アメリカに商業銀行というのがあります、日本の銀行と全く違ってですね、アメリカではリテール(個人銀行)と商業銀行とあります。商業銀行というのは、よく中国とか台湾とか行かれますと○○商業銀行とか名前を書いてあるのがそうなんですが、あれは預金を受け付けないんですね。預金は他の人から貰ってきて、ただ貸し付けだけをするのを商業銀行といいます。あれと同じように生命保険は多大なお金をもって30年、40年のですね、預り金をいただいて、それで運用だけをしていればいいわけですから、これは良い仕事ですよね。
それがみんな、おかしくなってるんです。なんでおかしくなるんですか、そんな良い仕事してる人が。これは我々、真面目に運送業やったり、倉庫業やったりする人からみれば、なんか変ですよ。なんという業界なんだと。それでこれが不思議なことにですね、毎年決まって今ごろになると必ず、銀行は不良債権はもうほとんどありませんと言うんです。発表するんです、この3月末決算に向かって。それが6、7月頃から9月になると来期の不良債権はと、山ほど出てくるんですね、また。今年はもうないと言ったんですね。終わりましたと言って、気がついたときにはですね、また来年になって増えるんです。これが不思議ですね。
だから最初に銀行がおかしくなった時にですね、日本はどれくらい不良債権があるといったら、銀行協会、20兆円と言った。そうしたら、アメリカのニューヨークタイムズとかみんな、笑っちゃったですね。なにを馬鹿なことを言ってんだってね。20兆円であるわけないじゃないかと。なんてことない、去年で74兆円も不良債権で、新たにまた140兆円。何なんですか、これ。何時になったら終わるの。これがまったく、我々、中小企業の社長にとってはわからない。どういうシステムになってるのか、これは。何を考えてるのか。
それでですよ、皆さんががんばってお仕事して一生懸命預金して、集めたお金でようやく何とか従業員を食わせ、家族を食わせ、みんな生活させて、やっと少し貯めたわずかなお金、今年の4月1日からペイオフでなくなるって言うんです、1千万円以上。普通預金と当座預金は来年までやると言っていますが。要するに基本的になくなる。何で俺が一生懸命仕事した金を預金したのに、銀行の不都合によって、なぜ俺が金をなくさなけりゃいけないの。なんなの、これは。
こういうのがね、みんな日本中満ち満ちてるんですよ。去年の11月から金融庁が、ばっと銀行に特別検査に入った。そしたら瞬間に、ばばばっと倒産していく。あっという間に青木建設が倒産。それで小泉さんが何と言ったか、「不良債権処理は順調に進んでる」と言っちゃった。言った瞬間に大騒ぎだ、これ。官邸に電話が鳴り止まない。「何、考えてんだ」というんでですね。1月15日、昨日、ダイエーが本当は引く予定だったのがですね、「あのう書類、1月15日までにちゃんとしてくれ」という予定でやってたらですね、急遽トーンが落ちちゃって、「銀行みんなで出しあいましょう、がんばりましょう」なんて、なっちゃってですね。ということは小泉さん、これ、ちょっとトーンが落ちちゃったのね。また不良債権処理が伸びるのかなと。こういうのがですね、後に待ってるわけですね。
まず、こういう状態。そこへもってきて、デフレ。皆さん、今社長やってる人は大変なんですよ。今から20年前に、もしあなたが社長をお父さんから継いだらですね、お父さんの時代は良かったですよ、ただ働いてりゃよかったんだから。今の社長は大変ですよ、デフレなんてね。これは、「売る人地獄、買う人天国」ですから。デフレはどこから始まるか。簡単、単純なこと、供給と需要のバランスが悪いだけの話です。供給が非常に多い。10年間で我が国の供給がどれ位下がったかというと、16対9。日本の製造がものすごくがんばったんですね。そのために、あっという間に、例えばテレビが9人しか欲しい人いないのに、16台モノ作れるようになっちゃたんですね。これ、どう見たって値段下がるわ。そこへもってきて、中国や東南アジアからどんどん安いのが入ってくる。そらもう、とどめないですね。あっという間に値段が下がってくる。
どういうふうに下がるかというと、デフレは衣・食・住・サービス、こういう順序に落ちてくるんですね。最初は衣料から始まるんですね。だからユニクロとかね、しまむらとか1万5千円だったフリースを1900円で売り出した。あっという間にダイエーとか、イトーヨーカ堂とかが1千円で始めてですね、あっという間に9800円の背広が出来ちゃったりですね。
次は食です。マクドナルド、吉野家の牛丼、ばばばばっと値段、下げ始めた。あっという間にデパ地下、デパートの地下の食料品の売り場の値段はぴゅーと下がっていった。
それから住居です。1坪、建築費が60万円かかってた家が、今、25万円でやると。そうすると殖産住宅やっていけない。無理だ、うちは80万円だから。あっという間に倒産だ。
衣・食・住、その次皆さんの業界含めたサービス、ここに移動してきます。何でか、価格が下がる、どんどん下がるんですね。今度は価格競争に陥ってくる。サービス業は、対抗するには、基本的には価格しかないところに弱さがあるんですね。価格がどーっと落ちてくる。
そうすると次に行くのが、資産、不動産ですね。土地建物が資産が下がる。私、今、東京の成城の近くに住んでいるんですが、私の近くに去年ですね、坪158万円で家を買った方いらっしゃるんです。それが今、今年138万円で隣の家が売れているんです。あっという間に1年間で20万円下がっていっちゃったですね。
そうすると何がまずいか。土地下がっても、売らなきゃどうってことない、また、上がればいいんです。何が悪い。我々は銀行から金を借りて担保に入れてる。保証能力が著しく低下する。我が国は担保主義で、キャッシュフローを担保にしているわけじゃないんです。全部、土地建物を担保にお金を借りているんです。だから担保主義です、徹底した。だから担保が下がると資金繰りが強烈に悪化してくる。貸し渋りに合うんですね。そうすると、今度はお金が借りられなくなるから、また会社が苦しくなる。そして場合によっては倒産とか、こういう状態に続いてくるわけですね。
だからデフレというのは怖い。だから何とかしようというんで、デフレを解消するには、日銀がお金を大量発行するしかない。ところが皆さん、今日2千円札お持ちの方、何人いらっしゃいますか。今、財布の中で2千円札入ってる方。あまりいないと思うんです。どこ行ったんですか、2千円札。ほとんど流通されてないんですね、あのお金。ところが日銀発行券数みるとね、ものすごく出てるんです。で、どうしたんだ。日銀が銀行に渡して、市中銀行から皆さんの所に行って、消費者のところに行って、また日銀に戻ってくるという、このリズムが狂ってるんじゃないの。これが今の皆さんの会社の経営と同じです。どこか、お金が詰まってるんじゃないか。流れてきている途中でピタッと、お金がどこかで流れなくなった。どこかで線が細くなったか、パイプが細くなったか、何かが起きてる。これが今の日本経済をまったく言い表している実態ですね。こういうのをですね、まず我々が認識しなくてはいけない。
それから倒産、破産。それから失業、自殺ですね。暗い話ですね。
倒産、これはですね、今年おそらく帝国データが、1万9千件か2万件の戦後4番目とか3番目の悪い数字を出すでしょう。そして今年2月、3月危機、なぜそんなこと言われるのか。これはですね、簡単です。皆さんのお金がいつのまにか公的資金、プロパー資金、○○銀行のお金じゃなくて公的資金にスイッチされてしまった。昔、保証協会なんて名前知ってる人はほとんどいなかった。今、経営者はみんな知ってます。保証協会資金をみんな受けてるんです。そしてその保証協会が28兆7千億円、約29兆円、皆さんにプレゼントしている。どれ位プレゼントされたかというと、借りた人、おおよそ70万社。日本の業者で法人登録しているのは、おおよそ240万社といわれていますが、実際生きてるのは180万社くらいしかないんです。そうすると、ここのうちの8割から9割の方が、あの特別保証を利用した。そしてわかったことは、おおよそ100万社が貸し渋りにあった。
