日本財団 図書館


3. 漁船冷凍設備向け汎用冷媒R22の代替冷媒R417の能力/運用の調査研究
日新興業(株)
 
1. 調査研究の目的
 現在開発され、一部使用されているオゾン破壊係数がゼロであるHFC冷媒は、既設のR22設備に対して、設計圧力、冷凍機油不適正等の面から、そのまま冷媒のみを置換して現用設備を再利用することが不可能であった。
 ところが、冷媒の置換だけで冷凍機油も含めて冷凍設備をそのまま継続使用可能であるR22の代替冷媒として、HFC冷媒であるR417Aが開発されたが、この冷媒を実際に遠洋鮪延縄漁船等に見られる超低温のR22設備に充填し、R22との性能比較およびR22用既設機器のR417Aに対する性能確認、再調整方法等について報告した公的な技術資料は皆無である。
 冷媒R22の生産量は、2020年には製造全廃となる。現装冷凍装置にそのまま置換できるR22の代替冷媒と目されるR417Aの性能調査、技術的資料の取得は急務であり、これらを実際に調査研究することを目的として実施した。
 
2. 実施経過
2.1 実施項目
(1)417Aの机上計算による圧力/飽和温度等の特性の事前調査分析。
 机上計算による冷媒特性を比較分析を実施した。
(2)冷凍試験設備の改造。
 既存R22用冷凍装置に本テスト実施に必要な改造工事を実施した。
(3)机上計算による圧力/飽和温度等の特性値と実測値とのズレの確認分析。
 圧力変動に対応した冷媒飽和温度の計測し、机上計算値との差を分析調査した。
(4)R22/R417Aの実測能力の比較分析。
 冷凍試験設備で実測した能力と机上資料とを比較分析を実施した。
(5)R22/R417Aの実測COPの比較分析。
 冷凍試験設備の圧縮機冷却実能力及び圧縮機用電動機の軸動力を求め、比較分析を実施した。
(6)R22用温度膨張弁のR417A装置への適応状態の確認と分析。
 安全に冷凍装置を運転できるかの確認を行った。
(7)遠洋まぐろ延縄漁船向け管棚凍結装置を使用しての冷却速度の比較検討。
 冷却速度及び、最終到達凍結室温の比較検証を行った。
(8)R417Aの冷媒リーク前後の組成変化の有無の検証
 リークにより冷媒特性に変化が生じるかを分析検証した。
 
2.2 実施期間
(1)開始 平成14年4月1日
(2)終了 平成15年1月末日
 
2.3 実施場所
日新興業株式会社 開発部 実験室
 
3. 実施内容
3.1 調査研究使用装置の概要
1)コンデンシングユニット
 圧縮機:レシプロ二段圧縮機、法定冷凍能力19.0RT、消費電力45kW
 ※圧縮機オイルはR22にて約390hr使用したオイルをそのまま使用した。
 
2)COP計測装置
冷媒流量計 :R050S1122M
手動膨張弁 :2個
温度式膨張弁 :ATX−34045BHCY
ブライン :3MHFE−7100
ブライン流量計 :BASIS F200SR385SM
ブラインクーラー :BXC−515−PEU−90
ブラインポンプ :MLL4215
ブライン/エアクーラー :6列x16段xEL800 22.6m2
ブラインタンク :φ355.6x847H
ブライン負荷ヒータ :SNH−2330 200V−3P−3KWx4本
 
3)管棚凍結装置
庫内寸法 :2220Wx4850Lx2090H
防熱 :冷凍コンテナ枠+ウレタン発泡防熱t120m/m
凍結FAN :HIX−2 220V60Hz1720rpm1.5kwx2台
天井コイル :32A鋼管ヘアピンコイル 3500Lx12段x125ピッチ x2面
管棚 :アルミ凍結管棚 1200Wx3000Lx通路数16x4枚
電子膨張弁 :AKV10−7x2系統
温度自動膨張弁 :AEX−2342BHZx2系統
 
(拡大画面:81KB)
図1 コンデンシングユニットとCOP計測装置概略系統図
 
(拡大画面:66KB)
図2 コンデンシングユニットと管棚凍結装置概略系統図
 
(拡大画面:50KB)
図3 管棚凍結装置概略系統図
 
3.2 代替冷媒R417Aの机上特性
 冷媒R417AとR22の特性比較は表1の通り。
 
表1 R417A/R22特性比較表
種類 単位 R417A R22
組成   R125/R134a/R600=46.6/50/3.4 CHClF 2
分子量   106.7 86.5
沸点(at latm) −41.8 −40.8
露点(at latm) −36.7 −40.8
蒸気圧(at 25℃) Bar 9.847 10.4
臨界温度 89.9 96
臨界圧力 Bar 42.42 49.9
液体密度(at 25℃) Kg/m3 1152 1194
液体比熱(at 25℃) J/Mol 144.4 121.24
水の溶解度(at 25℃) 0.12 0.15
気化熱(atB.P.T) KJ/kg 203.4 233.1
熱伝導率(液at 25℃) W/m℃ 0.07115 0.0905
ODP   0 0.05
GWP   1950 1700
注:
R417Aは同じ圧力での露点と沸点が異なるため、以下、測定圧力を露点換算した温度を「飽和蒸気温度」、沸点換算した温度を「飽和液温度」と表記した。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION