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Lecture
 
新春物流講演会
激動の時代をどう生き抜くか
勝ち組企業の条件
(有)TSKプランニング 経営コンサルタント
立川 昭吾 氏
 
日時・・・ 平成14年1月16日
場所・・・ ホテルセントラーザ博多
主催・・・ (財)九州運輸振興センター
(社)福岡県トラック協会
 
 ただ今ご紹介受けました立川と申します。多分私の名前はここにいらっしゃる方のほとんどが知らないと思うんですね。たまに知っていらっしゃる方ですと、よく倒産というとなぜか私の顔がテレビに出てくるんで、「ああ、そういえばあの人、そごうの倒産の時いたね」とかね、そういう方が多いと思うんです。実は日本に企業をコンサルしている経営コンサルタントというのは、かなりの数いると思うんですね。その中で、私がユニークなのはですね、日本のコンサルタントで、その方がモデルになった映画が3本も出ているのは、いないんですね。それから、これ、週刊漫画サンデーです。ここに漫画の主人公で、「裁きの銀」というんですが、これが実は私でありまして、漫画の主人公になっちゃったというのも、あんまりいないと思うんですね。
 私は1990年、倒産会社の社長をやりました。要するに会社を整理しました。なぜそうなったかというと、私、37歳の時、会社命令で出向で子会社の社長をやらされた。社長業って何か、よくわからないままに始めちゃったもんですから、このつけはものすごく大きくて、後で私のところへどっしりとのしかかってくるわけです。というのは結局その会社は、親会社の指令で倒産、破産という形で整理させられていったわけです。そのときの責任者が私でした。
 皆さんがもし会社が危うくなったら誰に相談されますか。最初は税理士さん、それから、今度は弁護士さんという順序でいくのが普通だと思うんです。私もそうだったんですね。ところが税理士さんは、儲かった会社しか用がないんですね。彼らは悪くなった会社に対するノウハウは全然ないんです。税務署の財務諸表だとか、ああいうのには一切ないです、そういうのは。そうすると教えられないんです。なぜ教えられないかというと、今、私が全国の税理士会を24ブロックに分けて講演して歩いているからですね。税理士先生を集めて、どうしたらいいのかということをですね、なかだしの方法、きりだしの方法とか再生術を今、教えてるんですから、全然駄目ですね。
 それで、次にですね、弁護士先生。実は会社の社長にとって、弁護士さんはお寺のお坊さんです。最後の戒名を書いてくれるんですね。だから、皆さんがご相談に行くと言われます、「はい、破産しなさい」「先生、どうしたらいいでしょうか」「破産しなさい」ちょっと良い先生ですと、「民事再生法にもっていきますか」と言われますね。もう、ポクポクポクポクのこれですね。後はみんな、戒名を書いてくれて、「はい、さようなら」清算決議で「はい、さようなら」、このノウハウしかないんです。日本で弁護士さん、1万7千人いますけど、本当に再生をきちっと出来る弁護士先生というのは、10人くらいしかいない。後はほとんどが、ポクポクポクですね。ですから、皆さんご相談に行くと「破産」と言われる。私も行ったら、破産となっちゃったんですね。当時何にも知らないからですね、「ああ、そうか、その方がいいんだ」と思いましてね。本当にOKしちゃったらですね、自分の人生は一遍に変っちゃたんですね。知識がないのは地獄へ行くんです。だから、地獄に行った私が帰り咲いてきたんでですね、皆さんにテクニックというのは可笑しいんですが、それを生々でお話しいたします。
 私は大学時代の友人に、「僕の会社、困ってるんだけれど、誰に相談したらいいかね」と言ったら、私の会社は東京の新宿の歌舞伎町の近くにあったんですが、そこに、歌舞伎町に行けと言うんです。「歌舞伎町に行ってどうするんだ」と言ったら、「そこには専門家がいっぱいいる」というんです。「何で歌舞伎町にはそんなのがいるんだ」と聞いたら、あそこには悪の3悪人といって、事件屋、パクリ屋、整理屋と3点セットいるんですね。これが皆、絵を描いてくれるんですよ。「こいつらの所に面白いから行ってみたらどうだ」と、紹介で。そしたら菱形のマークをしている所へお連れ願ったんですけどね。そしたらそこはね、聞いてるとすごいんですよね、手形をどうやって取るかとか、家をどうやって取っちゃうかとか、会社をどうやってパクってしまうとかね。そんなのばっかり話してるんです。まだ若い人多いんですよね、30才位の人から、上のほうで60才位なんですよ。それがね、ものすごく詳しいんですよ、みんな。こんなに詳しいならね、この人達、悪い事やらないで、良い事したらすばらしいじゃないかと思ったんですね。
 それで、後で段々わかってきた事は、彼らは社長を助けるような雰囲気でいて、全部会社をとってしまうんですね。自分の財産をみんな取られちゃう。それを後からじーっと見ていましてね、「あー、これは凄いんだ」と、その時に初めてフッと気がついた。「あれ、日本はおかしいじゃないか。会社が危うくなった時に、なんでヤクザがでてくるんだ。ちゃんとした人が何で相談されないんだ。そういう機関が何で日本にないんだ。」そこで私が、自分の会社を辞めた時に、そういうものを日本でやろうと思ったんです。で、これのモデルはないだろうかと、調べたら日本では無いんですね。アメリカではあるんですね。アメリカには商務弁護士制度というのがありまして、これを専門にやってるんですね。アメリカにはちゃんとしたこういう機関があるんだと、日本にはないんだということですね。
 
