イラクの首都バグダッドに向け進撃を続ける米英軍はバグダッドへの距離を一段と縮めた。首都攻防戦を前にイラク側は激しい抵抗をみせており、緊迫の度合いはさらに強まっている。
そうした中、国連主導によるイラク復興支援を目指す動きがでてきた。米国をはじめフランスやドイツも同調する姿勢をみせており、日米同盟とともに国際協調を掲げる日本政府としても環境整備に向けたあらゆる外交的努力を行う必要がある。
国際紛争に伴う過去の自衛隊派遣は、国連決議や国連平和維持活動(PKO)協力法などに基づいて行われてきた。だが、今回フセイン政権が崩壊すれば米英軍が暫定統治するとみられ、紛争当事者の停戦合意などを必要とするPKO協力法の参加五原則を満たさない可能性が大きい。このため自衛隊派遣には新たな根拠法が必要で、政府与党は「イラク復興支援法案」(仮称)の制定を目指している。
新法が成立すれば、自衛隊派遣により(1)駐留軍への物資輸送や補給(2)イラク国内の道路・橋梁、水道などのインフラ整備(3)大量破壊兵器の廃棄(4)周辺国への難民支援物資輸送、医療チームの派遣−などに従事させる考えだ。
ただ、政府・与党は新法制定には復興支援に関する国連安保理の決議を前提条件とする基本方針を決めている。一方、国連決議については、米仏などの間に主導権をめぐって思惑の差があるとみられ、採択されるかどうかは不透明な情勢だ。
日本は湾岸戦争の際、戦争終了後に浮遊機雷除去のために掃海艇を派遣し一定の評価を得たものの、「金だけの支援」と批判された。その教訓を踏まえ、自衛隊派遣のための新法の前提となる安保理での新決議採択に向けて全力で取り組むべきだ。
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