3.4. 燃料噴射制御装置の仕様検討、設計、製作
3.4.1 燃料噴射制御装置の仕様
(1)基本仕様
・電源電圧 |
:DC24V |
・制御シリンダ数 |
:Max.18 |
(2)基本性能・機能
・電磁弁駆動制御
・クランク角度検出機能
・噴射タイミング制御
・ガバナ機能(速度制御)
・高圧ポンプ圧力制御機能
・異常診断機能
図5. 燃料噴射システム概要
写真1. 燃料噴射制御装置
3.4.2 燃料噴射制御装置の機能試験、結果
試作した燃料噴射制御装置の機能試験として、電磁弁の動作及びクランク角度の検出機能の確認を行った。なお試験は抵抗値1.2Ωの電磁弁を使用して行った。
(設定条件) |
回転パルス信号 |
・歯数=60歯(1歯の欠落歯形) |
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・周波数=800Hz |
(1)電磁弁動作試験
電磁弁に流れる電流値の設定を、ピーク電流値=12A、保持電流値=8Aとして試験を行った結果を図6に示す。ピーク電流、保持電流ともに設定通りの電流値で制御が出来ており、想定していた電流波形が実現できた。
(2)クランク角度検出機能試験
図6は燃料噴射角度10°の設定で試験を行った結果である。クランク角度は、欠落歯を認識した直後のパルスをクランク角度0°とし、回転パルス間の角度は設定条件から360°/60歯=6°である。試験結果は設定した燃料噴射角度で電磁弁が動作を開始しており、クランク角度の検出を正確に行っていることが確認できる。
(拡大画面:177KB) |
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図6. 試験結果〔燃料噴射角度=10°〕
4. 調査研究の成果
4ストロークディーゼル機関用燃料噴射制御装置の製作を行い、機関のクランク角度を検出して、設定したタイミシグで、設定した時間だけ電磁弁を駆動するという燃料噴射装置にとって最も重要で基本となる機能を実現できたことが、本調査研究の成果である。以下主要な成果についてその詳細を記す。
(1)燃料噴射制御装置としての要件及び必要機能の調査
ユニットタィプやコモンタイプなど各種の燃料噴射系に対応する為に必要となる機能、制御項目が明確になり、燃料噴射制御装置を設計する上で最適な仕様を決定することができた。
(2)電磁弁高速駆動
電磁弁に流れる電流を検知して、ピーク電流や保持電流を制御することの可能性や有効性が確認でき、また電磁弁を高速に駆動できることを確認した。
(3)クランク角度の検出
機関のクランク角度を検出する為のアルゴリズムを適用し、実際に使用できる検出精度が得られることを確認した。
(4)燃料噴射制御装置の設計、製作、試験
燃料噴射制御装置の設計、製作を行い、基本機能を有する試作品を完成させた。また機能試験を行い、設定した任意のクランク角度での電磁弁駆動を確認した。
5. 今後の課題
本調査研究で得られた成果は前項のように、燃料噴射制御装置としての基本機能のみの確認、評価である。これから製品化へと繋げて行く為には以下の内容が今後の課題として挙げられる。
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ガバナ機能や異常診断機能など、その他必要となる機能の実装、及び確認 |
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試作制御装置の実機エンジンによる検証試験の実施 |
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NOx、PM等の有害物質や燃費の低減を可能とする噴射タイミングの実機試験でのデータ収集 |
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