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3.4.2 燃料噴射パターン変更による性能及び排ガスの比較
 図9〜図12は、DME燃料を用い噴射パターンを変更して運転を行った結果である。パターンAは、通常の連続した噴射パターンで噴射時期を若干早めたもの、パターンBは燃料弁のリフトパターンはパターンAと同じであるが、噴射タイミングをクランク角度で約3°遅らせたもの、パターンCはまず最初に短期間の噴射を行い、クランク角度で約5°遅れて主噴射を行う2段噴射、パターンDはパターンCと同じリフトパターンで全体をパターンCより約5°遅らせたものである。
 これらの噴射パターンにおけるシリンダ内圧力は、図10に示されたように、パターンAからパターンDへ徐々に最高圧が低下して行き、パターンCでは、定圧燃焼、いわゆるディーゼルサイクルに近い波形を示すようになる。
 それぞれの噴射パターンにおけるNOX排出量と図示熱効率の関係は図12に示されているが、シリンダ最高圧の低下と共にNOX排出量が少なくなる。しかし、パターンCではNOXの減少に比べ図示熱効率の低下は少なく、パターンAと比較すると、NOX32%減少に対し、図示効率の低下は1.2ポイントの低下(燃費換算では約2.3%の悪化)に納まっている。これは、噴射タイミングリタードによる「NOX20%の削減に対して燃費約3%の悪化」といった一般的傾向に対しては、より優れたNOX削減効果といえる。
 また、パターンDでは、燃費の悪化は約5.8%あるが、NOXの削減率は約50%とかなり大幅な削減効果が得られている。通常の液体燃料では、一般に効率を落とした場合には煙濃度(黒煙)が高くなり、問題が生じる可能性があるが、DMEを用いた場合には、煙濃度は若干増えるものの、絶対量としては液体燃料の1/10程度と全く問題の無いレベルであり、燃費の悪化を許容すれば、単に燃料噴射パターンの調整のみで、約50%のNOX削減が得られる。したがって、環境規制の厳しい特定地域の航行時などには、一時的な処置として容易に対応できる方策となる可能性がある。
 
噴射パターン変更試験
図9 噴射パターンの変更図
 
DME噴射パターン変更試験
図10 シリンダ内圧力の比較
 
DME噴射パターン変更試験
図11 熱発生率の比較
 
NOX及び図示熱効率の比較
図12 NOXと図示熱効率の比較







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