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2003/05/02 毎日新聞夕刊
イラク戦争 米大統領、戦闘終結を宣言「対テロ決定的前進」−−開戦から6週間
◇民主化移行には時間
 【ワシントン中島哲夫】ブッシュ米大統領は米東部夏時間1日夜(日本時間2日午前)、カリフォルニア州沖を航行中の空母エイブラハム・リンカーン艦上から全米に向けて演説し、イラク戦争開戦から6週間で、大規模な戦闘作戦の終結と「戦闘での勝利」を宣言した。開戦の大義名分とした大量破壊兵器が発見されないことなどから「終戦宣言」は出来なかったが、意識的に戦時局面を一段落させ、次期大統領選を視野に入れた内政重視路線に軸足を移そうという狙いとみられる。(3面、社会面に関連記事)
 空母リンカーンはペルシャ湾でのイラク攻撃任務を終え、帰国途中。ブッシュ大統領は空母が向かっている同州サンディエゴから艦上対潜機で沖合まで飛び、同艦に降り立った。
 ブッシュ大統領は演説で、イラクでの戦闘の目的は「自由の大義と世界平和」だったと述べ、大量破壊兵器については「我々は隠された生物・化学兵器の捜索を始めており、数百カ所が調査対象となる」などと簡単に触れるにとどめた。
 またイラク戦争を、01年9月の米同時多発テロを受けた「テロとの戦争」の一環と強調し、「イラク解放は対テロ作戦における決定的な前進だ」と評価した。
 同時に、戦闘部隊を派遣した英国、オーストラリア、ポーランドの国名を挙げ、謝意を表明した。また、「独裁政権から民主主義への移行には時間がかかるだろうが、それは努力に値する。わが連合は、仕事を終えるまで(イラクに)とどまる」と明言した。
■解説
◇戦争正当化に自信
 ブッシュ米大統領の1日の演説の最大の特徴は、イラクでの戦闘の「勝利宣言」であって、「終戦宣言」ではない点にある。
 開戦前、ブッシュ大統領はイラクの「武装解除」の必要性を力説したが、フセイン政権が消滅した今も大量破壊兵器は見つからない。これでは「戦争目的を達成した」と公式宣言できない。
 そこで1日の演説では大量破壊兵器以外の側面を強調した。イラクが01年9月の米同時多発テロに関与した証拠がないにもかかわらず、大統領は、イラクでの軍事的勝利を「テロとの戦争」の「決定的な前進」だと意義付けた。
 また、イラク国民がフセイン政権の圧制から「解放された」意義も強調した。大統領はバグダッド陥落直後の4月11日、イラク戦争にはイラク国民の解放と大量破壊兵器の除去という二つの目的があると明言していた。
 しかし、今回の演説では、「解放」の意味を広げ、フセイン政権が消滅しただけでは真の解放とは言えないという立場を示す発言もした。「民主主義への移行」を実現するまで米英軍はイラクにとどまるという部分だ。
 ブッシュ政権は、イラクを手始めに米国主導の「民主主義的秩序」を中東全域へと広げようという狙いを露骨なほどに示してきた。大統領の演説は、その狙いを改めて示唆し、どんな批判を浴びようとイラク戦争を正当化できる自信も示したといえる。
(中島哲夫)
◇演説の骨子◇
一、 イラクでの主要な戦闘は終結した
一、 我々は自由の大義と世界平和のため戦った
一、 イラクにはまだ困難な任務が残っている
一、 旧体制の指導者を捕らえ、処罰する
一、 隠匿されている化学・生物兵器の捜索が行われる
一、 イラクの人々による、人々のための政府樹立を支援する
一、 アフガニスタンとイラクの自由および平和的なパレスチナ建設に全力をあげる
一、 イラク解放は反テロ作戦の決定的な前進だ
一、 テロとの戦いは終わっていないが、流れは変わった
一、 米国民へのテロに関与するものは、米国の敵であり、目標である
 
 ■写真説明
 空母リンカーン艦上で演説するブッシュ大統領=AP
 
 
 
 
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