2003/05/02 読売新聞朝刊
[社説]小泉首相訪欧 「米欧亀裂」踏まえた対応が必要だ
小泉首相にとって、イラク戦争で生じた米国と仏独両国の亀裂の深さを、再認識させられた旅だった。
欧州を歴訪中の首相は、英仏独スペイン四か国の各首脳と会談し、戦後復興に向け国際協調が重要との認識では一致した。だが、国連がどう関与するのかという点では、各国の思惑の違いが浮き彫りになった。
首相は、こうした厳しい国際政治の現実を踏まえ、米国主導で進む復興への協力を前提に、日本の対応を早急に詰めなければならない。
今回の訪欧は、イラクの戦後復興における国連の役割を探り、できることなら米国と仏独両国の橋渡しをしたい、というところに狙いがあった。しかし、会談の結果は、首相の意図とは大きく食い違うものとなった。
国連の役割について、シラク仏大統領は「国際的秩序の中核」と強調、シュレーダー独首相も「復興は国連主導が望ましい」と主張した。いずれも米国主導の戦後復興を牽制(けんせい)したものだ。
一方、ブレア英首相は、復興に関する国連決議は、緊急性の高い分野から積み上げていくのが望ましく、国連の包括的な関与を認める決議は困難、との見方を示した。
小泉首相は、今月下旬にも、ブッシュ米大統領と会談し、国際協調体制の再構築を求める考えだ。
しかし、既に復興で主導的役割を担っている米国が、仏独両国の主張するように、国連が「中核」となったり「主導」する復興に乗らないことも明らかだ。一口に国際協調と言っても、米国と仏独両国の言う意味合いは全く異なる。
そうした厳しい現実を踏まえ、日本が考えるべきことは、復興協力でどういう役割を果たしていくか、だ。
イラク復興は、予想を上回るスピードで進展している。
ブッシュ大統領はきょう、戦闘終結を宣言し、復興への動きを加速させる。イラク暫定行政機構(IIA)の準備会合は、イラク人主体の暫定政権を、今後四週間以内に発足させることで、既に合意している。
日本に期待されているのは、インフラ整備や医療、輸送などの面だ。その中核となる能力を持つのは自衛隊である。
早急に、自衛隊を派遣するための新法づくりに着手すべきだ。国連決議がなければ何もできないという硬直的対応に固執してはならない。
日本はイラク戦争で米国を支持した。復興においても積極的に協力していくことが、日本の責任である。
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