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2003/01/15 毎日新聞朝刊
米のイラク攻撃めぐり、欧州に複雑な動き――自信のフランス、揺れる英国
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 米国が計画するイラク攻撃をめぐり、27日に国連査察団の報告を受ける国連安保理が査察の延長を認めるか、また武力行使容認の新決議が必要かが焦点になってきた。ブレア英首相が微妙な発言を行う一方、シラク仏大統領は平和解決を求め、欧州で複雑な動きが広がっている。
◇世論から厳しい批判−−ブレア首相
 【ロンドン山科武司】13日の記者会見で、対イラク武力行使について「国連の道を歩む」と、国連重視の姿勢を強調した英国のブレア首相だが、国連の新決議の必要性は強調しなかったために、14日の英各紙は「首相は世界に反抗した」などと厳しく批評した。首相は、対イラク強硬姿勢をとる米国との協調路線と、新たな国連決議を求める国内世論の両方をにらみ、真意の解釈が難しい“綱渡り”の発言を続けている。この日の発言もその延長線上にあるが、揺れの幅がいっそう大きくなってきた。
 ブレア首相は13日、武力行使の前に、新たな国連の決議を求める声について「採択されることが英国にとって望ましい」と認めた。その一方で「必要ならば英米だけでの武力行使も辞さない」と米との同盟路線も尊重する意向を表明。国連の新決議抜きで武力行使もありうると言及した。
 国連決議なしの武力行使に、英国内世論は強く反対している。世論調査では国連決議のない攻撃を支持する英国民は1割強にとどまる。
 13日の会見を報じた英各紙でも、こうした世論を背景に「首相は与党内の批判を無視した」(インディペンデント紙)など首相のあいまいな発言への厳しい批判が並んだ。与党・労働党議員の一人はインディペンデント紙に「国際法に反した武力行使は、国民の声を無視している。首相はその座を追われることになるだろう」とまで語った。
 12日付のサンデータイムズ紙は、スエズ動乱の際に、世論の支持なしに出兵に踏み切り失敗、辞職に追い込まれたイーデン内閣の例を引き世論尊重の重要性を訴えた。
◇国際協調優先の立場−−シラク大統領
 【パリ福島良典】フランスのシラク大統領、ドビルパン外相は13日、イラク危機の平和解決を強調、ペルシャ湾岸への部隊増派で対イラク軍事圧力を強める米国の姿勢を暗に批判した。国際世論の平和志向が強まる中、戦争回避を目指すフランスは自信を深めており、米仏間の紛争解決手法の相違が浮き彫りになっている。今月の安保理議長国であるフランスは安保理協議の行方に大きな役割を担いそうだ。
 対イラク戦争を「最悪の解決策」(シラク大統領)とみなすフランスは米国単独の軍事行動をけん制し、国際協調を優先する立場を取っている。国際社会が紛争に共同対処する「集団安全保障」を行動規範とし、軍事介入には新たな安保理決議などの国際法上の正当性が必要だとの考えだ。
 シラク大統領は軍に対して「あらゆる事態に備える」よう要請する一方で、ぎりぎりまで外交努力を継続する和戦両にらみの構えだ。
 大統領は13日の川口順子外相との会談で、「安保理の結束」が維持される条件として「米国が突発的な行動を取らないこと」を挙げ、米国の独走にクギを刺した。また、ドビルパン外相も同日、「安保理では平和的な手法を優先しようという意見が多数だ」と米国の孤立を間接的に指摘した。
 歴史的にアラブ世界とつながりが深いフランスにとって最悪のシナリオは対イラク戦が中東不安定化の呼び水となり、多数のイスラム教徒を抱える国内の社会不安に波及する事態だ。
 
 
 
 
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