 
 じゃあ、日本でそれを少しやろうと思って、平成3年頃にスタートしたんですが、こんな会社ですので誰も来ないんですよね、変な会社ですから。たまに来ますとね、アパートの家賃溜まってる人がいるから、追い出してくれとか、手形を見てね、これがまともな手形かどうか、見てくれとか。
 その次にですね、サラリーマンの方が多かったですね。サラ金地獄ですね。サラ金でお金を借りたけど、返せない、どうしたらいいかと私の所に相談にくるんです。私も弁護士じゃないんで、法律的な自己破産しろというと、お金にならないんですね。それま弁護士さんの仕事で、私の仕事じゃないんです。私は何を教えたかというと、実は夜逃げを教えたんですね。
 日本でですね、夜逃げに一番詳しいのは私なんです。夜逃げ研究家なんですね。それで、夜逃げというとがらが悪いもんですから、名前を変えたんですね。何て名前にしたかというと、ミッドナイトラン研究会というのを作りましてですね、それで始めたんですね。そうしたらですね、お客さんが来るんですね。皆さん、笑ってますが、本当に来るんですね。そしてやってる中にですね、私の友達でテレビのディレクターがいまして、それが遊びに来て、「お前、何をやってんだ」「夜逃げを教えてるんだ」と言ったらですね、「なんちゅうことを教えてるんだ。ちょっとお前、見せろ」しょうがないから、やってるところ見せましたらね、彼が「これ、面白いな。映画になるぞ、これ」「なるわけないじゃないか」「いや、なる」と言うんです。それで「お前、そのままやってろ、俺、脇で脚本書くから」と言うんですね。しょうがないからやってましたらね、1年後になんと私が、東宝で映画化されまして、名前が中村雅俊になりましてですね、それで出来てきた映画の名前が「夜逃げ屋本舗」というんですね、これ去年テレビでもやってましたが。あのモデルが私なんですね。
 その時初めてですね、普通のお客さんがいらっしゃるようになってきた。そこでバブルがはじけましてね、どんどんいらっしゃるようになった。その時に私がはっと思ったのは、日本の社長さんはみんな家族を巻き込んでるんですね。それは中小企業の社長さんが銀行からお金を借りると、なぜか、連帯保証するんです。当たり前のように、皆さん今日きてらっしゃる方、連帯保証してるんです。世界で連帯保証して金惜りる株式会社なんてのはありえないですよ。だったら何のために有限責任になったんですか。法人いらないじゃない、そうなったら。みんな無限責任にすればいいじゃないですか。それがいつのまにか、なっちゃたんです、日本だけは。これ、海外の人に話をすると、びっくりしますね。「えっ、株式会社でしょ、有限会社でしょ、法人でしょ。何で個人が保証するの、気違いじゃないの。会社っていうのは必ず駄目になるんだよ。会社っていうのは永久にはないよ。それなのになんでそんなことするの」外国の人にいくら説明してもわからない。なぜなら日本だけにしかない特殊な株式会社であり、特殊な有限会社だからですね。
 こういうのを、私はまったく知りませんでした。例えばですね、手形法では本当に3時が不渡りですか。考えたことありますか。自分の所の手形小切手きってですね、本当の不渡り時間って何時ですか。おわかりになる方いらっしゃいますか、正式な時間。3時過ぎてもですね、銀行の後ろの入り口から回ってくるとお金、ちゃんとやってくれますよ。次の日の朝、9時半とか、してくれますよ。なんなんですか、本当の時間は何時でしょう。本当の時間、手形交換法でちゃんと決まってる。翌朝の午前11時。どうしてこんなの教えないんですか、手形小切手もらってる人に。とても大事なことですよ。金融機関はなぜお話しないんですか。
