで、どんどんアメリカにやられちゃって、なんか小さくなっちゃった。それで今のような実態がきているわけです。
で、今我々の4つの大きな変化と金融の変化、これをまず認識していただいて、そして次に、じゃあどうすればいいのかということを具体的に話をして締めていきたいと思います。
まず基本的にはですね、自分の城は自分で守れというコンセプトだけです。会社経営というのは人を頼るな、自分の城は自分で守れ。
でも精神論だけじゃやれない。何が必要か、皆さん、帳簿、簿記、これがわからない人はリタイヤです。別に帳面をつけろとは言いません。そんなことは必要ないです、経理の人にまかしとけばいいんです。でもあなたが財務、会計を知らなければ無免許で運転をしてるのと同じです。全く無免許運転でメーターがないのに、やる気と心だけでやってるみたいなもんです。
経営者は3分の1業です。いいですか、会社の社長業ってのは3分の1業、3分の1は営業、3分の1は経理と財務と仕入れ、3分の1はこういう対外的な事。この3つ、30%ずつしかやれないんです。会社は何が必要かといったら、知恵と知識と技術と情報と運なんです。この5つがないと駄目なんです。
知恵、これは本来はあなたのせいじゃない、親を恨まないといけないんです。知恵がないのは親のせいなんです、これは。だからこんなのいくらやっても駄目なんです。
知識、これは全部お金に替えられるんです。あなたが小学校に入った、誰かがお金を払ってるんです。中学、誰かが払ってる。今日、この講演、誰かがお金払ってる。必ず知識はお金がついてるんです。そして知識が知恵とくっつくと、素晴らしいものになってくるんですね。ひとつ、ひとつだと駄目なんです。ところが知識と知恵がつくと、もの凄い優秀になる。
そして、ここに皆さんの技術です。いろんな運送関係の技術、倉庫関係の技術、いろんなものを含めた技術です。
そして、それに情報、こうやって人より早く青報を取る。そしてチャンスがあれば、情報を取れると利権と暖簾がついてきます。情報には必ず利権と暖簾がつきます。利権とは何だ、JRにものを納められる、運送をやれる、こういう口座を取れる、これが利権です。そしてそれは暖簾とくっつきます。暖簾とは何だ、信用です。あなたの会社の信用力です。それに運があれば、あなたは絶対成功する。
こういうのが当たり前なんです。そうすると、何が一番大事か、知識を得ることです。知識を得るということは金です。自分以上に会社で自分にお金を投資できる人はいるわけがない。社長が一番勉強してるんですから。だから、あなた以下の人しか育たない。もし初めから天才的に優秀な人がいたら、自分でやりますよ、会社を。あなたの会社に使われてない、だからそんな人はいない。だからあまり期待しては駄目です。
それと同じことがお子さんです。自分の子供に跡をつがせようと考えていらっしゃる方いっぱいいると思いますが、子供は劣性遺伝です。殆ど親父のほうが偉いです。期待したら駄目です。期待すると重くてしんどくなりますから、もう子供は劣性遺伝と思って下さい。あまり期待しないで下さい。
学歴、これは賞味期限があることを忘れないで下さい。7年から9年です。高卒でしたら25〜26歳、大卒でしたら30歳までに賞味期限が切れます。「俺のところ、あまり優秀なやつが」なんてと思わないで、みんな同じだと思って下さい。今70〜80歳生きますから、1回どっかで勉強しないとですね、賞味期限切れたままの社長が出来上がってくるんですね。だから、40〜50歳までの間に1回、1〜2年でいいから、70〜80歳まで生きて経営者やりたい人は、1回勉強しないと駄目なんです。無くなってますから、ノウハウが。新しい、全く新しい観点で勉強しなきゃいけない。これがこれから必要なんです。
もしあなたが携帯電話とインターネットと、カーナビゲイションがお使いになれなかったら、すぐ後継者を考えたほうが早いと思いますね。これからいろんな事言ったって無駄です。でも、あなたが能力がないかというと、それは違います。「俺は器用なんだけどな、なんで俺、コンピューター出来ないのかな」それは簡単なことです、あなたが不器用でもなんでもないんです。あなたが生まれたとき、目の前に遊び道具でテレビゲームがなかっただけです。おそろしいです、テレビゲームは。いつの間にか、読み書き、そろばん、リテラシー(literacy)です。自転車とか、そろばんと同じで、小さいときにやってないと駄目なんですね。だから出来ないの、当たり前なんです。今だって自転車乗れない人、急にやったら転びますよ。
|