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3−3−3−3 クラッチ嵌入試験
 電気式の場合クラッチ嵌時の、回転ブーストアップ、燃料ラック抑制シフトアップによる燃料増加及び、クラッチ油圧の最適な上昇パターンによる機関への急激な負荷投入の防止により最低回転344min−1に抑える事ができ、また回転低下量の少ないことは燃料の燃焼にも有効であり、スモークも良好である。
 空気式制御方式は、クラッチ嵌入時257min−1まで回転が落ち込み、燃焼も悪くなってスモークも悪化している。
 
 
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3−3−3−4 エンスト防止機能の確認
 負荷投入時エンストを回避するための機能
 クラッチ嵌入による負荷投入により、機関回転が設定回転以下(300min−1)になると、油圧制御信号を下げることによりクラッチ油圧を下げ、負荷を切り離す。
 機関は負荷が無くなり、回転が復帰(450min−1)すると、再び油圧制御信号を上げ、クラッチ油圧を上げ直結させることができた。
 負荷投入による、機関エンストを防止する機能が確認できた。
 
 
 
3−3−3−5 クラッシュアスタン(危急後進試験)
 前進運転中、急激に操縦ハンドルを後進に操作しても燃料ラックシフトアップ、減速レート、機関回転ブーストアップ、適切なプロペラ遊転回転での後進クラッチの投入、クラッチ油圧の適切な制御、機関回転増速中の適切な燃料抑制により問題無く運転を継続できた。
 
クラッシュアスタン(危急後進)試験
 
 
3−3−3−6 クラッチスリップ(半クラッチ)試験
 機関アイドル回転以下のプロペラ回転を半クラッチ状態で得る事により、接岸時や漁船における洩網、魚群探索等で微速運行が可能となり、操船性の向上を計れる。
 ハンドル操作後のプロペラ回転の応答性、安定性も良好であることを確認できた。
 直結時プロペラ回転数114rpmに対しスリッププロペラ回転37rpm〜101rpm(32%〜89%)の広い範囲での制御が可能であった。
 また、3時間連続運転実施したが、安定性の変化もなく良好で、温度も正常値を保っており、耐久性も確認した。
 分解点検実施結果、クラッチの異常摩耗、変色、変形も無く良好であった。
 
プロペラスリップ
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4. 調査研究の成果
4−1 まとめ
4−1−1 機関起動試験
  空気式 電気式 効果
スモーク発生量 620%・sec 293%・sec 低減率53%
 
4−1−2 加速試験
  空気式 電気式 効果
スモーク発生量 969%・sec 573%・sec 低減率41%
機関回転静定までの時間 13秒 15秒 遜色無し
 
4−1−3 クラッチ嵌入試験
  空気式 電気式 効果
スモーク発生量 329%・sec 43%・sec 低減率87%
機関低下回転量 143min-1 56min-1 低減率61%
 
4−1−4 エンスト防止機能の確認試験とクラッシュアスタン(危急後進)試験
 前進運転中、急激に操縦ハンドルを後進に操作しても燃料ラックシフトアップ、減速レート、機関回転ブーストアップ、適切なプロペラ遊転回転での後進クラッチの投入、クラッチ油圧の適切な制御、機関回転増速中の適切な燃料抑制により問題無く運転を継続できた、また、機関回転低下時、エンストを防止できる機能も確認できた。これにより、船舶の操船者の負担を大幅に軽減することが期待できる。
4−1−5 スリップ試験
 
プロペラ回転制御範囲 37min-1〜101min-1(32%〜89%)
プロペラ回転安定性 良好
プロペラ回転応答性 良好
クラッチの耐久性 3時間連続運転実施、良好
   
 
中速ディーゼル機関において、電子ガバナーによる、全電気式主機関制御システムにより、主機システム全体として最適に制御することが可能で、特に、過渡時のスモークの低減、及び、操船性の改善に有効であることが立証できた。
 
4−2 今後の課題
 電子ガバナーの機能の、シンプル化(設定方法と、設定項目の簡略化)
 実船に本主機システムを搭載し、各運転モードにおける性能を確認し、さらなる改良、改善を進める。







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