 お金借りたら返せなくなることがあります、長い長期のものなんか。人生いろいろあります、山も谷もあります。良い事ばっかりじゃないですから。だけど、あなたがもしお金を、何らかの形で今月、来月払えなくなったら、再来月は、その次は払えるかもしれない。そうした時、あなたの借りた金融債権はいつが正式に不良債権になるんでしょう。お金借りた時は契約は相互扶助ですから、フィフティ・フィフティでなきゃいけないはずなのに、なぜか教えない。何で教えないんでしょう。都合が悪いからでしょうか。そんな事ないですよね、教えたってどうということはない。難しいことじゃない、なぜならば6ヶ月間、金利1回だけ払ったら成立する。これ、実際実行している、みんな。どんな奴がやっているかというと不動産業、建築業。みんな、これをやって助かってきた。普通の人がやったらがんがん言われますね。なんなんですか、この差は。
 こういうことを当時私は何にも知らなかった。だから、私は無知というのがものすごく怖い。それで社長業をもう一回やり直そうと思いましてですね、もう一回勉強しなおしたんですね。そして段々わかってきたんですね。日本の中小企業の社長は、結構何にも知らないんだよねということがわかってきたんですね。それで社長、やってる。怖いね、これ。景気のいい時はいいですよね、右肩上がってる時は。今みたいに下がって来たらどうなります、どうやって対抗していきますか。これがどこまでがモラルハザードで、どこまでが違うのか、境なのか、行為なのか、その見極め、これがものすごく難しいですね。ここが知識があるかどうかの、天地の差になってきます。
 私が何をお話したいかというと、今何が起きてるのということをまず、頭の中で整理をしといてほしいんですね。学者じゃありませんから、我々経営者ですからそんな難しいことを考えなくていい。ただ、起きてる事を単語だけでもいいから頭の中にぱちゃっと入れといて欲しい。そうしないと次のことからわからなくなります。
 今起きていることは構造改革。日本は、日本株式会社は破綻かというところまで来ているわけですから、構造改革ですね。もうひとつは不良債権処理、デフレ経済、大倒産、大失業、これが今のキーワードですね。これだけがまず起きてるんだと、良い悪いは別として起きてるんだということです。自分の会社を見るときは、まず飛行機の上から大森林地帯を見るみたいに、この山やこの公園はどうなっているかということをまず把握して欲しいんですね。それからだんだんミクロで自分のところに行かないと、わからなくなるんですね。どっちの方向にこれが動いているのか、わからなくなるので、まずこのことをきちっと抑えて欲しい。
 そして、我々にとって一番大事なことは金融機関なんですね、これのモラトリアムというのは不良債権処理ですね。銀行の経営者を、同じ経営者として、聞いてても、見ててもですね、非常におかしい。私は自分の趣味で、どの業種の経営をやったら一番会社経営って難しいのかなということをいろいろ調べました。そしたらですね、一番簡単なのがですね、銀行の頭取と生命保険の社長、あとは焼鳥屋と古本屋。これ、出来なかったら、あなた、経営者として駄目だね。みんな、元手、ただみたいなものですわ。
 なぜ銀行が簡単かというと、銀行は、お客さんから預かったお金、これの大体2倍近いお金を日本銀行から借りられるんですね、それを担保に。だからお金はいつもあるんです、いっぱい。仕入れに困らない。貸し付け先だけをさがして来て、まわしとけば、その利幅で必ず取れるようになってるんですね。これが金融システムなんです。
 生命保険は、あれは預金ですよね。あれはどう見ても銀行ですわ。一度契約したら、2万円なら2万円、ずっと死ぬまで預金してくれるんですね。途中で解約ないですわ、死んでくれない限り。これはですね、銀行経営してるのと同じです。
 







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