わかりやすく言うと、貸し渋りにあったということは銀行のプロパー資金から、国の公的資金にスイッチングされたよということです。あなたの家のお金がいつの間にか、パカッと変えられちゃったんです。あっという間に公的資金が多くなってきてですね、それでここの保証協会がすでに3.85くらいまで来ている、デフレにデフォルトされて倒産しそうなのは。そうするとこれがどの位いくんですかと保証協会に聞くと、大阪府なんかは9.9ですよ、もう。1割がパーだ、大阪府が貸したやつも。福岡県をみたら3.5くらいでしたね、もう、昨年で。ということは、これからどんどん増える。この計算でいくと7〜8%をそれにかけると、おおよそ12万社から15万社が消えていっちゃうんですね。これは大変なことですね。
これは大変なことだ、放置しとくわけにいかないというんで、皆さん、お使いになりましたか、1月から始まりました、売掛債権特別保証、1億円まで。今度はあなたの会社の売掛債権を保証協会が面倒を見て、1億円までなら融資しますよという。これに今東京なんかは殺到している。知らない人が多いと思う。なぜなら、なぜかこれはPRしない。ただ、銀行からお金を借りる時、「社長、取引先の売上の表、ちょっとありませんか」と言われたら、みんなそれです。その協会資金を回します。これからおそらく皆さんが、ご相談されると、銀行が必ずそういうこと言ってきます。これがその特別保証です。
これは私は非常に良い制度だと思う。これはアメリカでは当たり前のファクタリング事業なんですね。そごうとか、スーパーの長崎屋とかですね、ああいうのみんな、ファクタリングさえあれば、倒産しなかったのが多いんですよ。これはファクタリングの日本版なんですね。アメリカのファクタリングとちょっと違うのは、アメリカはファクタリング会社が相手の金を全部回収しちゃうんですけれども、今回はそれをやらないで、一旦あなたの会社にお金が入ってしまうんですね。その日に銀行が手形貸し付けの決済日にするという、そういうやり方なんですね。そこがちょっと違うんですが。まあ、良い制度だと思いますよ、これは。うまく利用されると非常に良いと思います。これは2月、3月対策です。要するに倒産をさせないために、何とかしようということで始まった政策なんですね。
そして失業です。もう5.4%です。簡単に5.4%とかなんとか言いますが、お隣の韓国は6%で国、パーになりましたからね。昔から7%を越えたら共産革命が起きると言われてますから、もう寸前まできてるんですね。特に問題になってるのが、実は若手、高校卒とか、大卒の方達が就職できなくなってきている。これが非常にいろんな社会のいびつな問題を引き起こしますね。
これが今起きていることです。これは良い悪いじゃなく、今起きていることです。そして皆さんの業界で今何が起きているかというと、一言で話せといえば環境圧縮、価格破壊、これが起きています。規制緩和と価格の競争、これによって利益がぐっと下がった。こういうのが今の実態です。
じゃあ今自分を取り巻いている環境からみて何をしなきゃいけないの、ということになってくるわけですね。まずですね、何でこの業界がこんなになっちゃったのかということを、我々がまずひとつ認識をしとかないといけないと思うんです。
それはですね、日本という国はすごくいい国でした。アメリカの1980年レポート見てましてもですね、日本は素晴らしい国だと書いてある。その中で中小企業がものすごく偉大であると書いてあるんですね。私は何のことだか、全然わかりませんでした。なんで中小企業が偉大なのかもわかりませんでした。
私、去年の11月にロンドン証券取引所に上場している会社の、イギリスの会杜ですが、そこの監査役になりました。日本人で私一人しかいないんですけど。私はそこの会社の株主総会と取締役会に初めて出た。びっくりしましたね。これはね、日本人にはね、駄目だなと思いましたね。まずその会社は従業員が35名しかいない。売上高が70億円位しかない会社なんです。それでも上場してから70年も経ってるんですね。
