3.4 DME燃料燃焼試験及び解析
3.4.1 軽油運転とDME運転の性能及び排ガスの比較
ここでは、軽油とDMEを用いて燃料噴射タイミング変更試験を行い、両者の性能比較や排ガス組成の比較を行った。図5、図6にそれぞれのシリンダ内圧力波形、図7に図示熱効率とNOX濃度の関係、図8に煙濃度の比較を示す。
図に示す噴射時期BTDC20°、BTDC15°、BTDC10°はピエゾドライバーに噴射司令パルス(TTLレベル)を送ったタイミングである。信号と実際の燃料噴射時期(燃料弁リフト上昇開始時期)にはクランク角度で約5°の遅れがある。機関回転数は420rpm、燃料噴射圧はそれぞれ30MPaである。なお、軽油運転とDME運転では、燃料噴射開始時期はほぼ同じに設定したが、弁閉時期はDME運転の方を遅らせた。これは、軽油運転とDME運転で同じアトマイザーを用いて試験を行い、しかも負荷をほぼ一定にして両者の比較を行うことを意図したためで、燃料の発熱量の違いからDMEの方が噴射期間が長くなった。
シリンダ内圧力の比較では、燃料噴射時期を遅らせるにつれシリンダ最高圧力は低下するが、両者のパターンはほぼ同じ傾向を示す。しかし、軽油運転の方が若干シリンダ内の最高圧が高くなった。これは軽油運転の方がシリンダ内最高圧力に影響を及ぼす初期の熱発生量が多いためである。
次に両者のNOX濃度とシリンダ内圧力から計算した図示熱効率の関係を図7に示す。同じ噴射タイミングで比較した場合には、NOX濃度は、DME運転の方がいずれの噴射タイミングでも軽油運転を上回る結果となった。しかし、同じ効率でNOX濃度を比較した場合には、DME運転の方が軽油運転よりも1〜1.5割程度NOXが低い結果となった。
図8は煙濃度の比較を示す。DME使用時の煙濃度は、軽油使用時の1/10〜1/30程度であり、すすが極度に少ないクリーンな排ガスになる。なお、この煙濃度の測定は、AVL社の可変サンプリングスモークメータ(型番:AVL415S)を用いて自動で行った。
以上のように、DMEの燃焼性能(熱効率)及びNOX排出率は、軽油燃焼に比べ優るとも劣らない性能を有し、特に煙濃度(ばいじん)は桁違いに少なくなることが確認できた。
軽油燃焼試験
図5 シリンダ内圧力(軽油運転)
DME燃焼試験
図6 シリンダ内圧力(DME運転)
図示熱効率とNOX濃度の関係
図7 図示熱効率とNOX濃度の関係
煙濃度の比較
図8 煙濃度(ばいじん)比較
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