テロリストに渡る前にイラクの大量破壊兵器をたたくという米のシナリオに乗った政府だが、開戦後、米国は「フセイン政権打倒」の方に力点を置いた。一方、日本の本音もイラクよりむしろ北朝鮮の大量破壊兵器の脅威だったことが鮮明になった。終結宣言を歓迎する政府の対応からは、この戦争の「大義」が日本にとっても様変わりしたことがうかがえる。
フセイン像が引き倒される前日の4月8日、小泉首相は「(大量破壊兵器は)ま、いずれ見つかると思います」と淡々と語ったが、既にこのころから日本は復興に向け走り出し、戦争支持の正当性は置き去りにされた。終結宣言の2日、茂木敏充副外相は記者団に「大量破壊兵器の捜索は始まったばかりだ。イラクに大量破壊兵器がある疑いは濃く、今後も注視していきたい」と強調。政府関係者も「米軍は農園など大量破壊兵器の隠し場所を把握している」と自信をのぞかせたが、楽観論の背景にあるとみられる米政府情報の正しさが果たして立証されるかは定かではない。
イラクで米を支持した代わりに、北朝鮮問題では米が日本の立場に配慮してくれる――。政府はこんな展開を描いた。先月下旬の北朝鮮の「核兵器保有」宣言はまさに試金石となるが、核保有発言は逆に、日米両国内で強硬派と柔軟派の綱引きを激化させている。
こうした中、アフガニスタンの対テロ戦争をめぐって防衛庁は1日の日米調整委員会での米側の要請を受け、自衛隊のアラビア海派遣期間を半年延長して11月1日までとすることにした。
ところが同じ1日、ラムズフェルド米国防長官はカブールで対テロ戦の終結を宣言した。防衛庁幹部は「作戦全体が終わるわけではなく状況が劇的に変わることはない」と自衛隊の対米支援を続ける方針だが、イラク戦争もアフガンでの対テロ戦争も、なし崩しの対米追随の懸念をはらむ。
【アテネ前田浩智】小泉純一郎首相は2日午前、イラクでの戦闘終結について「短期で終結してよかった。米英をはじめ連合国に敬意を表したい」と歓迎した。「この戦争にめげず、国づくりに立ち上がるイラク国民の意欲を支援したい」と語った。アテネ市で記者団の質問に答えた。
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