要するにアメリカやヨーロッパでは、アメリカのデータでは4百何万社あるんですね、登録されているのが。そのうちの90%が一人会社なんです。コンピューター、ITではSOHO(Small Office Home Office)といいます。早い話が一人でやってるということです。9割が1人ですよ。途中がない。大企業か一人かというんですよ。こんなに極端なんですね。それがイギリスなんかでも全く同じなんですね。中途の会社がほとんどないんですね。中途の会社はほとんど上場するんですよ、当たり前みたいに。皆さんの会社で30人、40人いらっしゃる会社はいっぱいあるでしょ。それが上場してるんです、みんな。それが当たり前なんですね。会社というものはそういうものだと、そうでなかったら一人でやれという発想なんですね。
要するに、企業にするか、家業にするかです。あなたが会社名を株式会社と名乗った人はアワカンパニー(our company)、我々の会社。有限会社を名乗った人はマイカンパニー(my company)私の会社、私一代で終わりです。息子や娘や誰かには継がせません、という方は有限会社をやったほうがいいですよ。メリットありますよ。そしてもしあなたがずっと継続してやっていきたい、営々としてやっていきたいというのであれば、アワカンパニー、我々の会社、株式会社にしたほうがいいですよ。なぜならお財布がいっぱいあるんです。あなたが発行できるいろんなメリットがあるんです。増資、社債、私募債、ワラント債、CB債、何でもやれる。これができるのは株式会社だけなんです。
皆さんが銀行から金を借りるのを間接金融というんですが、こういうのを直接金融というんですね。戦前の社長、例えば昭和10年にここに集まってた社長さんと、今日集まった社長さんの、同じ業界で最も違うことは何か。それは皆さんの資本構成が全然違うことです。戦前は75%を直接金融でやってたんです。ヨーロッパやアメリカと同じなんです。いつの間にか、我が国は戦後、90%、間接経営に変ったんです。銀行依存になったんです、全部。
ご興味のある方は自分の会社の決算書を見てください。じっと決算書を見てください。特に決算書はバランスシート、損益貸借対照表と損益計算書というのがあります。皆さんが大好きなのは損益計算書です。これはなんでかというと、何ぼ1年間売り上げて、何ぼ儲かったんやと、これを表しているのが損益計算書です。でも銀行やその他のものが、みんな気をつけて見ているのは、損益計算書ではないです。貸借対照表を見ています。なぜなら、ここは100%あなたの性格をあらわしています。これは会社の社長の体質がにじんでいます。損益計算書には出てきませんが、貸借対照表には一発で出てきます。
その貸借対照表の中に総資本に対して自己資本が1千万円。総資本が例えば1億円、資本金1千万円、残り9千万円。何だ、この会社。初めから資本金が全くなかった会社、銭のなかった会社なんです。会社やっちゃいけないんです、こういう会社は。初めから無茶なんです。全部銀行に依存したんです、あなたの替わりに銀行が資本金を貸してたんです、全部。それに気がつかないんです。だから今銀行はあなたに貸してる資本金、あなたから取り上げます。そのかわり、「あなた株式会社なんだから、増資して、誰かにお金を入れて貰いなさいよ」ということを言っているんです。それに気がついた人は、どんどん移動してますよ。
私募債、皆さんご存知ですか。5億円までOKです。福岡県の保証協会は保証するんですよ、皆さんの会社を。なぜ利用しないんですか。これ使えば会社、閉鎖しなくていいんですよ。5年、7年で1年間一括金で払えばいいんですから、償還まで。ちゃんと県が国が面倒みてあげてるじゃないですか、なぜ利用しないんですか。頭のいい奴はどんどん利用してますよ。どんどん入ってくるじゃないですか。銀行からの借り入れ損高がどんどん少なくなってくる。そういうのが何にも不思議じゃない、変でもないというのが、実は今の異常状態なんです。
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